木曜日

第462話 リアルではオールドタイプ

「おおー!」


 快晴の木曜日。オーナーの運転する車で島の観光に。

 まずはメジャーなところからということで、島の西の端から隣の島を眺めている。

 その隣島へは大きな橋で繋がっているものの、島全体が自衛隊と米軍の共同基地になっていて立ち入り禁止。たまに軍用機が飛んでたりするという……


「ここで問題ですー。隣の島全部が基地になったのはいつのことでしょー?」


「えーっと……」


 なんか珍しくまともな会話をしてる気がするけど、かなり難しい問題を出されても美姫が答えちゃうんだよな。

 どんな頭してるんだよって思うけど、母さんもそんな感じだしなあ……


 その次は島の北側の灯台に行ったり、ビーチにある謎の岩を見に行ったり。

 ヤタ先生が何かにつけて写真を撮ってくれるんだけど、もう完全にこれ観光旅行だよなあ。


 お昼を食べてから島の南側へ。

 今度もまた灯台があるのかなと思ったら、


「鍾乳洞ですか?」


「ああ、去年は台風が来ててダメだったんだ。今年は天気で良かったよ」


「去年はほとんど台風でしたからねー」


 と視線がベル部長に。

 さらっと雨女疑惑をかけられたベル部長だけど、それを言うならヤタ先生もじゃないのかな?

 入場料を払って奥へと進んでいくと、特に飾り気のない洞窟の入り口が見えた。


「足元が滑るから気をつけてくれよ」


「あ、はい」


「兄上。ほれ、ミオン殿も」


「はぃ」


 右手をミオンに、左手を美姫に取られてしまった。

 まあ、それはいいんだけど、


「両手に華ですねー」


「これって、私、ディスられてるのかしら?」


「それ以上は言っちゃダメですよー」


 ……後ろの2人の空気が不穏なので、さっさと中へ入ろう。

 入り口からはよく見えなかったけど、中へ入ると間接照明がしっかり置かれていて、薄明かりに照らされた神秘的な雰囲気が。


「おぉぉ……」


「すごいです……」


 洞窟自体は結構奥まであるみたいだけど、行けるのは20m程度。そこから先は神域ってことになってるらしい。


「IROって鍾乳洞とかあったりする?」


「クリーネの南にあると聞くの」


 クリーネってどこだ? 聞いたことある名前なんだけど……


「釣りの、漁村の……」


「ああ、釣り人が集まってるって聞いたところか」


 釣れそうな場所を探して海岸沿いを探してたら、洞窟を見つけて、そこが鍾乳洞だったらしい。

 古代遺跡の一部だったりはせず、普通に結構奥まで行けるとのこと。俺が戦ったことがあるスラッジバットが出るそうだ。


「あのコウモリか……」


「そういえば兄上は、あの北端の洞窟の場所へは行かんのか?」


「いや、行こうと思って準備してるんだってば」


 あそこに行くとして、その手前の島の北部を明らかにしてからだよなと。

 ギリー・ドゥーたちが住む森の奥、湖と神樹があるらしい場所が先かな? その次に、綿花を見つけた草原の先、馬っぽい動物が見えたあたりとかも探索したい。


「っと、ここで終わりか」


 奥に続く道は狭く、天井も低くなっていて、普通に考えて危険だろう。

 オーナーさんの話だと、ずっと先に神棚があったりするらしい。


「ショウ君がいると、何か起きるんじゃないかって気がするな」


「リアルは勘弁してください」


 俺は普通の高校生です……


 ***


「ちょっと行って、魔銀ミスリルのインゴット取ってくるよ」


「はぃ。私たちはアームラの若木を植えたら、南側を回って来ますね」


「りょ」


 時間は午後3時を回ったところ。

 観光から戻ってきて、夕飯まで時間があるので、忘れないうちにいろいろ済ませておきたい。

 俺は受け取った紫鋼鉱石をインゴットにするのと、ミオンのためのブローチを完成させようかなと。

 一応、ブローチの件は内緒……


「リュ〜」「「「リュ〜」」」


 5本ある若木をウリシュクたちが運んでくれる。

 パーンがいれば、若木の植え付けは心配ないだろうし、ルピたちも護衛につけてあるから大丈夫だろう。

 ちなみに、スウィーとシャルたちは銀猫便をお願いしてある。

 トゥルーたちの干物や、余ってるワインをアズールさんやゲイラさんたち竜人族に渡しておきたいし。


「じゃ、ルピ。ミオンの護衛、頼んだよ?」


「ワフッ!」「「バウ!」」


 ………

 ……

 …


 紫鋼鉱石を古代魔導炉に放り込んで、インゴットにする待ち時間の間に、ミオンのためのブローチを作る。

 大きなオパールをせっせと磨き、幻鳥(ヴェズルフェルニル)の卵の殻で作った枠に収めるんだけど、魔銀ミスリルも使ってしっかりとホールドするように……


[古代魔導炉での精錬が完了しました]


「ふう」


 3回目の精錬が終わって残り2箱。

 1箱あたり15分は鉄とか銅とかと同じなので、そろそろ1時間近く経つはず。

 ということは、そろそろ、


「ワフ〜」


「おかえり」


 北側の扉からルピが飛び込んできて、俺が作業中だと知って、しっかりとお座りして待ってくれている。

 火床でカンカンやってる時は危ないから近づかないようにって言ってあったもんな。


「ショウ君。ただいまです」


「おかえり。ちょっと待ってね。もうすぐ終わるから」


「はぃ」


 遅れてきたミオンにも、少し離れたところに座ってもらって、どうだったかの話を聞きながら仕上げ作業を。

 アームラの若木を植えてもらった後は、そのまま南の砂浜を通って南西の森へ。

 パーンたちは、チャガタケやサブマロ、仙人筍を見つけるのも得意らしく、たくさん採ってきたらしい。


「じゃ、それを持って行ってくれたんだ」


「はぃ」


 そういえば、チャガタケ=椎茸なら場所さえ選べば栽培も可能だろうし、パーンたちと試してみるのもいいかもだよな。

 あ、ギリー・ドゥーたちに相談もしてみていいかも?


「ショウ君は何を作ってるんですか?」


「ん、もう終わるから……」


【細工スキルのレベルが上がりました!】

【細工スキルの基礎値が上限に到達しました。返還SPはありません】


 やっと細工スキルの基礎値も最大レベルに到達。


「細工スキルが最大になったよ」


「おめでとうございます。上限突破はできそうですか?」


「うん。この魔銀ミスリルのノミが細工+1だから……」


【細工のスキルレベルが上限を突破しました】

【工芸(細工)スキルが獲得可能になりました】


「できた。工芸(細工)も取ってみるか」


「すごいです!」


 というわけで、さっそく工芸(細工)を取得!

 完成してるブローチだけど、ちゃんと銘を入れて……


【工芸(細工)スキルのレベルが上がりました!】


 よし! さて、肝心の出来はどうかな?


【(仮)魔鷹まよう卵殻らんかくと遊色オパールのブローチ】

魔銀ミスリルと幻鳥ヴェズルフェルニルの卵殻、遊色を持つ希少なオパールでできたブローチ。マナを保持する力に優れ、神性を帯びている。

 MP+175。神聖魔法+2。

 作成者:ショウ』


 あ、これ、やらかしたかも……

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