第34話 バイドの過去

バイドは元々、スラム街の子供だった。だが、運の良い事に察知系の能力に長けている所があったので無事に生きてくる事ができた。だがある時。清掃、という名の殺戮が始まる。戦争のために作る軍基地をスラム街がある場所に建てるといったのだ。当然、そこに住み着いている人間は反抗するが、キチンとした訓練をしている者たちに勝てるわけがない。どんなに豪腕で屈強な人間が来ようと、そう簡単に勝てる相手ではない。

バイドはその時、仲間とともに逃げていた。その能力を使って。

「こっちだ!こっちはまだ大丈夫!」

先導して逃げているのはバイド。その後ろにいるのは仲間たちだ。今まで必死に生きてきた中で、もしこのうちの一人がいなかったら生きていたかもわからない、という絶対的なチームワークを持っていた。それぞれがこのチームの歯車として働いていたのだ。歯車は、一つでも外れると動けなくなるから。


だから今回も、バイドに任せておけば生き延びられる。そのあとは、自分たちが何とかできる、と思っていた。


だが今回、バイドは焦っていた。

(敵の数が多すぎる…⁉︎なぜこんなに危険信号が出てきてるんだ⁉︎もし、この内の一人にでも見つかってしまえば……!)

だからバイドは、いつも以上に神経を尖らせていた。


だと言うのに、そいつは急に現れた。

「ふむ、こんな所にいたのか。全く、逃げ足だけは早いんだな。この虫ケラどもめが。」

「ぐあっ!」「「「「「⁉︎」」」」」

探索網に一切引っかからず、そいつは出現した。

何故急に現れた⁉︎一人やられた⁉︎何で⁉︎

頭の中に疑問が募る。だがそんな事をしている暇はないとわかっていた。だから、

「逃げるぞ!」

と、一声かけた。



はずだった。


バイドを除いた全員が、切り捨てられていた。


「は…え……あ……。」

味方の死。友人との別れ。悲しみにとらわれる暇すら与えられない。

「絶望したかね。蛆虫のリーダー君。」

耳に届くのは、その人間の声ではなく、微かな一つの心臓の音だった。

まだ生きてる。まだ直せる。その希望を捨てずに、彼は生き延びようとした。だが無理だった。

魔法だ。いや、魔法の簡易版の魔術紙を使った攻撃。その属性が悪かったのだ。

爆発系統。

少しの爆発だけで、傷口が抉られその子供は絶命した。

その時、彼の中で何かが起こったのだ。

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