第517話 竜と妖精

 転移や転送についての質問が結構流れていったけど、まだ使えるようになって数日ってことで、何かわかったことがあったらってぐらいで納得してもらった。

 実際、何もわからないし……


 他の質問もいろいろあって、ピアノの演奏の話とか、裏庭がすごく綺麗になってる話とか、白竜姫様のこちらでの生活の話とか……ミオンに任せきりなことが多いな。


『最近は少しのんびりできる時間も増えてますね』


「かな? この間、雨が降った時とかは、家でずっとスウィーの像を作ってたりとか」


【カリン】「雨の日にやることあるのいいよね〜」

【タイコスキー】「釣りは荒れるとできないから、釣り具作ってたりするよ」

【マスターシェフ】「飲食やってると、雨の日は逆に忙しいよ(笑)」

 etcetc...


 あー、レストランとか酒場とかやってると、雨の日は逆に忙しいのか。

 というか、それだけでプレイしてるっていうのもすごいな。


『お店をやってるみなさんは、狩りに行ったりはしないんですか?』


【キョウタ】「行ってるよー。店やるのは気分!」

【マスターシェフ】「定休日あるし、NPCに任せたりしてるね」

【デンガナー】「わいもNPCに任せとるな」

 etcetc...


「なるほど。あ、でもまあ、うちのギルドも竜人族のみなさんにサポートしてもらってるから同じか」


『そうですね』


 なんか「違う違う」って感じのコメントが、たくさん流れていったけど気にしない。

 エルさんにも手伝ってもらえるので、島の産物を外に出すにも任せられるし。

 そんな感じのことを話して羨ましがられてると、


「〜〜〜♪」


「おうた〜♪」


「っと、そろそろ?」


『はい。少しオーバーするかもですけど』


 まあ、5分ぐらいのオーバーなら全然大丈夫だよな。

 みんなで応接室まで移動だけど、全員入るかな?


「ニャ」


「うん、もちろん」


「「「ニャ〜」」」


 シャルたちも参加ってことで、ピアノが置いてある応接室までみんなで移動。

 今日は白竜姫様、スウィーがメインで、フェアリーズとシャルたちはコーラスでいいのかな。なんだけど……、


「部屋いっぱいになっちゃうな。テーブル、いったん外へ出すか」


「私がやろう」


「あ、すいません」


 エルさんがひょいっとそれを持ち上げて、玄関ホールへと出してくれた。

 コメント欄が盛り上がってるけど、有翼人のイメージが悪かったから意外ってことなのかな?

 少なくともエルさんはまともな人なので、そこが修正されるのは嬉しい。


「じゃ、白竜姫様とスウィーたちが前ね」


「は〜い!」


「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」


 その後ろにシャルたちが分かれて並ぶ。

 

【ブルーシャ】「なごむ〜(´∀`*)」

【ベアメン】「今日のおうたはなんですか〜♪」

【ルタイバ】「運営さん、島でのライブもアルバムにして!」

【ロガッポ】「わくわく♪o(^-^)o」

 etcetc...


 さて、しっかり姿勢正しく座って、曲は何が選ばれるかな?


【古代民謡<竜と妖精>が選曲されました】


 あれ? これって、白竜姫様とスウィーってこと?

 なんか、レアな選曲がされたっぽいけど、この二人が揃ったからとかなのかな。


 テンポの速い曲だと大変……ってこともないか。

 自動演奏を選択すると、体が勝手に演奏を始め、ちょっとオリエンタル風なメロディーが流れていく。


「ミオン、歌えそう?」


『はい!』


 ………

 ……

 …


<はいー。ライブは終了しましたよー>


「『お疲れ様でした』」


 今日のライブも無事終了。


「ミオン、来るよね?」


『はぃ!』


 ということなので、しばらくエルさんに任せて、俺は外の片付けをしてこよう。

 シャルたちも手伝ってくれて、まずは食べ終わった食器を一箇所に集める。


「洗い物は俺がやるから、シャルたちは拭いてくれる?」


「「「ニャ!」」」


 さくっと終わらせて、今日は時間までのんびりかなと思っていたら、


「ショウ君、私も」


 ミオンがログインしてきて、洗い物を手伝い始めた。


「白竜姫様たちはいいの?」


「エルさんがいますし、二人でやった方が早く終わりますよ」


 それもそうかってことで、手分けしてさくっと。

 応接室から白竜姫様の歌声が聞こえてくるけど、スウィーとフェアリーズのコーラスで歌ってるのかな?


 ………

 ……

 …


 ミオンの演奏でみんなが歌うのをヤタ先生と聞いてたんだけど、


<ベルさんがお話があるそうですがー、ライブを見せてもー?>


 そろそろ終わりにしようというところで、ヤタ先生から声がかかった。


「あ、はい。オッケーです」


 なんだろ? 急ぎのことってあったっけ?


『急にごめんなさいね。翠竜エメラルディアさんと遭遇したそうよ』


「えっ? マリー姉がですか?」


『それが別のプレイヤーって話なの』


 それを聞いて、ちょっとホッとする俺。

 シーズンさんもいるんだろうけど、変な方向に進まなくてよかったなと思ったんだけど、わざわざ報告に来てくれたってことは、


「何かありました?」


『渓谷の奥で遭遇したそうなんだけど、驚いて逃げてっちゃったらしいのよ。エメラルディアさんが……』


「竜の姿だったんですよね?」


『ええ、もちろん』


 ……初手、ドラゴンブレスじゃなかっただけ優しいのかな?


「そういえば、セスちゃんは?」


「あ、ひょっとしてマリー姉に会いに?」


『いえ、アズールさんに報告に行ってくれたわ。ショウ君の話を聞いていたのもあるけど、竜のことは竜に報告するのが筋だろうって』


 なるほど。あいつらしいな。

 で、ベル部長はそれを報告に来てくれたのと、


『あと、予定を早めて、明日のライブで南の島のことを公表しようと思うのだけど、いいかしら?』


「ええ、それは全然」


 死霊都市の方はゲイラさんたちに任せられるし南の島の方も準備完了。

 すでに『白銀の館』や親交のあるプレイヤーズギルドの人たちで、南の島のシフトやNPCの雇用もできてるそうだ。


『それと……これはオフレコなのだけど、サバナさんから「もしものことがあったら、妖精たちを安全な場所に匿ってほしい」って話が来てるのよ』


 あー、転移魔法陣の出入り口を死霊都市にしたのも、それを見越してなのかな。

 で、そういうことになったら、最悪、南の島へってことなんだろうけど……


「ショウ君」


「そうだね。エメラルディアさんのこともだけど、アージェンタさんに報告しておかないと」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る