第548話 ゲームチェンジャーの帰還
「うっ、きっつ……」
屋敷の裏庭に戻ってきたんだけど、ふらっときてそのまま尻餅をついてしまった。
転移の距離がすごかったからか、MPの消費量がヤバくて残り1割を切っちゃってるな。
『ショウ君!?』
「ワフ!」
「大丈夫大丈夫。ルピもありがとな」
飛び込んできたルピにマナエイドをもらって回復。ちょっと落ち着いた。
レダとロイが心配そうな目で俺を見つめ、肩へと駆け上がってきたラズが頬を寄せてくれる。
「クル〜……」
「ごめんごめん」
あの場にいなかったからしょうがないんだけど、ラズも一緒に来てもらった方が良かったよな。
反省はおいおいってことで、その前にアズールさんに報告しておかないと。
「アズールさん。島に戻りました」
『お疲れ様! こっちは転移魔法陣は確保できたから、ゲイラが救援を手伝ってくれる人たちをまとめてくれてるよ。あとは任せてー』
「ありがとうございます。それでですね……」
制御室で何があったかを説明。
特に救援を手伝ってくれる人たちに、擬態する悪魔がいることは伝えて欲しい。
『わかった。それは竜族からの情報ってことで伝えておくよー』
「はい。じゃ、あとは任せます」
『うん。ありがとうねー』
俺の仕事は終わったかな?
あと気になるのは、
「アージェンタさん、エメラルディアさん、そっちの状況はどうです?」
『ショウ様。エメラルディアがサバナ様を発見し、護衛についております』
「え? あ、いや、良かったです」
『申し訳ありません。エメラルディアが報告するのを戸惑っていたようで……』
ああ、なるほど。
エメラルディアさんには救援部隊が到着するまでの間は護衛してもらって、その後はうちの島へ戻ってくるそうだ。
それは全然いいんだけど、
「今、サバナさんが隣にいたりします?」
『いえ。私はすでにそちらへ向かって飛んでおります』
あ、良かった。
まあ、竜族が動いたことは隠しようがないし、俺が現地にいたことがバレなきゃそれでいいや。
あとは……
「ベル部長たちの会議ってどうなったかわかる?」
『えっと、休会のまま終了になりました。部長たちはあとは任せてログアウトするそうで、部室で待ってると』
「りょ」
じゃ、俺もログアウトするか。
立ち上がって屋敷へと戻ると、白竜姫様とエルさんが迎えてくれた。
「おかえりなさ〜い」
「うん、ただいま」
突撃してきた白竜姫様を受け止めると、後ろでエルさんが苦笑いをしていた。
俺が転移魔法陣を見つけたぐらいに覚醒は終わったそうだけど、それはそれでもう安心ってことだよな。
………
……
…
「ぁ、部長、セスちゃん」
「お疲れっす」
部室に現れたベル部長とセス。
「ええ、二人もお疲れ様……」
「さすが兄上よの!」
かなり疲れてる様子のベル部長に対し、セスはめちゃくちゃテンションが高い。
俺がサバナさんの島に行ったことは、伏せたままにしてもらってたはずだけど……
「ベル部長は会議疲れですか?」
「ええ、そうね。一緒にいたユキさんよりはマシだけど」
と苦笑い。
どういう感じだったのかを軽く説明してもらった。
出席者は氷姫アンシアの代理人、ベル部長とユキさん、ラムネさんの代理人という離島に繋がる転移魔法陣を持つ人たち。
それに加えて、ゲームドールズのギルド管理をしてるメッサーさん、商業系プレイヤーギルド連合の代表としてマスターシェフさんたちといった、死霊都市のプレイヤー自治に協力してくれてる人たち十数人。
「事件が起きた時の状況説明があった後は『じゃあ、どうするか?』で揉めてただけだったわ……」
状況説明っていうのも、俺がミオンから聞いた話と大差ない程度。
十分な警備はしてあったって話だけど、20人ほどのプレイヤーが押しかけてきて、警備にあたってたNPCや、転移魔法陣の利用審査をしてたプレイヤーを蹴散らしたそうだ。
転移した後がどうだったのかは、まだ正確にはわからないけど、サバナさんや先に来ていたプレイヤーたちを排除しようとしたんだろう。
「建国宣言はどうやったんでしょう?」
「サバナさんが使ってるセーフゾーンを占拠した後で建国宣言したそうよ。その時にサバナさんのマイホーム設定も消えたみたいね」
先にいたのはサバナさんとファンの数名だけ。
人数的にも押し入った連中の方が多かったし、そこで最大勢力扱いになったのかな?
「サバナ殿らは勝ち目がないと悟って、エサソンたちも連れて先に逃げたとのことだ。無事であれば良いのだがの……」
そう言いつつ俺の方を見るセス。
俺がなんとかしたんだろうという説明待ちだよな、これ。
「そっちは大丈夫だと思うぞ。エメラルディアさんが保護してくれたらしいし」
「え!?」「ほう!」
ベル部長とセスが驚いてるけど、その説明は後回しにして、
「アズールさんが転移魔法陣を取り返したらしいけど、どういう感じだったの?」
「ふむ。アズール殿らも事態を把握しておったようでの。当然、兄上から聞いてであろう?」
そう言われて小さく頷く。
「転移魔法陣の前で何やら呪文を唱え、その後に竜人族らと共に転移していったのだ。向こうの転移魔法陣の封印を解いたと言っておったが?」
そこでまたセスの視線が俺へと。
そんな便利な魔法があるのか? いや、ないだろって思ってるんだろう。
「俺だよ。俺がサバナさんの島へ行って、転移魔法陣の封鎖を解いてきた」
「やはりの!」
身を乗り出して喜ぶセスに対し、ベル部長はフリーズ……はしてないか。
どっちかっていうと、やっぱりって表情かな。
「ミオン。アーカイブ、サバナさんの島に着いたあたりからお願い」
「はぃ」
見てもらうのが一番早いだろうってことで。
ただ、午後11時を回ってるし、重要なところまでスキップしてもらう。
「あれ? ここって……」
「ライブだと聞こえてたんですが……」
制御室に着いて、扉の向こうに足音が聞こえたところなんだけど。
巻き戻してもう一度……聞こえないな。
「聞き耳スキルよね? スキル効果で聞こえた音はライブでは聞こえるけど、アーカイブには残らないのよ」
「あー、そういう」
凝ったことしてるなあ。
いや、それはいいとして、
「この時、管理者権限がある指輪を持ってくる、正確には借りてる人を呼んでくるって聞こえて」
ミオンに合図して一時停止を解除。
俺が非常用魔晶石を外して、インベントリにしまう。
その後にやってきた連中の声も、聞き耳スキルで拾ってたからか聞こえなくなってるんだけど……
「「悪魔!?」」
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