第9話 旅もそろそろ終わり

 翌朝、西野は食事を終えると佐原の山車会館にやって来た。

 佐原の大祭に曳き出される本物の山車を常時2台展示するほか、大人形を間近に見ることができ、いつでも佐原の祭りの迫力を実感することができる。


 1階:山車展示室、ビデオシアター

 本物の山車2台 を常時展示。山車の周囲に巡らされた精巧な彫り物や大きな車輪(佐原ではハンマと呼ぶ)を間近に見ることができる。 ビデオシアターでは、3面パノラマ画面の迫力ある映像で夏祭りから秋祭りまでを楽しむことができる。


 2階:展示室

 2階の窓からは、山車の上部に飾られた大人形を上の角度から見ることができる。 展示室には、各町内の古写真や提灯、佐原の大祭に欠かせない佐原囃子の道具の解説などがある。


 3階:企画展示室

 本物の大人形 が展示され、その迫力ある大きさを実感することができる。

 

 会館を出て、街を散策した。

 佐原は、江戸時代に利根川東遷事業により舟運が盛んになると小野川沿いなどが物資の集散地として栄え始めた。小野川には物資を陸に上げるための、「だし」と呼ばれる河岸施設が多く作られた。古い街路区画の残る家屋の密集する市街地の中央を小野川が南から北へ流れる。


 明治以降もしばらく繁栄は続き、自動車交通が発達し始める1955年(昭和30年)頃までにかけて、成田から鹿嶋にかけての広範囲な商圏を持つ町となっていた。”北総の小江戸”、”水郷の町”と呼ばれ「お江戸見たけりゃ佐原へござれ、佐原本町江戸まさり」と唄われた商家町。伊能忠敬が商人として活躍していた町であり、利根川水運の拠点のひとつ。江戸との交流が隆盛を極め、醸造業や商業が大きく発展。小野川沿いと香取街道沿いの7.1ヘクタールの区域が1996年(平成8年)、関東地方で初めて重要伝統的建造物群保存地区として選定された。


 佐原の町並みは、佐原が最も栄えていた江戸時代末期から昭和時代前期に建てられた木造町家建築、蔵造りの店舗建築、洋風建築などから構成されている。重要伝統的建造物群保存地区内の、市街地を東西に走る通称香取街道、南北に流れる小野川沿い、及び下新町通りなどに江戸の雰囲気そのままに土蔵造りの商家や町屋が軒を連ねた町並みを見ることができる。小野川に架かる樋橋は日本の音風景100選に選定されている。小野川沿いは電線類地中化が進んでおり良質な景観形成の向上が行われている。

 

 小野川沿いの商業都市としての町並みは、遅くとも南北朝時代に作られたとされる。佐原の地は香取神宮領内にあった村落の1つであるが、元々は小野川と香取海の間に形成された砂州の堆積によって形成された無主地であったとみられ、香取神宮の支配も限定的であったことがその後の町の発展に影響を与えたと考えられる。1374年頃に作成された「海夫注文」と呼ばれる文書にはこの地域の主要な津(港)の名前が記されており、その中に「さわらの津 中村」という表記があり、これは千葉氏の被官である中村氏が佐原の地頭であったことを示しているとみられる。また、1388年にこの中村氏によるものとみられる「嘉慶二年一二月一一日付中村胤幹還付状(写)」によって当時の佐原に市場や宿が形成されていたことが判明する。はじめは小野川の東側が中心であったが、江戸時代に入る頃には西側まで範囲が拡大した。そしてこの時期から、東側を「本宿」、西側を「新宿」と呼ぶようになった。


 利根川東遷事業が完了し、小野川が利根川と繋がると、東北地方などから物資が利根川を経由し江戸へ至るルートが確立されたため、佐原はその舟運の拠点となった。新宿では定期市(六斎市)が開かれにぎわった。さらに、醤油や酒の醸造業が盛んとなった。江戸中期には35軒もの造酒屋が存在し、関東灘とも呼ばれた。佐原は香取街道のほか銚子方面、成田方面への街道も通じ、陸上交通の要衝でもあった。


 江戸時代後期の1838年には、人口が5647人を数えた。この江戸後期から明治時代にかけてが、佐原の最も栄えた時代である。その繁栄の様子は、1855年の『利根川図志』にも取り上げられている。同書によると、小野川を利用する商人や旅人は両岸の狭いことをうらみ、往来する舟や人は昼夜止むことがなかったという。


 また、他の地方から佐原に店を出す商人もあった。たとえば京都の2代目杉本新右衛門は、「日本国中、正月の元日から商売の出来るのは、伊勢の山田と下総の佐原である」として、1786年、佐原に呉服屋「奈良屋」を出店し、佐原を代表する商店となった。こういった経済的な繁栄は文化にも影響を与え、楫取魚彦、伊能忠敬を輩出することとなった。


 スマホに母からLINEメッセージが届いた。 

《母さんはいつでもアンタの味方だからね?挫けずに頑張りな?》

 西野はウルッ💧と来た。

 そろそろ日常に戻るとするか。

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