第457話 上から来るぞ! 気をつけろ!

 ミオンの話だと、コテージ群を西に行った先に赤い果物がなってる林があったそうだ。で、その奥、北側へと続く道の先に教会っぽい屋根が見えたらしい。


「ちゃんとした道?」


『ぁ、雑草とかがすごくて……』


「ああ、なるほど。ちょっと待っててくれる? ちょうど一段落して、トゥルーたちを呼びに行ってもらったところなんだ」


『はぃ。このまま待ってますね』


 ギルド通話を終えたところで、パーンがトゥルーたちとレダにロイを従えてやってきた。

 木材を運ぶのを手伝ってもらう前に、みんなで見に行ったほうが良さそうだよな。


「ごめん。ちょっとミオンたちのところに先に行ってみていいかな? 教会らしい建物を見つけたって話だから」


「キュ〜」「リュ〜」


 トゥルーたちの了解ももらったので、えっと……


「レダ、ロイ。ルピたちのところに案内してもらえる?」


「「バウ」」


 2人に先導してもらって、コテージの西側へと移動。なんとなく小走りになっちゃうのはしょうがない。

 西の端のさらにその先にある林には、うん、マンゴーかな、これって。3〜4mぐらいの木に鈴なりの濃い赤い果実を鑑定すると、


【アームラの実】

『アームラの木の実。熟したものは甘みが強く美味。

 料理:果肉、果汁を食材として利用可能』


 スウィーが好きそうだよなあ。

 ドライマンゴー、もとい、ドライアームラにすれば日持ちもしそうだし、インベントリに入るだけ収穫していこうかな……


「ショウ君!」


「あ、いたいた」


 ちょっと開けた場所に座って、採集したアームラの実をみんなで食べたっぽい。

 皮を剥いた実の色はマンゴーと同じ、綺麗なオレンジですごく美味しそう……


「えっと?」


 ミオンの隣に座り、膝の間におさまってきたルピを撫でつつ話を聞く。

 コテージまでの道を戻り、そのまま西側の端まで進んだところで、このアームラの林を発見。

 ミオンが鑑定して食用なのを確認してから食べてみたらしい。


「マンゴーは食べたことがあるので、同じだなってわかりました」


「やっぱりそうだよね」


「ショウ君もどうぞ。はぃ」


 スプーンですくった果実を口の前に出されたので、そのままパクッと。

 うわ、これすっごく甘い……


「できるだけ採って帰ろうか。あ、いや、若木を持ち帰って、島の南側で育つか試すのもありかも?」


「いいですね」


「〜〜〜♪」


「で、教会っぽい屋根って?」


 ミオンの話だと、このアームラの林は斜面に囲まれてるんだけど、北の一角に道が通ってて、その先に見慣れた教会の屋根が見えたらしい。


「覗いただけ?」


「はぃ。ルピちゃんもシャル君も止めたので」


「うん、それで良かったと思う」


 何かしらモンスターが出そうな感じがするし、意表をついて道が崖崩れで閉ざされるとかの可能性もあるし。

 ちゃんと止めてくれたルピを撫で、シャルにもお礼の煮干しを。


「ニャ〜」


 シャルはこれ大好物なんだよな。って、トゥルーたち、ルピたちの目が……持ってる分、全部出しちゃうか。


「うーん、教会はいろいろと気になるな……」


「今から見に行きませんか? 時間もまだありますし」


 まだ午後2時を回ったところ。

 夕飯前、天気が良ければみんなで散歩に出るって話があって、午後4時にはログアウト予定だけど、時間は十分にあるよな。


「じゃ、行ってみようか。木材は帰りに回収すればいいし」


「はぃ!」


 ………

 ……

 …


 斜面と聞いていた場所は、河原の土手みたいな感じで、ギリギリ登れそうな雰囲気がある。少なくともパーンは余裕そう。

 その斜面の一角に、幅3mぐらいの道がぽっかり通っている。不自然ってほどでもないけど、人力でくり抜いたように見える。


「うちの教会の裏手と似てるなあ」


 雑草でぼうぼうだけど、それをかき分けると綺麗に敷かれた石畳が。


「ショウ君。ここから少しだけ建物が見えるんです」


「お?」


 ミオンのピッタリ隣に立って、指差す方向を見る。

 道の途中、上から木の枝がしだれがかって視線を遮ってるんだけど、この場所からだとその合間に見覚えのある屋根が見えた。


「うん、教会っぽいね。……また地下室があったりするのかな?」


「女神像があるかもです」


「ああ……。まあ、とりあえず見に行こうか。ルピ、レダ、ロイ」


「ワフ!」「「バウ!」」


 っと、その前にパーティーの状態を確認。

 俺、ルピ、レダ、ロイ、パーン。ミオン、スウィー、シャル、ラズ。トゥルーとセルキー2人。

 この3パーティーでちゃんとアライアンスになってて、スウィーの【フェアリーの女王の加護】もついている。


「加護を」


「さんきゅ」


 ミオンの加護が全員に行き渡って準備完了。

 まずは、俺、ルピ、ラズが先行し、レダとロイが続く。スウィー、シャル、パーン、トゥルーたちがミオンの周りをがっちりガード。


「ちょっと待ってね」


 土木スキルで強度に問題がないかを見る。うん、大丈夫そうかな。

 気配感知はルピに任せ、腰にまで届きそうな雑草を踏み折りながら慎重に進む。

 20mほどまっすぐ進んだところで、さっきの崖からのかぶさっている枝をこえて、


「お、見えた」


 今度はもっとはっきりと教会が見えた。屋根の角度からして、正面はこっち側っぽい……


「ワフ!」


「ミオン!」


 気配感知に反応が! 場所は後ろ! 上から!


「キュ!」「「キュ!」」


「ギュアァァァ!」


 上空から飛びかかってきたそれを、トゥルーたちの三叉槍が迎撃し、押し返してくれた。

 その隙にミオンの前に出て剣鉈と円盾を構える。


「うわ、気持ち悪……」


 そいつ、どう見てもカマキリなんだけど、2m近い大きさで端的に言ってキモい。虫って大きくなると途端に気持ち悪くなるよな。


「「キュキュ!」」


「キュ〜!」


「ニャ!」


「あ……」


 セルキーたちが今度は両腕を攻撃し、すかさずトゥルーの一撃が胸を貫くと、最後はシャルの細剣レイピアが首を刎ねて戦闘終了。

 うちの子たちが強すぎ……、あ、いや、ミオンがこの島でスタートして、その近くだからあまり強いモンスターは出てこない可能性もあるか。 


「ミオン、大丈夫?」


「は、はぃ。ビックリしましたけど……」


 そう言って見下ろすのはカマキリだったもの。ってか、ちゃんと鑑定しないとだ。


【ザックマンティス】

『温暖な地域に生息するカマキリのモンスター。

 上空からの飛びかかりと、棘のついた鎌での拘束に注意』


 危ねえ……


「あの、これも解体した方がいいですか?」


「あー、俺がやるよ。カマキリって体の中に寄生虫がいたりするから……」


 それを聞いてミオンが一歩後ずさった。

 解体した瞬間に寄生虫がポップするとか嫌すぎるよな……

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