第564話 今日の主役は女神様

「じゃ、いただきます」


「いただきます」


 今日のメインはホガニーブルのグレイプルワイン煮込み。

 付け合わせのサラダは、パーンたちが育てた野菜にグレイプルビネガーで作ったドレッシングがいい感じ。

 パンはシンプルなバゲットだけど、ワイン煮込みにつけるとすごく美味しい。


「美味しいですか?」


「うん!」


【ブルーシャ】「なごむわ〜(*´∇`*)」

【ジョント】「二人の娘さんに見える件♪」

【コクド】「鑑定プリーズ!」

【ロガッポ】「たんとおたべ〜♪( ´▽`)」

 etcetc...


「スウィーたちはどう?」


「〜〜〜♪」「クルル〜♪」


 スウィーやラズたちはサラダがメインディッシュだけど、ライコス(トマト)多めにしたので満足してもらえたっぽい。

 さて、食べてるだけなのもなんだし、ちょっとコメント拾っていこう。えーっと……


「あ、ごめんなさい。今日の料理はミオンが作ったので鑑定は無しです」


【スキンコ】「ミオンちゃんの手料理!?」

【シデンカイ】「女神様が作ったらバフすごい可能性は?」

【マスターシェフ】「レシピはショウ君が?」

【デイトロン】「<女神の手料理代:10,000円>」

 etcetc...


「えっと、作り方は俺がばあちゃんから教わったやつっすね」


 リアルだと1時間以上煮込むから大変なんだけど、ゲーム内だと15分で済んで楽ちんなんだよな。


「ドレッシングも教わったものですか?」


「ドレッシングはネットで見たやつ。普段は市販のドレッシングとか使うから、作り方わからなくて調べたよ」


「なるほどです」


 ドレッシングとかソースは、本土だと大量に作って小分けにして売りに出されてるらしい。

 ウスターソースなんかもあるって話でちょっと羨ましい……


「調味料をお酒と交換してもらうのはどうでしょう?」


「あ、そうだね。シャルたちがお酒をたくさん作ってくれてるんで、余った分を放出しようかなって思ってたし」


【セイキ】「酒えぇぇぇ!」

【マティス】「一回でいいからオークションしてみてほしい(笑)」

【チョコル】「代わりに欲しいものなに〜?」

【アクモン】「いくつ出ます!? 種類はいかほど!?」

 etcetc...


 やっぱり、お酒は食いつきがすごいな。

 ゲーム内でも状態異常になるって聞いたけど大丈夫なのかな?


「今回はいろんな種類のお酒を出せそうなんですよね」


「うん。今回は島で作れるお酒は、ほぼ全種類出せると思う」


 妖精の花蜜酒はダメだけど。あれは希少すぎるし、花蜜はできるだけ白竜姫様のために使いたい。

 一度作ってスウィーが酔っ払っちゃったから禁止したけど、鑑定で薬の材料になるってあったから、少し作ってみてもいいかも。


「おかわり〜」「〜〜〜♪」


 みんなおかわりのタイミングっぽいし、エルさんだけだと手が足りないかな。ついでにデザートの準備もしよう。


「手伝ってこようか」


「はぃ」


 ………

 ……

 …


 食後のアイスも食べて、みんなまったりムードに。


「そろそろ質問タイムにしましょう」


「りょ。今日は二人で答えて行くんですけど、俺が質問を拾う感じで。なんで、見落としがあったらすいません」


 ゲーム内からライブのコメントの確認をするのは、なかなか大変なので先に断っておく。

 視聴者さんたちもそれは理解してくれてるみたいだけど……、うん、すごい勢いで流れていくな。

 ヤタ先生も見てくれてるんだろうけど、最近はよっぽどじゃないとヘルプしてくれないっぽいからなあ。


「じゃ、これにしよう。最初は『ミオンが島に来た方法を教えてください』で」


「えーっと、ドラゴンのみなさんのおかげです、とだけ」


「うん。真似はできないと思うけど、しばらくは内緒にさせてください。そのうちわかるんじゃないかなってことで」


【スギコー】「悪魔の件もあるしねえ」

【ユイオン】「運んでもらえたって感じ?」

【トニシキ】「ああ、はいはいはい。なるほどなるほど」

【サクラー】「いつから島に来てたんでしょうか?」

 etcetc...


