第472話 三種の神食材?
「こんなもんかな?」
「リュリュ!」「ジュジュ!」
パーンたちが手伝ってくれたおかげで、壊れた柵はあっという間に修理完了。
個人的にはもっと堅牢な感じに、石壁を使った城壁っぽくしたいところだけど、今日のところはこれで。
「ガジュ。コボルトたちって何度も来てるの?」
「ジュジュ!」
「なるほど……」
曰く、月に一度ぐらいだけど、もうずっと何度も来てるとのこと。
その度に、キジムナーたちにも被害が出るんだけど、神樹の守り手として負けられない戦いらしい。
「コボルトたちが攻めてくるのは、この砦のところだけ? 他の場所は大丈夫?」
「ジュ〜。ジュジュ」
ふむふむ。ここがちょうど集落の入り口で、他の場所は高い崖あって侵入を塞いでくれていると。
アームラの林の奥もそうだったけど、キジムナーの集落がうまく崖で囲まれてる感じなのかな?
「教会があるのは知ってる?」
「ジュ。ジュ〜ジュ」
「へー、そうなんだ」
ずーっとずーっと昔に人間と棲み分けしてた時があったそうだ。ただ、ガジュもそれは言い伝えで聞いた話らしい。
ああ、教会の話で思い出したけど、
「ザックマンティスってモンスターがいるけど、そいつらは大丈夫?」
「ジュジュ」
「へー、あいつらが嫌がる花が」
なんだろう? 除虫菊とかだったり?
「ショウ君。ただいまです」
「ミオン、おかえり。どうだった?」
「はぃ。コプティがあったので、ヒールポーションをできるだけ。あと、アトちゃんたちがこれを」
ミオンが手渡してくれたのは……
【カーメリー】
『亜熱帯に生息する植物。根茎は食用、調薬に利用される』
え? これってひょっとして、ターメリック?
「あと、これも」
【シャンツィー】
『温帯から亜熱帯に生息する植物。葉には独特の香りがあるが食用。種子は調味料、調薬に利用される』
あー、この香りは間違いなくパクチー。ってことは、コリアンダーなので種が欲しい!
あれ? ターメリックとコリアンダーってことは、あとクミンがあればカレーが作れる!?
「ショウ君?」
「えっと、これってターメリックとコリアンダーなんだよ。だから、あとクミンがあればカレーが作れるかも」
「カレーですか!?」
そりゃ驚くよなあ。俺だって最初に聞いた時は驚いたし。
もちろん、もっと複雑な味わいを出そうと思ったら、もっとたくさんのスパイスがある方がいいんだけど、基本この3つがあればカレーはできるはず。
「うーん、探したいけど、そろそろ時間だよね?」
「はぃ。なので、そろそろみんなを」
「りょ。えーっと」
ルピたちとラズはいる。パーンたちももちろん。
スウィーとフェアリーズ、アトたちギリー・ドゥーもいる。
じゃ、あとはシャルとトゥルーたちかな? と思ってたところで、
「キュ〜」「ニャ」
「ああ、おかえり。トゥルーはどうだった?」
「キュキュ〜♪」
トゥルーが嬉しそうに話してくれたのが、集落の西側に海岸があって、そこでキジムナーたちの漁を手伝ったらしい。
追い込み漁? キジムナーたちの網を使った漁を教えてもらったと嬉しそう。
「ニャニャ」
シャルは聞き込みをしてる途中で、キジムナーの子供たちに煮干しが大人気だったと教えてくれた。
で、大人たちに作り方を聞かれたので、教えようと思ったんだけど、キジムナーたちは調理器具が足りてないらしい。
今あるものを大事に使ってるそうだけど、それもずいぶん古そうだったと。
「すっごい昔に人がいたことがあったって聞いたし、その頃に手に入れた物とかかなあ」
「そうなんですね」
コテージがあるし、古代遺跡の中にはいろんな部屋があって、それなりの人がここで仕事してたはずだし、その頃のことなんだろうと思う。
ガジュでも伝聞ってことは、随分前なんだろうけど……
「〜〜〜?」
「ジュジュ〜」
「ああ、厄災はやっぱりここも影響あったのか……」
みんなで神樹に集まってやり過ごしたらしいけど、それはもう人はいなくなった随分と後のことらしい。
「なんかこう、妖精たちの話を聞いてると、古代人って厄災が起こる前に無人島から撤退してる感じだよな」
「せっかくここまで作った物を、どうしてなんでしょう……」
ミオンの視線の先には、古代遺跡の塔が見える。
中の採掘施設は地下11階で断絶しちゃってるけど、それより上の階は今でも問題なく使える状態だ。
「〜〜〜?」
「ジュ〜ジュ」
スウィーがなんで人間がいなくなったのかをガジュに聞いてくれたんだけど、ガジュもそれについては知らないらしい。
ただ、最後までキジムナーたちを助けてくれて、今ある道具とか残ってるものは、その時にもらったものであってるようだ。
ともかく、
「だいたいの道具は俺が作れるから、欲しい分は遠慮なく言ってね」
「ジュ!?」
ガジュがすっごく驚いてるけど、一度作った料理道具とかは、工芸(鍛治)の自作複製アーツで用意できるからなあ。鉄鉱石も鉄インゴットも余ってるし。
「キュキュ〜?」
「あ、うん、いいよ。ちょっと待ってね」
トゥルーにお願いされたのは、翡翠の女神の木像をキジムナーたちにもって話。
そういうところに気がつくのって、トゥルーって本当に優しいなあと。
「えっと、これでいいか」
柵を直すのに使った木材がまだ残っていたので、それを手に取る。で、さくっと自作複製アーツを発動させると、
「ぁ」
「うん、バッチリ。これ、どう?」
「ジュジュジュ!」
「キュキュ〜♪」
受け取った翡翠の女神の木像に驚き、それを両手で頭上に掲げるガジュ。
トゥルーが「うちは神樹のところに飾ってる」と説明すると、うんうんと頷いている。
「リュ?」「ゥゥ?」
「ニャニャ〜」
あー、これセルキーたちには渡したし、シャルたちはそもそも教会に大きいのがあるからいいけど、パーンやアトたちには渡してないか。
「リュ!」「ゥゥ!」
「パーン君やアトちゃんたちも欲しがってるんでしょうか?」
「そうそう。木材があればすぐ作れるんだけど……」
そういえば、ギリー・ドゥーたちの森の奥に神樹があるんだっけ。そっちも行ってみないとなんだよな……
「リュリュ?」「ゥゥ?」
「ちょ、ちょっと待ってね」
アーツのクールタイムが終わるまで待たないとなんだけど、それをどう説明したらいいのかがわからない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます