第28話 最悪の切り札

魔素が辺りに充満しており、こちらの形勢はかなり不利。それに加え相手はまだまだ魔力が残っている。この状況で僕が取れる最適な打開する方法は一つ。


精神を『分解』する。


元々、分解とは一つにまとまっている物を幾つかの物に分ける事を指す。床や壁を壊したのも粒子レベルまで『分解』しただけなのだ。


では、もしも善の方の精神を残し、悪の精神の方を


ロズさんが言っていたように、もしもこの『分解者』が何にでも分解を行えるのであれば。可能なのではないのか?


そう考えた時、僕は自分の事を酷く軽蔑した。この力はもしかしたら人の精神を、いわばと同義。それがどれだけ非人道的な事か、想像しただけで分かってしまう。それがために僕は自分の事を、いや、この能力を持ってしまった自分の事を軽蔑したのだ。


でも、僕が善に偏っていれば?完全な善ではなくとも、誰かのためにこの能力を使わなければいけないとすれば?


僕は遠慮なく使うよ。


チャンスは一度きり。一度ミスれば僕が危険になる。死ぬ可能性だって十分ある。でも、僕がやらなきゃこの狂行を止める事が出来ない!

「うおおおおおおおお!儂の踏み台になれぇぇぇええええええぇえええ!!!」


「『分解』!」


バチッ!という電気のような音がした。


「うわっ!」

その次の瞬間。視界が白い光で埋め尽くされた。


光が収まった時、目を開けると……生身の体以外の物がその………あの………はい…。無くなっちゃってました。


いや!悪気はなくて!こういう趣味でも無くて!ただなんかこう…想像の仕方の影響で!


「ん………むぅぅぅ…。」

「!」

とうとう、デーブルが起きた…。これで……どうなったんだ…?


「儂は一体………はっ!」

ガタガタと震えだした。

「儂は…儂は…儂は一体なんてことを⁉︎守るべき民衆を…なぜこのような姿にしてしまったのだ!愚かなる私欲の犠牲者がこの有様⁉︎ふざけているにもほどがある!儂はこれから…一生をかけてこの罪を贖わねばあがなわねばならぬ!デコル君!儂を正気に戻してくれてありがとう!儂は今から自首をしに行く!」


「えっ?あ、あぁはい…。あっ!その前に!服がっ!」


「む?…………………。見苦しい物を失礼した…。まさかパンツ以外無くなっているとは…。すまない。」

「は……はい。気をつけてください。」


そういって部屋から出て行った。


ん?出て行った?


そういえば、今外で何をやってるんだっけ?


…………。やばい。

「デーブルさん止まって!今そっちで戦闘が起きているんです!僕が先にいきますのでここで待っていてください!」

「む⁉︎わ、分かった!」


今助力しにいきます!シャルルさん!

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