第436話 海鮮たっぷりトマト鍋
夕飯を終えての食休み中。
今日はかなり手抜きして、スーパーで安かったマグロの柵を使った簡単鉄火丼で済ませた。
「それで実際にギルドの出張所が開設されるのはいつなのだ?」
そう言って、食後の緑茶をずずっとすする美姫。
最近は椿さんがおみやげにとくれる茶葉を使ってて、これがまたおいしいんだよな。
「んー、アズールさんが準備終わったら連絡するって言ってたから、それを待ってる感じかな。今日のライブでいつからって言えればいいんだけど……」
「ふむ。ベル殿からギルドの生産組に話したのだが、気が気でないようでの」
ピアノの修理の話はもう内々に伝わっていて、生産組の人たちは既に死霊都市に来ているらしい。特に大工と鍛治の2人が興味津々なんだとか……
それはいいんだけど、
「問題は調律らしいんだけど、できる人っているのか?」
「うむ。マスターシェフ殿からデイトロン殿経由で、本職でピアノや楽器の調律をしておる方を紹介いただいた」
「マジか。すげーな……」
本職の人が来てくれるなら安心かな?
マスターシェフさんもデイトロンさんも、うちのチャンネルの常連だし、ちょっと心づけとか送ったほうがいいんだろうか……
あ、あとそうだ!
「通常の依頼にプレイヤーが殺到したらなんだけど……」
依頼を受けたい人たちの中から抽選で選ぶ形にしようかなと。
これなら運次第ってことで、はずれてもしょうがないかって思ってくれるはず。
「ふむ、良いのではないか? だが、誰でも抽選に参加できるとなると……」
「あ、いや。どの色でもいいから竜貨を預けることで参加ってことにするよ。当たっても外れても返すってことで」
「ふむふむ」
竜貨を返す時に詐欺られないように、半券みたいなのを残す感じがいいかなと。
そのあたりはアズールさんと相談して決めよう。
「さて、そろそろログインするかの。兄上も急いだ方が良いのではないか?」
「うん、そうするよ」
さて、いよいよギルドのお披露目と最初の依頼の発表か。
転移魔法陣を報酬にしちゃうの、どういう反応されるんだろうな……
………
……
…
「キュ〜?」
「うん、その鍋は煮立たせないぐらいでお願い」
「キュ〜♪」
お手伝いのセルキーに味の調整が終わった鍋を委ねる。
セルキーたちが漁った魚も、パーンたちが育てた野菜も準備完了。
<今日はー、私はコメント欄の方に集中しますのでー、それ以外はお二人でやってみてくださいねー>
「あー、了解です」
『は、はい!』
例のフォーラムにいためんどくさい連中がコメント欄で騒ぐ可能性もあるし、ヤタ先生にはそちらを任せる形になった。
それをお願いすることになる時点で、本当にめんどくさい連中だし、一生関わりたくないタイプだよな……
『ショウ君。ギルドの件と抽選の話を』
「あ、ごめん。アズールさんに連絡するよ」
ギルドカードを手に持って、
「あーあー、アズールさん? ショウです」
『はいはい、アズールだよ。ちょうど良かったよ。今、死霊都市の方の準備も終わって、最終確認を取ろうと思ってたとこなんだ』
竜人族の隊長ゲイラさんの方での準備も進み、転移魔法陣がある塔の西側にある建物をギルド出張所にするそうだ。
昨日のうちに送っておいた依頼書も無事に届いているとのこと。
明日の昼にオープン予定ということで、準備はもう終わってるらしい。
「なんかもう、いろいろありがとうございます」
『こっちこそだよ。お酒、ゲイラたちも美味しいって言ってたから、またよろしくねー』
「はい。で、えっと、依頼を見に来る人が……かなり多いかもしれないですけど」
そういう場合は抽選に。竜貨を預かる形で参加という形で行けるかを聞いておく。
かなり手間のかかることになりそうで申し訳ないんだけど、
『大丈夫大丈夫。もともとそういう感じで考えてたし、こっちはこっちでうまくやるから心配しないでね。何かあっても僕には真贋があるし』
詐欺の類はアズールさんには通用しないとのこと。なるほど、そういう使い方もあるんだ。
まあ、ベル部長から聞いた話だと、翡翠の女神像への参拝もうまく捌いてくれてるらしいし、心配しすぎてもしょうがないか。その分、お酒を作って送ることにしよう。
「じゃ、よろしくお願いします。何かあったら、また連絡します」
『うん。またね〜』
アズールさんとの通話を終えて、ほっと一息。
『ショウ君。部長とセスちゃんに連絡しておきますね』
「うん。お願い」
死霊都市の準備も、ちょうど間に合って良かった。
これで『白銀の館』の人たちも、すぐに取り掛かってもらえるかな?
メニューを開いて時間を確認。あと5分もないか……
『伝えておきました』
「さんきゅ。もう始まるけど、普段通りでね」
『は、はい』
「何かあっても俺がなんとかするから」
『はい!』
ヤタ先生だって風邪引いたりもするわけだし、今後も考えてちゃんと二人でやっていけるようにしないとだよな。
………
……
…
『それでは、島に繋ぎますね。ショウ君、ルピちゃん、島のみんな〜』
「ようこそ、ミオン」
「ワフ〜」「〜〜〜♪」「キュ〜」「ニャ〜」
いつもの港の旧酒場前からスタート。
テーブルの上にはすでにトマトスープがいい匂いを漂わせている。
『ショウ君。今日の予定を教えてください』
「今日はトゥルーたちとご飯を食べながら近況報告かな。あ、ギルド『ティル・ナ・ノーグ』の出張所が正式に稼働することも報告します」
【ロッサン】「おおお! ついに!」
【ドンデン】「飯テロ!!」
【カリン】「もうなんか美味しそうなものが〜」
【ギシサン】「報酬もう決まった?」
etcetc...
やっぱりギルドの話への食いつきがすごい。
でも、まずはみんながご飯を待ってるので、
「説明は食べながらで」
『はい。今日のお料理を説明してもらえますか?』
「今日は海鮮たっぷりトマト鍋でいいのかな? 本当は和風の鍋にしたかったんだけど、あと醤油が足りないんで」
ティアルプ(昆布)、チャガタケ(椎茸)、ソウダシウス節(鰹節?)があるのに、醤油だけないっていう。大豆があるだけに悔しい。
『本土のみなさんはお醤油はもう手に入ってるんでしょうか?』
【ベイパー】「ないっす……」
【ヴィネッサ】「むしろ島にハクないですか?」
【ティーチャン】「魔王国にもないぞー」
【マスターシェフ】「味噌も作れたらなんだけどねえ……」
etcetc...
魔王国にもないんだ。
PVに出てた王女様が関西弁? そんな感じだったし、種族に鬼がいたり、魔王国って和風なのかなと思ってたんだけど、特にそんなこともないらしい。
「キュ〜?」
「っと、ごめん。さっそく食べようか」
「〜〜〜♪」「ワフ!」「ニャ〜」
じゃ、みんな揃ったところで、
「いただきます!」
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