第20話 Shining One☆

 背後から漂う不安な要素。執事である彼女がうたた寝している。これは俺にとっても恥ずかしいことだ。

 誰にも気づかれないように羽を垂らして動かした。その羽で肩を叩くが起きない。

 強い衝撃を与えればビックリして逆効果となる。恥ずかしい思いはできない。寝てると気づかれないように試行錯誤で体を固定した。

 小休憩を挟みながらの数時間の授業。

 そうして、終わりのチャイムがなる。そして、力を抜いた。


 少しの休み時間。

 俺は彼女を人気の少ない場所へと呼んで説教した。流石に俺らを差し置いて寝る執事なんて初めて見た。

「ごめんなさい」と反省した態度を取る。

 全く……。としか感想が出てこなかった。


 ふと、そこにルシファーが通り過ぎた。

 ふいと彼はチラリと横目で見て去っていった。

 ふっと腕で体を包むように寒さを堪えるように震え構えるナルミがいた。どこかルシファーに怯えているように見える。

 それも仕方ない。あの番のあの気圧される威圧を生で見たのだ。恐怖を感じても仕方ない。


 大きな丸支柱の裏にうごめく何かを感じる。そこに目を向けると、滑らかな黒髪だけが支柱から出ていた。体隠して髪隠さずだ。

 その影が動き支柱から出た。

 顔を赤らめてルシファーの後ろを追っかけるアスタロトの姿が見える。

 思わず「何やってるんですか」と言った。

 そこでようやく俺らのことに気づいたようだ。

「あ、新入り君達だー。名前なんだっけ?」

「アサヒです。こちらは執事のナルミです」

「あー、アサヒとナルミね。うんうん、って言ってる場合じゃない。ルシファー様を見失ってしまうわ」

 俺たちはお構いなく、いや、俺らを無理やり引っ張って次なる支柱へと移動した。

「あー。立ち止まって遠くを見るルシ様も素敵だわ~。そう思わない? 早く声を発してくれないかな。声が何よりも素敵なのよ。分かるでしょ?」

「分かりません(きっぱり)」

 そんなことに耳を貸さず一人妄想に浸っているアスタロトがいた。

「これ、ストーカーじゃないですか?」

「違うわ。ただの「追っかけ」よ!!」


 これはどういう反応をすれば正解なのだろうか。俺には一切分からなかった。

「アスタロト様の愛がひしひしと伝わってきます」

「そう? あたしさ、学生時代にここでルシ様と出会ったの。あたしにはさ、ルシファー様のことが何よりも救世主だったんだ」

「どういうことですか?」

 二人の会話がどこか蚊帳の外に追いやられてるかのように感じさせる。

 彼女の話はどこか興味深く中に入りたいと思わせる。

「ずっと小説を描くのが好きで一人で殻に閉じこもってた。多分、人と接するのが怖くて小説に頼ってただけかも知れない。けど、そんなあたしをあの方は──」

 そこで彼女はある事に気づいた。

「あっ、ルシファー様が移動した!」

 俺らを置いて行ってしまった。

 俺には分からないが、アスタロトにとってルシファーは何よりも輝いている存在なんだろう。

 しかし、ストーカーはどうかと思う。

 いや、単なる追っかけか──。

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