第431話 白竜姫様の野望・南国版

 ミオンのことも含め、アズールさんに『南洋海底資源採掘施設』がある島に行ったことを説明した。

 当然というか「なんで、そんな急に」みたいな顔をされたんだけど、俺に【翡翠の女神の使徒】という称号があることを話すと、ミオンの方を見て納得されてしまった……


 それはそれとして、向こうの島では地上へ出てミオンと合流して帰ってきただけなんで、古代遺跡の詳しい部分については説明できず。

 資源採掘施設ってぐらいだし、鉱石とか掘れるんだろうなと思うけど。


「じゃあ、調査はこれからって感じなんだね。今度はいつ行くの?」


「え? うーん、時間ができたらぐらいの気持ちなんですけど……」


「えー」


 と不満そうなアズールさん。

 でも、俺としては、


「採掘施設よりも南の島の他の場所の方に興味がありますね。こっちの島にはない果物とかあるみたいだったんで」


 隣のミオンがうんうんと頷いてくれる。

 アーカイブにはココナッツっぽいものが映ってたし、バナナとかキウイとかマンゴーとかあると嬉しい。


「僕としては、ショウ君にそっちの古代遺跡の管理者になって欲しいんだけどなあ」


 と頬づえをついてこぼすアズールさんなんだけど、


「島と遺跡、両方は無理なのかしら?」


「「姫様!?」」


 あ、白竜姫様、覚醒してる。

 エルさんもずいぶん驚いてるけど、覚醒してるところを見たことないのかな?

 で、いきなり両方とか言われたけど、俺とミオンでそんなことができるわけでもないので、


「えっと、俺たちは調べるぐらいで手一杯ですね。古代遺跡の管理者には……制御室の場所もわからないし、さすがにここみたいな幸運が続くとは思えないし」


「そう……。なら、まずは島を竜族で押さえることは?」


 白竜姫様、なんか無茶苦茶なこと言い出したんだけど、スウィーがうんうん頷いてるってことは、島よりも南国フルーツを押さえたいだけなのでは?


「アージェンタに確認しないとですが、長期に派遣できる種族はもう……」


 アズールさん、真面目に検討してるし、エルさんも考え込んでるし。


「エルが有翼人たちを率いるというのはどう?」


「それは……ショウ殿の迷惑になりかねないかと」


 と苦笑いのエルさん。

 身内のことを全然良く思ってない感じだよな。それだけエルさんはまともだってことなんだろうけど。


「……しょうがないわね。アズール、他の可能性をアージェンタと検討しておきなさい。最優先よ」


「はい」


 アズールさんの返事を聞いた白竜姫様がすっと目を閉じて……、そのまま寝息が聞こえてきた。


「ショウ君」


「あ、うん。エルさん、奥の寝室にベッドがあるんで、良かったら」


「かたじけない」


 白竜姫様を抱き上げたエルさんを、ミオンが寝室へと案内する。

 それを見送ったところで、改めてアズールさんに確認。


「島を押さえたいって本気です?」


「本気も本気だよ。姫が言ってることだし、その上で、僕としては古代遺跡はショウ君が管理者になってくれると嬉しいんだよね」


「俺が管理者になるとメリットって何かあるんです?」


「竜族が気をつけないといけない古代遺跡が減るからね」


 厄災の件もあって、あちこちの古代遺跡の動向は注視してるらしい。

 ただ、アズールさん1人だと、それも限界があるとのこと。

 今日、エルさんを連れてきたのも、今後アズールさんやアージェンタさんが忙しい時のことを考えてだそうで。


「あ、無理にとは言わないよ。でも、制御室を見つけて、大きな非常用魔晶石が残ってるようなら、それは確保はしたいかな。少なくとも魔王国には渡したくないね」


「あー……」


 ニーナと同じぐらいの大きさのやつがあれば、俺が言ったようなアダプターを作れば、死霊都市の副制御室を再起動することができそうだもんな。

 で、俺が管理者権限で再起動すれば、固定されちゃってる転移魔法陣なんかの魔導具を外せるっていうメリットがある。

 それと、あの地下で見た魔王国の王女様、PVにも出てたけど、なんか企んでそうだったし、何より氷姫アンシアが一緒にいたしなあ。


「まあ、少し考えてみてよ」


「えっと、他の誰かに相談してもいいです? こっち側で確保できるなら、俺以外でもいいのかなって」


「なるほど、それいいね。ショウ君が信頼できる人なら、アージェンタも納得すると思うし」


 なら、まずはベル部長とセスに相談だな。

 あとはナットあたりにも話してみるか……


 ………

 ……

 …


「またね〜」


「はぃ、また遊びに来てくださいね」


「〜〜〜♪」


 いつの間にかミオンとも仲良くなった白竜姫様が手を振る。

 右にはニコニコ顔のアズールさん。左には頭を軽く下げたエルさん。

 転移魔法陣が淡く光り、その光と共に3人が消えた。


「ふう……」


「お疲れ様です。なんだか大事になりそうですね」


「なのかなあ。俺はこの島で手一杯だし、南の島と古代遺跡はまかせちゃいたいんだけど」


 転移エレベータを上り、通路を北へ。

 外へと出ると、雨は上がっていて、日差しが眩しい。


「ワフ!」


 駆けていくルピの先にウリシュクたちが見える。

 雨が上がったから、畑仕事に出てきてくれたのかな?


「そういえば、アトたちは来てたの?」


「あ、はぃ」


「うわ、ごめん。裁縫の途中だったんだよね?」


「大丈夫ですよ。フェアリーちゃんたちもいますから」


 別の部屋で、綿花を糸にする作業を習ってたんだとか。

 で、ミオンはアズールさんたちが来たので中座してきたということらしい。

 まあ、顔見せしとかないとだもんな。


「ただいま」


「ただいまです」


「「「〜〜〜♪」」」「「「ゥゥ」」」


 屋敷に帰ってくるとフェアリーズとアトたちがにこやかに出迎えてくれてほっとする。


「えっと、あと1時間弱か……」


「ログアウトして部長やセスちゃんに相談しますか?」


「うーん、明日の昼でいいかな。ベル部長たちもライブ終わったところぐらいだろうし、俺もそっちに参加するよ」


「はぃ」

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