 答えをはぐらかす形になったけど、ほとんどの人が納得してくれたっぽい。

 まあ、本土からこの島に来れるのって、ドラゴンの誰かに運んでもらうぐらいしか思いつかないよな。

 実は違うんだけど、その方法はもう存在しないわけで……


「いつから島に来てたかについては、詳しい日時は秘密ですけど夏休み中にですね」


 夏休み入ってすぐだったかな?

 俺も他のみんなも、最近はライブでいない時の方が不自然に思うぐらいになっちゃってるよな。


「じゃ、次の質問に。えー、『今日はエメラルディアさんを見ませんが』……」


「ぁ……」


「実は今、この島にはいなくて、南の島でキジムナーたちを守ってくれてます。悪魔の一件もあったし」


【アサナサン】「おお、なるほど!」

【ツバイ】「南の島で会えないの?」

【ドライチサン】「キジムナーの里に引きこもってるのか……」

【セイキ】「お姿だけでも〜」

 etcetc...


 会いたいとか、一目見たいって人が多いけど、エメラルディアさんだからなあ。

 そのうち、ガジュたちが外に連れ出してくれることに期待? あとはベル部長あたりに頼むか……


「今日お披露目した翡翠の女神の木像は、エメラルディアさんに運んでもらいますので、ひょっとしたら見れるかもですね」


「だね。まあ、エメラルディアさんは……シャイな人なので……」


 そっとしておいてもらえるとってことで。キジムナーたちがいい方向に持って行ってくれることを願おう。

 その後もアレコレと質問を受け、特にミオンのつけてるオパールのブローチの話も盛り上がった。

 ただ、鑑定結果については、今は秘密ってことで納得してもらった。俺自身、謎が残ってる部分もあるので。


「じゃ、最後に『ワールドクエストについて何か情報があれば』を。悪魔たちの狙いが魔石とか魔晶石を集めて〜って話なんですけど、ちょっとこれを見て欲しくて……」


 テーブルの上にお椀を置き、その中に極小サイズの魔晶石を10個入れる。

 エルさんやシャルたちが狩りに出た時に、たまに見つけてちゃんと取ってきてくれたやつ。


「これを……<粒化>ってやって粒にして……<晶化>ってすると」


【再生魔晶石(小)】

『魔石を砕いて再結晶化させることで、マナが抜けて魔晶石となったもの。

 再結晶化したものであるため、使用回数が重なると壊れる可能性がある』


【ガフガフ】「うおおお! サイズアップの方法これだ!!」

【ロエリマ】「え!? なんで成功するの??」

【デイトロン】「<魔石リサイクル情報感謝!:10,000円>」

【リーパ】「ん? 一回りぐらい小さない?」

 etcetc...


 で、盛り上がってるところに水を差すようで申し訳ないんだけど、


「この再結晶化、多分、錬金術スキルが必要です。最初に成功したときに、錬金術のレベルが上がったんで」


 それを聞いて「あ〜」って感じになるコメント欄。

 でも、ちゃんと、悪魔の目的が魔石って話と繋がった人もいるっぽい。

 あれこれと盛り上がってるコメント欄を眺めていると、


「ショウ君。そろそろ……」


「うん。今日の主役はミオンなんで、この後に試聴が始まる曲を歌ってもらって終わりにします」


 最初の試聴曲は<魂は女神の元へ>。

 当然というか、俺が演奏するわけだけど、自動演奏できるレベルになってて良かったよ……

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