日曜日

第499話 日常のよくあるサプライズ

「なに!?」


「は? 明後日もう戻るの?」


「おう。静流に頼まれたことがあってな」


 そう言って、トーストを一気に口に放り込む。

 静流って誰だよって、多分、大学での友達なんだろうけど、


「それはシーズン殿のことか?」


「おう」


「ふーむ、なら仕方あるまい」


 ああ、シーズンさんの本名、名前が静流さんなのか。

 それならまあ、美姫も言う通り仕方ないかなと思う。お世話になりっぱみたいだし。


「頼まれ事って?」


「着物のモデルやって欲しいんだってよ」


「おお! 姉上の着物姿は見てみたいのう!」


 シーズンさんの実家が着物を扱うお店、呉服屋だっけ? そこの加賀友禅の着物のモデルをして欲しいんだとか。


「似合いそう。カタログとかに載るの?」


「おう」


 おかわりのトーストを渡すと、それにバターを塗り始める。

 それならそれで、買い出しに行くときに調整しないとだよな。


「じゃあ、今日明日の夜は真白姉の好きなものにするか。何がいい?」


「これから買い物行くんだろ? みんなで行こうぜ」


「賛成!」


 それが一番確実だよな。

 じゃあ、ちょっと奮発して、いいもの買いに行くか……


 ***


「お義姉さんが帰るのは午前中ですか?」


「うん。10時過ぎの電車かな」


「私も見送りに行きたいです」


 時間的には全然問題ないんだけど、


「火曜ってリアルでの収録の日だよね。午後からだから問題ないのか」


「あの、セスちゃんも収録に来れませんか?」


「え? 連れてっていいの?」


「はぃ」


 俺と同じで別室で見てるだけになるのと、あとは収録のことを外部に漏らさないことが条件らしい。まあ、それは全然問題ないわけで。


「じゃ、後で聞いておくよ。セスなら絶対に行きたいっていうだろうけど」


「はぃ」


 さて、今日は俺は鍛治に専念する予定。

 剣鉈を重銀鋼で作ってみるのと、包丁やら鍋やら、キジムナーたちに配る予定だった料理道具を作らないと。


「じゃ、あとは頼んだよ」


「ワフ」「〜〜〜♪」


 ミオンたちはギリー・ドゥーの森の散策に。

 新しい食材、ハーブとかを探しに行ってくれるので、クミンに期待したいところ。

 屋敷の表に出たところで、シャルたちがリゲルを連れてやってきた。


「ニャ」「ブルル」


「二人もミオンのこと頼んだよ」


「大丈夫ですよ。何かあったら連絡しますね」


「〜〜〜……」


 ミオンがそう言って微笑む。

 スウィーが呆れ顔だけど、心配なものは心配なんだよ……


 ………

 ……

 …


 キジムナーたちの人数を考えると、それなりの数を用意しないとなので、久々に採掘場に来た。


「お、魔銀ミスリルの採掘ポイント復活してる」


 復活までが一定期間だし、今日のうちに採掘しておかないと。

 まあ、そんなに使うことないんだけど、なんか損してる気になるし。


 上の方に復活した金と魔銀ミスリルを土木魔法で掘り、MPが回復する間は手の届く範囲の銅、鉄、軽銀を掘る。

 掘って、鍛冶場まで運んで、掘ってを繰り返してると、


【採掘スキルのレベルが上がりました!】


 久しぶりに採掘スキルのレベルが上がって8に。そして、


【錬金術スキルのレベルが上がりました!】


 金のインゴットができたところで、錬金術スキルが7に上がった。


 採掘が一段落したら、今度は合金インゴットの作成を。

 重銀鋼インゴットは、紫鋼8、鉄1、魔銀ミスリル1の組み合わせで1時間コース……

 待ってる間に鉄製品を作るか。包丁、フライパン、鍋は鉄と木材を用意して、自作複製アーツを発動し、クールタイム中は普通に作る。


[報告。古代魔導炉の作業が完了しました]


「っと、さんきゅ」


 ニーナが完了を知らせてくれるのは本当に助かる。

 取り出した重銀鋼インゴットを鑑定してみる。


【良質な重銀鋼インゴット】

『紫鋼、鉄、魔銀ミスリルの合金インゴット。純度が高い。

 鍛治:重銀鋼製品に加工が可能』


 良質なのはいいんだけど、重銀鋼製品ってアバウトな説明だよな。錬金術の本の方をちゃんと調べるとわかるのかな。

 でもまあ、


「うん。鉄よりもかなり重い」


 金属の比重的には、この中では金が一番重いはずで、実際に持ってみると重いんだけど、柔らかいって話だから武器には向かないよな。

 さっそく、これを使って剣鉈を……の前に、


「もう一つ合金を試しておくか」


 緑金鋼インゴット、金7、銀2、魔銀1の配合で作れて、アクセサリとかに使いやすいらしい。

 今までは魔銀ミスリル一択だったけど、これを使ってスウィーの羽の外枠を作ってみようかなと。水晶原石は受け取ってるし、これで素材は揃うはず。


『ショウ君。今、いいですか?』


「あ、ミオン。大丈夫だけど、何かあった?」


『はぃ。オオハクという植物を見つけました。大麦だと思います』


「おお! すごいじゃん!」


 麦茶は確実に作れるよな。

 あとは……ビールとかウイスキーだっけ? アージェンタさんたちが喜びそう。

 麦味噌が作れたりするといいんだけど、麹というかハク、お米が見つからないからなあ。


『ラケちゃんたちも食べるそうなので、少しだけもらって、増やしていいですか?』


「もちろん」


 小麦(コハク)ほど使うわけじゃないから、一気にたくさんは必要ないし、水路近くの空いてる場所に植えることに。


『ショウ君の方はどうですか?』


「ガジュたちに渡す分の料理道具は揃ったかな。あとは剣鉈を新しくするから、あと1時間ぐらいだと思う」


『はぃ』


 ミオンたちはギリー・ドゥーの森の西の端、海が見えるところまで行ってるそうで、帰り道もまたいろいろ探しながら戻るとのこと。

 時間は……、午後3時を回ったところだし、俺も4時までには終わらせて戻らないとな。


 ………

 ……

 …


【(仮)最高品質のククリナイフ】

『片手持ちの重銀製ククリナイフ。重銀鋼で作られており最高品質。(解説修正、追記可能)

 攻撃力+78、短剣+1、特殊剣+1、バックスタブ成功時のダメージに隠密スキルレベルに応じた補正が入る。

 短剣・特殊剣:片手持ち武器。投擲:投擲可能。伐採:ある程度の大きさまでの木を切ることが可能。

 作成者:ショウ』


「あ、これヤバいやつ……」


 投げられるギリギリの大きさにしたら全長が40cmを超えた。

 最初は剣鉈のつもりだったけど、こう、だんだんと特殊剣のイメージに引っ張られて、完全にククリナイフになっちゃった感じ。


 それにしても、魔銀ミスリルが混じってるから+1がつくのはまだ良いとして、バックスタブ成功時のダメージにも補正が乗るのはやりすぎじゃないかな?

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