アニメのキャラにガチ恋したと告白して以来、幼なじみの説教がしつこい。
BIG納言
第1話「アニメのキャラにガチで恋をした」
もしも神様が目の前に現れて一つだけ願いを叶えてくれるとしたら、何を願うだろう?
賢くなりたい? 仕事で成功したい?
それとも世界平和? 永遠平和? 全人類の幸福?
はたまた、大金持ちになって一生働かずに暮らしたいとか?
人間にはいろんな『願い』がある。その形は本当に様々で、優しい願いもあれば、欲望丸出しの願いもある。
いろんな願いがありすぎて、その中からどれか一つを選び出せと言われても、すぐに答えるのは難しいかもしれない。
じっくり考え込んでようやく自分の一番の、本当の願いに気づけるというものだ。
しかし俺、
――アニメの女の子に会わせてください。
冗談で言ってるんじゃない。俺はいたって本気だ。神様を前にしてどこまでも真剣にどこまでも真面目にそう願う。
それが俺の夢なんだ。
今年の元旦に初詣に行ったときには、寒さにかじかむ手を合わせて本気でそう願った。
――アニメのあの子に会いたい。この現実世界で彼女の身体に触れてみたい。
そんな声が神様に届けと、賽銭箱になけなしの千円札を放り込んだりもした。
もちろん結果は目に見えている。そんな願い、叶うはずもない。俺ももう高校生だから、そんなことがわからないような歳じゃない。
彼女はどこにも現れなかった。
道の曲がり角。赤信号で立ち止まる交差点の向こう側。過ぎ去って行く電車の窓。
どこかに彼女はいないか――いない。やっぱり、いない。
彼女の姿を追い求めるたびに、そんなものは現実に存在しないという証拠が虚しくも積み重なっていく。結論されるのは、残酷な現実――彼女はいない。
叶わぬ夢の彼方に霧消した千円札。その事実を思い出すたびに、俺は貴重な財産を騙し取られたような気持ちになる。神様は詐欺師なのだろうか?
元日の朝、おみくじを引いたときには大吉だって出たのに。「待ち人来たる」と確かにそこに書いてあったのに。三ヶ月前、雪積もる小枝に結んだ真っ白な紙切れを恨めしく思い出す。
そんなデイドリーマーの俺もあるとき、ふと夢から覚めることがある。
一体、俺は何をやってんだ?
空想、妄想……妄執。あぁ〜、痛々しい!
ふと我に返ったとき、俺は自分の『ヤバさ』にもがき苦しむ。
アニメのキャラと現実世界で会いたい⁉︎ 荒唐無稽にもほどがあるだろ!
こんなバカげたお遊び、もうやめにしようか。いっそのこと、全て忘れてしまおうか。
俺は、自分でも笑えるほどくだらないことで悩んでいた。
しかし、それは不可能だった。俺は実に諦めの悪い性格の持ち主なのだ!
ずっと信じ続けていれば、いつか奇跡が起こることだってあるかもしれない。
夢に見たあの子に会える日が訪れることだってあるかもしれない。
それが俺の希望だ。
そしてそれは希望であると同時に、苦しみの源泉でもあった。
俺には誰にも言えない秘密がある。
――アニメのキャラに
こんなの誰にも言えない。心の中に隠し続けるしかない、永遠の秘密。
家族にも友達にも、誰にも相談などできやしない。
……だって、そんなのイタすぎるだろ! と、自分自身にツッコミを入れる。
こんな激痛エピソードを打ち明けようものなら、どんな目で見られるかわからない。
けれど、どうも、それは本当に
いい加減、夢から目を覚ませって?
そう言われたって、これが
だってまさに今、俺の目の前に、アニメの世界から飛び出してきたうさぎの少女がぺたんと、ベッドの上に腰掛けているのだから――。
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