第10話 夜のピエロ☆
今の俺は落ちこぼれだ。
天使と付き人の仲が悪いのは良いことではない。むしろ悪いことだ。
このままじゃ彼に追いつくことすらできず、雲の上の存在として見上げることしかできない。そんなことが嫌だから変わろうと頑張っているのに……どうも上手くいかない。
気まずい肝試し。
闇夜の中を二人で歩く。
夜の川沿いを通っていく。穏やかに流れる川の流れが、不穏さを醸し出していく。
──!
目の前にふっと現れる鎧。透明に近い色で、少し水色っぽい。誰かが着ている訳でもなく鎧が独りでに動いている。まるで鎧武者の幽霊のようだ。
よく見ると数枚の白い羽が見えている。
隣では尻餅を着いて小さく悲鳴をあげていた。
「お、お化けっ!!」
完全に腰がひけている。
「安心しろ。こいつはお化けに似せた……操り人形だ。よく見ると白い羽が見える。この羽で動かしているんだ」
鎧が消えて水となった。
その下は濡れた。
鎧は水でできた存在だったのだろう。
「あらら。すぐバレてしまうとはね。その通りよ。わたくしの能力で鎧を作り、羽で動かしただけの簡単な操り人形よ」
そこに現れた天使。
水色のおかっぱと眼鏡、堅物そうな雰囲気が印象的だ。
「これを持っていきなさい。青色の「水の石」よ。まあ、完遂できることを祈っておくわ」
いつの間にか何事もなかったように立っているナルミ。そんな様子を軽く見ながら、石をポケットに突っ込んだ。
地図を見る。
そこから適当に道を選んで進むことにした。
選んだ道は趣味の像などの工具類が置かれたエリアだった。
そこで突然現れる火の玉。
進むごとに現れる火の玉。それらは全て浮いている。そして、開けた場所へと出ると火の玉全てが近づいてきた。
ギュッと掴まれる腕。
彼女は怖さから俺の腕を掴んだらしい。可愛らしい一面が垣間見えた気がした。が、すぐにパッと振り払うように離したせいで、そんな思いは一瞬で消えた。
前方で火の玉が集まり強烈な炎となった。
燃え盛る炎を前に臨戦態勢を取った。
俺の羽をナルミの前に出す。これで彼女に火が当たることを防げる。
「火の玉ー、どうー?」
どこからか眠そうな声がする。
それと同時に炎も消えた。
「赤色のー、「火の石」ー」
ボーっとした感じの天使が石を渡してきた。「どうぞー」の言葉はどこか脱力していてやる気が感じられない。
とりあえず四つめの石を貰った。
眠そうで無気力なイメージなのに髪色が鮮血色のせいで不思議な感覚が起きた。本当に不思議な女性だ。
地図を見る。
最後の道。そこは木々の中へと繋がる道だった。
木々が小さな光を遮り暗闇を作る。
手元のランプだけが唯一の頼りだ。
──!?
モンスターが現れた。ツリーバウムだ。怪しいモンスターが踊り狂っている。よく見ると木ではなくて
お化けが現れ
俺らの周りを不規則に回っている。
二人で密着して身構える。
それらの中に羽が入っていると思ったが、こんなにも沢山のモノを、それも結構の重量があり、こんなにも複雑な動きをする。羽ではこんなこと不可能だ。
「……蔓が中に入って動かしている?」
ナルミが蔓の存在に気づいた。
暗闇のせいで気づけなかったが、ランプの光を頼みに目を凝らすと人形の下には蔓があることに気づいた。
「蔓か……。ということは、蔓の能力者が操っているのか」
「おっ、正解じゃん。俺っちの能力は蔓を繰り出し操る能力。やるじゃん。見抜くなんて」
有象無象は消えた。代わりに、チャラい天使が現れた。
「チーっす。俺っちはミカエル。聖徒会では庶務をやってる。よろしくな」
ランプが彼を強く照らした。
目を凝らすとパーマがかかった黄緑色の髪が目立っている。首にかけた茶色っぽいサングラスも印象的だ。
「じゃ、渡しとくよ。緑色の「木の石」だ」
五つ目の石を手に入れた。
俺らは怪しいこの場所を後にしようと道を進んだ。
「ばあっ!」
突然、目の前に現れるピエロの仮面を被った何者か。
思わず肝っ玉が抜かれた。
まさかド肝を抜かれるとは。そう言えば、片腕が重い……。チラと見ると、ナルミが強く握っていた。
そして、優しく解いて深呼吸を置いていた。
しかし、この仮面を被った者は何者だろうか。ミカエルの刺客にしてはリアリティがある。人間のシルエットが逆さに浮いている。
「驚かさないで下さい。先輩ですよね?」
「ごめんごめん。たまたま見つけちゃったからさ、
ピエロの仮面が取られた。
そこから現れたのは緑色の髪の無邪気っぽい人間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます