チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【14】『祟り殺された人、祟り殺されなかった人』【なずみのホラー便 第101弾】

なずみ智子

チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【14】『祟り殺された人、祟り殺されなかった人』

【問題】


 調子に乗りまくっているウェーイ系のおバカ男子大学生5人が、とある心霊スポットに冷やかしに行きました。

 そこにて待ち構えていたのは、最凶怨霊のX子さん(享年44、すなわち永遠の44歳)です。

 彼らはX子さんの管轄地で好き放題に騒ぎ、煙草の吸殻やらチューハイの空き缶やらのゴミの後片付けも一切せずに帰りました。

 案の定、次の日の夜に、X子さんが「恨めしや……」と彼らの元へとやって来ました。

 最凶怨霊・X子さんの本領発揮で、5人のおバカたちはしっかり祟り殺されてしまったのかと思いきや、Y男くん一人だけ助かりました。

 さて、なぜ、Y男くんだけX子さんに呪い殺されなかったのでしょうか?



【質問と解答】


キクちゃん : えーと、チエコ先生……唯一、祟り殺されなかったY男くんは、他の4人がしなかったことをしたのではないかと思います。いいえ、こういった怨霊だの祟りだのが関連する場合は逆かもしれませんね。Y男くんは、他の4人に無理やり連れてこられただけで、彼自身はそんなに騒いだり、ゴミを放置したりはしなかったんでしょうか?


チエコ先生 : NO。類は友を呼ぶし、朱に交われば赤くなる。Y男くんのモラルも、他の4人と似たり寄ったりよ。


キクちゃん : となりますと………………Y男くんは抜きんでたイケメンで、最凶怨霊であるX子さんも不覚なことに「あら、可愛い」って思ってしまったんでしょうか?


チエコ先生 : NO。彼らの容姿は関係ありません。


キクちゃん : ……それなら、Y男くんがX子さんに寝込みを襲われたのは、実は順番からすると一番最後で、すでに他の4人を祟り殺していたX子さんは疲れていて失敗してしまった。殺さなかったんではなく、殺せなかったんでしょうか?


チエコ先生 : NO。寝込みを襲ったという言い方はちょっと語弊があるわよ。それにX子さんは最凶怨霊なわけだし、たかが4人祟り殺した程度でスタミナ切れを起こしたりはしないわ。


キクちゃん : そうなると、X子さんの単なる気まぐれのような気が……いや、でもそれだと問題にはならないし、どうなんだろう? うーん、うーん……


チエコ先生 : ヒントをあげるわね。X子さんがY男くんだけ見逃したのは、彼の行動でも顔面でもなくて、彼が口にした言葉にあったの。Y男くんはX子さんの怒りを和らげることができる5文字の魔法の言葉をとっさに口にしたため、助かったのよ。


キクちゃん : ……? 5文字の魔法の言葉ですか? 何だろう? 「ごめんなさい」ですと6文字ですし、「すみません」は5文字だけど「ごめんなさい」と意味的には同じだし……


チエコ先生 : 今回は難しいから、もう1つ特大ヒントをあげるわね。生前のX子さんは44歳で亡くなって、その当時の年齢のまま、ドロッドロの怨霊活動をしているのよ。まだ15歳のキクちゃんには分からないかもしれないけど、X子さんや先生ぐらいの年齢になってくるとね、知らない人から声をかけられる際、「おばさん」と呼ばれることもあれば”違う呼ばれ方”をされることもあるわ。その”違う呼ばれ方”をされる方がうれしいのは、先生だけじゃなくてX子さんも同じだったのよ。ううん、もっと年配の女性たちも同じかもしれない。呼んだ側の本心はどうであれね。


キクちゃん : あ! まさか……Y男くんは、X子さんに「おねえさん」と言ったんですか?


チエコ先生 : YES。正解よ。Y男くんだけが「ごめんなさい! おねえさん!」と必死で土下座謝罪をしたの。他の4人も必死で謝罪はしたんだろうけど、「おねえさん」という魔法の言葉で、X子さんの心をくすぐり怒りを和らげることができたのはY男くんだけだったのよ。


キクちゃん : ウェーイ系おバカなY男くんだけど、女心はちゃんと分かっていたんですね。


チエコ先生 : そうよ。年をとろうが、怨霊になろうが女は女なのよ。



(完)

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