第2話 血液型検査

 夜間の緊急呼び出しは、ホントなら病院から家が一番近い技師長の筈なのだが、毎晩のように晩酌しているので除外されている。先輩二人は、千葉の流山と幕張なので、電車が無くて来られない。


 そんなわけで、結局、夜間の緊急呼び出しは、私が行くのが常態化している。


 うら若き乙女が、真夜中の2時に自転車で全力疾走。……あまり、いい絵ではない。


 自転車を病院の駐輪場に停め、早足で夜間入り口を目指す。


 警備のおじさんにドアを開けて貰い室内履きスリッポンに履き替えて、そのまま検査室に向かった。


 検査室の照明はついているが誰も居ない。


 机には、既に輸血の依頼伝票が置いてあった。


 『キムラ カナ 17さい女性 2単位8本16単位/4日』


 血液型の記載が無い。新患ね。 至急、血液型検査をする。


オモテ試験:AB型

ウラ試験:AB型

抗D:(+)

『AB型RHプラス』だ。


 血液型の間違いは、即、命に関わるので、本来なら2人以上でダブルチェックするのだが、夜間緊急対応は、自分でダブルチェックする決まりだ。


 同じ検査をもう一度繰り返し、電子カルテ電カルに入力した。  


 次は至急報告だ。2階病棟に内線電話をする。


「検査、はるかです。 キムラさんの血型、ABプラスです。 血液センターにFAXと電話、しちゃいますね」


 内線に出た2階当直の長島准看さんが「はるかさん、お疲れ様。 ……ちょっと待って貰える? 今、まだ師長が……」と口籠くちごもった。


「……? ……頼むのは良いですよね?」少しでも速く血液が来ないと、命に関わる。


「それが……」長島さんが言いかけた時、ドアがノックされ、染谷師長が検査室に入って来た。

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