第424話 甘さは控えめで上品な味
夜は屋敷の方で作業を。
俺は新調する家具を作り、ミオンはスウィーやパーンたちと農作業をしている。
ベッド、テーブル、椅子、本棚ってあたりだけど、工芸(木工)スキルが上がってるおかげでさくさく作れる。
「ワフ」「ニャ」「クルル〜」
マローネの採集に行っていたルピたちが戻ってきた。
シャルたちに手渡していた木箱にはいっぱいのマローネの実が山盛り。
「おー、ありがとう! ミオン、休憩にしようか?」
「は〜い」
ミオンは昼に作った光の精霊石で精霊魔法を取得。
スウィーから樹の精霊石ももらったし、あとは水の精霊石かな? 火の精霊石は農業とか園芸にはあまり使わないから後でもいいとのこと。
「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」
「はいはい。じゃあ、マローネでおやつを作るよ」
楽に作れそうなのは……栗きんとんかな?
「はぃ」「リュ〜」「クル〜」
手伝ってくれるとのことなので、まずは茹で栗を作ってもらうところまで。
マローネのトゲつきの皮を剥くのはラズたちカーバンクルが得意。器用に割って実を取り出してくれる。
その一粒一粒をパーンたちが確認。虫食いがあったりしないかだけど、どうやら全部問題なしっぽい。
ミオンにはお湯を沸かしてもらって実を茹でてもらう。実時間だと1時間弱ぐらいだから、ゲーム内だと15分でいいはず。
「どうでしょう?」
「おっけーかな。じゃ、半分に切って、中身を集めよう。あ、手が滑りやすいから気をつけてね」
「はぃ」
リアルで教えてるからか、慎重に二つに割っていくミオン。
一通りの作業を全部やってもらった方がスキル経験値は多そうなので、俺は口を出すだけにしておこう。
中身をスプーンで取り出す作業は、またパーンたちが手伝ってくれた。
「じゃ、この棒でゆっくり潰して。力はあんまり入れなくていいよ」
あとは空砂糖を混ぜて、弱火にかけつつ練っていく。
空砂糖のせいで、微妙に緑が入った色味になってるけど……多分大丈夫のはず。
いずれ上白糖にする方法を考えないとかな。
「良さそうだね。火傷しない温度になったら、一口サイズに丸めよう」
「簡単なんですね」
「本当は茹でるのに時間がかかったり、中身を集めるのが大変だからね」
コロコロと手で丸めて、一つずつ並べていく。
100個はあったマローネが同じ数の栗きんとん、もとい、マローネきんとんになった。
「〜〜〜?」
「うん。じゃ、みんなで食べようか」
「はぃ」
ほっこりとしたマローネの風味。空砂糖の甘さは控えめで上品な味。
パプの葉茶との相性が抜群。
「庭の手入れの方はどう? 楽しめてる?」
「すごく楽しいです。スウィーちゃんのおかげで園芸のスキルが2つも上がりました」
ミオンが花壇のお手入れをするにあたって、スウィーの方であれこれ指導があったらしい。
それはいいことなんだけど、
「あれ? スウィーの言ってることわかるの?」
「ぁ、はぃ、なんとなくですけど……」
俺ほど理解できるわけではないけど、なんとなく「どこに」とか「どうして欲しい」とか、そういうのはわかるようになったらしい。
「精霊魔法を取ったからかな?」
「あと、私にも守護者の称号がついたからでしょうか?」
「あー、そっちか」
ステータスを開いて見せてくれたんだけど、フェアリー、セルキー、ウリシュク、ケット・シーの4つの守護者の称号がついている。
俺がなんとなくわかるようになったのも守護者をもらってからだったもんな。
それに加えて【翡翠の女神の使徒】をもらって、さらにわかるようになった感じ。というか、ミオンは翡翠の女神なんだから普通に話せてもいい気が……ダメか。
「俺がもらった翡翠の女神の使徒の称号って、あれってどういう理由でもらえたんだろう?」
「女神像にMPを補充する量とかでしょうか?」
「確かにあのサイズの女神像ってないよな」
女神像に補充したMPがトータルでいくつかを突破したらとかありそう。でも、それだと本土でも取れてるプレイヤーがいてもおかしくないか。
それか……最新のPVで死霊都市に女神が揃う時にって話があったけど、あれって俺が見つけた等身大の名も無き女神像を他でも探せってこととか?
となると、俺の島にあったみたいに、他の無人島にもある可能性……
「ショウ君?」
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」
その答えに不思議そうな顔をするミオン。
他の島、例えばラムネさんがいる島の教会にも、等身大の名も無き女神像があるかもしれないという話を。
「なるほどです。でも、本土にもそういう女神像があったりはしないんでしょうか?」
「うーん、本土の女神像は大きな教会に集められちゃってるんじゃないかな? 厄災のあとに色々あったみたいだし」
あとは死霊都市みたいに、人がいなくなった街が残ってる可能性も?
本土の北側の竜の都はまだ入れないし、南側には未開拓地が広がってるし、東側には魔王国もあるし。
「アンシアさんはそれも探してるんでしょうか?」
「なるほど……」
自分の女神像を死霊都市に飾りたいとか?
でも、そういうタイプには見えないし、今までもそういう自己顕示欲を満たす感じのゲームプレイではなかった気がする。
「まあ、他所はどうでもいいかな。それよりも南の島にも教会があったりしないかな?」
「ぁ……」
水上コテージ(?)があったから、あのあたりも人が住んでたはずなんだよな。
まあ、本当に住んでたかどうかは怪しいけど、そういう設定でもおかしくはない。であれば、当然、教会はあるんじゃないかなと。
「やっぱり一度見に行かないとか。古代遺跡、採掘施設の話もあるし」
「そうですね。その時はドラゴンさんも招待した方がいいかもです」
「うっ、アージェンタさんには話したし、アズールさんにも伝わってるよなあ」
向こうの調査に乗り気だったし、こう「なんで誘ってくれなかったの!?」ってなってそう……
「お手紙を出しておきますか?」
「そうだね。ちょっと急な事情があって行っただけで、本格的な調査の時は呼びますって感じかな」
「沖縄に行ってる間に南の島の探検もいいですね」
リアルでもゲームでも南の島か。
そういえば合宿中のライブはどうするんだろう? 部活って話なら当然やるはずだろうけど……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます