第469話 南の島ツアーは波乱の幕開け?
「なんだか大人数になっちゃったなあ」
「ですね」
俺とミオン。ルピ、レダ、ロイ、ラズの幻獣組とで6人。
そして妖精組が、スウィーとフェアリーズの11人、トゥルーとセルキーが6人、パーンとウリシュクが6人、シャルとケット・シーが8人、アトとギリー・ドゥーが6人……
「ニャニャ!」
「うん。頼んだよ」
シャルたちケット・シーが、しっかり妖精たちの護衛をしてくれるというので、そこは信頼して任せよう。
どっちにしても、今日は危ないところに行くつもりはないし。
「じゃ、俺とルピたちが先に行くから」
「はぃ」
一度に全員乗るのは不可能なので、何回かに分けるしかない。
転移したらモンスターが目の前に! ってことはないだろうけど、一応、俺とルピたち幻獣組が先行。
シャルたち、パーンたち、トゥルーたち、アトたちと来て、最後にミオンとスウィーとフェアリーズ。
「お待たせしました」
「平気平気。じゃ、行こうか」
すでにルピたちが先行して、転移エレベータ前までを索敵に出てくれている。
しんがりをシャルたちに任せて進み、何事もなく転移エレベータで地上1階まで移動。
「ゥゥ?」
「〜〜〜♪」
アトたちは初めてだからか、ちょっと緊張してる様子。
トゥルーとパーンはもう慣れてるからか、おしゃべりしながらついてきてくれている。
「じゃ、開けるよ」
「キュ〜」「リュ〜」
そういえば天気がどうなのか全然考えずに連れてきちゃったな。
暴風雨とかだったらどうしようと思いつつ、扉を開けると……
「ワフ!」「「バウ!」」
「いいお天気ですね」
「良かったよ。雨降ってたら、みんなをがっかりさせるところだったし」
みんなが外へ出たのを確認してから扉を閉める。
トゥルーたちは階段のところまでまっすぐ走っていって、そこから次々と海へ飛び込んで行く。
「ぁ!」
「大丈夫大丈夫」
前にトゥルーたちと潜った時にわかったけど、どうやらこの内海にはモンスターいないっぽい。
まあ、無人島スタートした時に近くの海にいきなりモンスターは出ないんだろうなと。俺の島でもそうだったし。
「じゃ、アームラの林まで行こう」
「はぃ」
うまくキジムナーと顔合わせできれば、その後はあたりの散策かな?
新しい食材が見つかるといいんだけど……
「キュ〜♪」
「リュ〜♪」
西側のコテージ沿いに進むと、トゥルーたちも並走……並泳してついてくる。
トゥルーを囲むように、しっかりと陣形を組んでるあたり、年長のセルキーたちが気をつけてくれているっぽい。
「おーい、奥へ行くよー!」
「キュ〜!」
端っこまできたところで、水中からジャンプ。
うーん、いつ見てもすごいんだけど、セルキーだからできるんだろうなあ。
「キュキュ?」
「ゥゥ」
「〜〜〜♪」
トゥルーとアトも会うのは初めてだよな。
アトたちはミオンにくっついて、ちょっと恥ずかしそうだけど、ちゃんと会話はしてるっぽいから大丈夫かな。
「リュ?」
「いるかな? まあ、ミオンいるから、気がついたらすぐ来てくれると思うけど」
「キジムナーちゃんですか?」
「うん。前もみんなで食べてたら来たんだよね?」
「はぃ」
北西へと続く小道を進むと、アームラの林が見えてくる。
ルピたちはさっと散開し、シャルたちも周囲の安全を確認。
「リュ。リュリュ」
「キュキュ」
「「「リュ〜」」」「「「キュ〜」」」
パーンとトゥルーの号令で、ウリシュクとセルキーたちがアームラの実を採り始める。ちゃんと熟してるのだけを選んでるようで真剣な眼差し。
「ミオンも」
「はぃ。アトちゃん、みんなも」
「〜〜〜♪」
「ゥゥ」「「「ゥゥ」」」
ミオンがついてれば大丈夫かな? スウィーたちもいるし。
さて、俺はどうしよ。こっちでゴソゴソしてれば、キジムナーも気づいてくれると思うんだけど……
「んー、ちょっとルピと出てくるよ」
「ぁ、はぃ」
シャルやレダ、ロイたちにも伝えて、キジムナーが来た方へと。アームラの林から南西方向、島の西側から来たそうだ。
合宿から帰ったあと、少しキジムナーの伝承とかを調べてみたけど、南の島でガジュマルとかに住んでる妖精なんだとか。
魚を食べて暮らしてるそうなので、トゥルーたちと仲良くなれそうな気がする。
「ワフ」
「ん」
ルピがキジムナーの匂いを覚えてくれてるみたいで、すんすんと地面を嗅ぎながら、樹々の間をすり抜けていく。
よく見ると、周りに比べて雑草も少ないし、キジムナーが使う道になってるのかな?
「ワフ!」
「え!?」
ルピが何かに気がついて走り出し、慌ててそれを追いかける。
すぐに感知共有に引っかかったのは……
「ミオン! キジムナーがモンスターと戦ってる!」
『は、はぃ!』
「俺とルピは援護に行くから、みんな来て!」
『〜〜〜!』
スウィーの号令が聞こえたし、急いで来てくれるはず。
先を行くルピに離されてしまいそうなので、スピードを上げつつ感知共有を再確認すると……、集団戦っぽい!?
「ルピ! 無理せずキジムナーたちのフォローで!」
「ワフン!」
鋭く答えてさらにスピードを上げたルピが感知共有の届く範囲から外れた。が、もう集団戦をしている音、モンスターたちの声が聞こえてきている。
「ウォオオオ〜ン!」
林の出口で大きく吠えたルピが、そのまま向こうへと飛び出していく。
それを見送ってから、隠密スキルを発動。樹々に隠れつつ敵の背後へ回り込むように移動すると、少し開けた窪地のような場所にモンスターの姿が見えた。
血走った目をし、よだれを垂らしている二足歩行の犬、【コボルト】という赤いネームプレート。
ざっと数えても30匹以上はいて、キジムナーたちの砦(?)へと攻撃を仕掛けている。
「ウガー!!」
「ジュジュ!」
木の柵を壊そうと石斧(?)で攻め寄せるコボルトに対し、キジムナーたちが石槍で迎え撃っている。
一箇所、柵が壊れちゃってるところがあるけど、そこに寄せたコボルトがルピのクラッシュクローを喰らって吹っ飛んでいった。
その様子にキジムナーたちが大きな歓声を上げ、コボルトたちの苛立ちのような叫声が返される。
『ショウ君。レダちゃんたちが先行してます』
「りょ。俺は隠密でボスを叩くから、ミオンたちは無理しないように」
『はぃ』
さて、コボルトたちのボスはどこかな……
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