第529話 タイミングが難しい

『ラララ〜ラ〜♪』


<はいー。ライブは終了しましたよー>


 最後に俺の笛の演奏でミオンとスウィー、白竜姫様で歌ってライブ終了。

 今日の自動選曲は、古代童謡<お昼寝の時間>だった。演奏レベル、今は5なので、あと1つ上がれば自由に選曲できるようになるんだよな。


「『お疲れ様でした』」


 質問コーナーは、エメラルディアさんのことを伝えたあと、島の北側についての話を簡単に。

 シェンネペンテスっていうヤバい食肉植物や、草原の先で牛っぽいものを見かけた話なんかを。

 リゲルの活躍に関しては、ミオンが映ってないし短編動画の方に出せるかな? というか……


『どうしました?』


「そろそろ、ミオンが島に来れることを公表したいなって思うんだけど、どう?」


『はい! 私もショウ君と一緒にライブしたいです』


 ミオンの方もオッケーとなると、あとはどういう風になんだよな。

 いっそのこと、ライブの最初に「今日は現地からお伝えします」でもいい気がしてるんだけど。

 そんな話をしていると、


<そうですねー、アルバムの発売日に合わせるのはどうでしょー?>


「ああ、それで収録されてる曲を一曲披露するとか?」


<ですですー>


『なるほどです』


 それはそれで許可を得ないとまずいよなってことで、そっちは椿さんから連絡してもらうことになった。


「ミオンもそろそろこっち来なよ」


『はい!』


 その間にカレーを温めなおそう。ナンも焼きたての方が美味しいだろうし、新しいのを焼くかな。

 ヤタ先生がそのまま見たいという話なので、ミオンの配信先を部室にしてもらう。


「ショウ君」


「あ、おかえり。カレー、できてるよ」


「は、はぃ。ただいまです」


 ログインしてきたミオンをテーブルに……、あ、白竜姫様、寝ちゃってるな。

 エルさんがそっと白竜姫様を抱え上げ、こちらに向かって一つ頷いてから屋敷へと戻っていった。


「スウィーちゃんは眠くないですか?」


「〜〜〜♪」


 スウィーは全然って感じで、むしろ、もっと甘い物が欲しいらしい。

 窯はあったまってるし、クッキーでも焼こうかな。


<先生にもワールドクエストの情報を見せてもらえますかー?>


「あ、はぃ」


 公式のページは相変わらず情報なしらしい。

 ミオンがヤタ先生に見せてるワールドクエストの詳細を、俺も気になったので開いてみると……


【ワールドクエスト:悪魔が来たりて】

『魔王国北部に侵入した悪魔は各地へと移動・潜伏している模様。

 奴らの目的は果たして……

 目標:侵入した悪魔の討伐、および、目的の調査:3%』


 あれ? ちょっと文言変わったかな?


<達成度はあんまり進んでないですねー>


「あー、そうみたいですね。魔王国で悪魔を討伐した人が何人かいるって話は聞いてますけど」


 多分だけど、じいちゃんとばーちゃんが倒したのもカウントに入ってるはず。

 それ以外にもぼちぼち討伐に成功した人がいるらしい。


「文章が少し変わってますね」


「だね。魔王国から少しずつ、他の場所へ行ってるみたいで不気味だよな」


 そういうクエストなんだろうけど、死霊都市まで来て、そのまま南の島にとか来られるのは怖い。

 明日あたり南の島へ行って、ガジュたちの様子を見てこようかな。


『ごめん。ショウ君、今、大丈夫かな?』


「え? あ、アズールさん。どうしました?」


 向こうから急にギルド通話が来るのは珍しい。

 まあ、アズールさんはそういうのあんまり気にしない方か。


『なんか、エメラルディアが人の姿で買い物してるんじゃないかって』


「「え?」」


 人の姿で買い物してるって、誰が見てもわかるものなのかな……

 俺がライブで話したから?


「あの、名前を名乗られたんでしょうか?」


『うん。エメラって名乗ったんだって』


 いや、ライブでは名前は出してなかったし『白銀の館』の関係者さんかな。

 一応、情報をくれた人にどういう風貌だったかも確認したところ、ほぼ間違いないんじゃないかというのがアズールさんの意見。


「あの、買い物って何をでしょう?」


『食べ物らしいんだよね。ショウ君が送ってくれるタイプのドライパプあるでしょ。あれをすごく買ってくんだってさ』


 ……竜族って食いしん坊ばっかりなんだな。


「じゃあ、飛んでる姿を見かけたっていうのは、買い出しに出てたってことか」


『多分ねー』


 そんな話をしていると、白竜姫様を部屋へと運んだエルさんが戻ってきた。

 さっきまでの会話は聞こえてたようで、


「アズール様。姫様にお伝えしておきますか?」


『そうだねー』


 覚醒した時にってことだろうけど、今日はもう寝ちゃったからなあ……


 ………

 ……

 …


 ベル部長とセスに聞いておかないとなってことで、ログアウト後にバーチャル部室で待ってると、


「おお、兄上が待っておるということは!」


「……何かあったのよね?」


 あったんだけど、俺は聞かされただけなんで、そんなに警戒されても。

 アズールさんから聞いたエメラルディアさんの話を伝えておく。ただ、ベル部長たちも聞いてなかったっぽい。


「うちの知り合いかしらね。一応、『白銀の館』と提携してるギルドには伝わってるから、そっちかもしれないわね」


 とのこと。

 まあ、注意して欲しいって話を流しただけなので、俺がライブその話をしたから、連絡してくれたって感じかな。


「目が覚めて、お腹が空いて買い出しに行ったということかしら?」


「ええ、アズールさんもそう言ってました」


 竜族っていうか、ドラゴンは眠ってる間は食べなくてもいいけど、起きて体を動かせば、その分は食べないとって話らしい。


「兄上の話では、なかなか人見知りなドラゴンという話だったようだが?」


「なんか、ほとんど話さなかったらしいよ……」


 とろとろ干しパプを指差して「これ。あるだけ全部」とか、そんな感じだったそうで。

 まあ、それだけなら特に怪しくもない(?)けれど、いきなり金貨を出したりとか、いろいろとズレてたらしい……


「ふむ。『エメラ』と聞いて、もしかしてと言ったところかの」


「なるほどです」


 俺がライブで連絡をって言ったから、伝えてくれたんだろうなあ。

 一応、覚醒した白竜姫様は「ほっといていい」ということだけど、お腹を空かせてるのはちょっと心配なところ。


「エメラルディアさんに連絡とかは取らないのかしら?」


「あー……、まあ、そこは白竜姫様次第ですかね」


 覚醒しないと連絡も何もない気がするし、白竜姫様も無理に呼び出さなくてもいいって言ってたからなあ。

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