第25話 バレる!☆

「二人はスワって知ってる? もしかしたら彼女に会ったんじゃないかと思うんだけどな」


 スワという人物に心当たりはなかった。

 アスタロトに黒い羽を調べることと、ここに来た理由についての全てを語った。それに対する最初の答えはスワについて知っているかだった。


「知らないかー。まぁいいや。もし彼女に会ってたらとしたらその夢は本物の予知夢だよ」

「どういうことだ?」

「【日】の能力''予知夢''。相手に予知夢を見させる天使に心当たりがあってさ。けど、知らないなら単なる勘違いかもしれない」


 あの予知夢は未だに不明。もしかすると、あの夢は大人の天使が持つ能力によって故意的に見させられたものだったことになる。


「それとこの学園に緊急通路があるのは確かだよ。ここは繋がってないけど、学校のどこかにはある。学園全体を総括するルシファーと工務の役割を担うミカエルが知ってるけど、郊外不出の情報だから知るのは無理だろうね」


 緊急通路はどこかにある。

 それがここではなかったのは分かった。必ずどこかにはある。そして、そこにルシファーとヤトミという女がいるかもしれない。


「けどさぁ。そんな夢物語に突き動かされたのって、ルシファーを深く疑っているからだよね。一つ言わせて貰うね。ルシファー様が悪魔堕ちするようなことする訳ない。忠告。次、もしあたしの前でルシファー様の悪口言ったらただじゃすまさないから」


 殺意の波動が背筋を凍らせた。

 鋭い眼光が飛ばされる。

 俺が今戦ったとしても瞬殺されるだろう。今の自分が蛇に睨まれた蛙のような姿になっているのが容易く想像できた。


 俺らは図書館へと戻り、そこから自室へと帰った。


「……あれ以上は調べられねぇな。怖ぇよ」


 ため息を吐いた。

 脳裏に残ったアスタロトの睨。思い出すと体が冷える。

「今日は寄しょく舎指導員に頼んで温かいシチューにしました」

「ありがとな」

 冷えた体には最も休まる料理だ。

 芯から温まるこの感じが心を火照らせていく。


「寄宿舎指導員な。それで、寄宿舎指導員って誰だ?」

「寄宿舎指導員はラファエル様です」


 聖徒会のメンバーは与えられた役職以外に学園内の業務を分担して担当している。

 会長のルシファーは学園長。

 副会長のガブリエルは教頭職。

 会計のウリエルは教務全般。

 書記のアスタロトは司書教諭。

 庶務のミカエルは校務。

 広報のラファエルは寄宿舎指導員。

 風紀委員長のメタトロンは保健主事。


 きっと本気で戦えば瞬殺なのだろうと物思いに耽ながら、白い海に浮かぶ薄赤いそれを口の中へと運んでいった。

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