月曜日

第419話 翡翠の女神への第一歩?

「って感じで、ミオンが島に来たんですが……」


 今日の分の夏休みの宿題を終えて、まずはベル部長に昨日のことを話す。

 で、案の定、


「……」


『部長……』


 フリーズしてしまった。

 一方、ニコニコなのはヤタ先生。


「ミオンさんー、良かったですねー」


『はい!』


 ミオンがIRO、というか、ゲームすることを勧めてた感じだもんな。

 ステータスを表示してるところを見て、あれやこれや話してると、


「じゃ、昨日の昼にあった無人島発見のワールドアナウンスは、ミオンさんで良いのよね?」


「っす」


 ベル部長がフリーズから復活。

 本土でも一瞬だけ騒ぎになったらしいけど、ライブ配信してるわけもないと、あっさりと流されてしまったらしい。


「ミオンさんはショウ君の島に移るんでしょうけど、その後、この南の島はどうするつもりなのかしら?」


「当面は放置でいいかなって思ってますけど。ああ、南国フルーツというか、食材は探しに行きたいですね」


『スウィーちゃんたちが楽しみにしてましたし』


「いいですねー、バナナやマンゴー、キウイなんかもありそうですしー。これはココナッツでしょうかー?」


 とヤタ先生。

 画面の端っこ、水上コテージの脇に写ってる木は、確かにココナッツに見える。


『あ、ショウ君。銀竜さんと話したことを』


「ああ、そうだった。一応、アージェンタさんから、そっちの古代遺跡の管理者にもなるつもりがないかは聞かれましたよ。今はまだって答えましたけど」


「ということは、そのうち?」


「正直、考えてないです」


 あっちの古代遺跡の探索は、今の島の探索が終わって暇になったらってぐらい?

 ギリー・ドゥーがいる森の先、フロスコットンが取れた草原の奥で繋がってるんだろうし、その先には北端の洞窟から繋がってるであろう塔。そっちが優先かな。


『あとはギルドの話ですね』


「うん。アージェンタさんに正式に後ろ盾をお願いしました」


「そう! じゃ、さっそく死霊都市に……、出張所は死霊都市でいいのよね?」


「そのつもりで動いてもらってます。えっと……」


 アズールさんを責任者に据えて、実際の細かい業務(?)とかは竜人族か獣人族に任せるとかいう話になったのを説明。

 ただ、こっちからお金での給金は出せないので、その分は竜族に送った甘味やお酒で立て替えてもらうことになった。


「ショウ君の島で作った物が報酬になったりはしないのかしら?」


「うーん、そのへんは要望次第ですかね?」


 加えて、預けておける物の方がいいよなというのも。

 武具とか工芸品はいいとして、島の食材関連は乾物とかなら? ドライフルーツや干し肉、魚の干物、燻製でもいいんだけど。


「ショウ君が作った工芸品だと転売ヤーが出そうね……」


「え? そこまで?」


『私もそうなると思います』


 うーん、そこまでかなあ……


 ………

 ……

 …


「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」


 スウィーの指定席がミオンの左肩に移った感じ?

 その周りにフェアリーズがキャッキャしてて、ミオンが本当に翡翠の女神に見える。


「クルル〜♪」


 ラズは俺のフードの中が好きなのか、そっちに入ったままだけど。


「ワフ」「「バウ」」


 教会の裏手のあかりが見えて、ルピたちが走り出す。

 パーン以外のウリシュクたち、シャル以外のケット・シーたちが、ミオン見てどういう反応するかちょっと楽しみ。


「ミオン。妖精たちが大騒ぎしそうだけど大丈夫?」


「はぃ」


「〜〜〜♪」


 スウィーが任せなさいと言ってくれている。

 そういうことなら大丈夫かなと思いつつ教会裏へと出ると、


「ニャ〜」「リュ〜」


「うわわ……」


 シャルとパーン、そしてウリシュクたち、ケット・シーたち、さらにはカーバンクルたちも集まってミオンを取り囲んで大騒ぎに。なんだけど、


「〜〜〜!」「「「〜〜〜♪」」」


 スウィーとフェアリーズがちゃんと整理してくれてるっぽい?

 まあ、目の前に自分たちの生みの親の女神様が現れたらそうなるよな。


「「「リュリュ?」」」


「うん。えーっと、翡翠の女神様だけど、人の姿で遊びに来てくれてる感じ?」


「「「リュ〜!」」」


 女神様だからって無茶なことをお願いされたり……はしなさそうだけど、そういう感じで説明。

 なるほどと納得してくれたので、トゥルーやセルキーたちにも同じ説明でいいかな。


「とりあえず、みんな落ち着くまで座ろうか」


「は、はぃ」


 いつもの草むらまで来て腰を下ろす。

 もうみんな落ち着いた感じだけど、ミオンと握手したり頭を撫でてもらったりしたくて順番に並んでる感じ。


「ニャ〜……」


「いいよいいよ、ミオンも楽しそうだし」


 俺の方に来たシャルが、若い奴らがすいませんって感じで頭を下げる。

 シャル自身は昨日に随分驚いたから、一晩経って冷静になってるっぽい。


「リュリュ」


「ん? ああ、昨日行った島の話?」


 隣に座ったパーンが昨日の南の島でいろいろ見つけていたらしい。

 向こうは気候が亜熱帯っぽいし、ココナッツがあったりとうちの島とは違う植生だったので、またそのうち見に行こうかということで。


「リュ!」


「うん。今度はみんなも一緒に行こうか」


「ニャ!」


「もちろん、シャルたちもね」


 留守はミオンに任せておけるのも嬉しいところ。って、俺の状況を伝える必要があるんだよな。

 やっぱり早めにギルドを設立して、ギルドカードで通話できるようにしておいた方がいいかな?


「ショウ君。そろそろ神聖魔法を」


「りょ。じゃ、教会に行こうか」


 パーンたちに顔見せはできたし、教会へ行って神聖魔法のスキルを取る予定。

 自分の姿の女神像の前でっていうのも不思議だけど、そういう仕組みだからなあ。


 ミオンとみんなを引き連れて教会へと入る。

 長椅子には埃もなく、シャルたちが綺麗にしてくれているのがわかる。

 祭壇の前まできたところで、


「どう? 取れる?」


「ぁ、はぃ、大丈夫です。取りますね」


 それとこの本かな。古代彩神教典。

 神聖魔法スキルに+1補正があったし、これを読めば5ぐらいまでは上がりそうだし。


「浄化の魔法試してみる?」


「はぃ」


 手持ちの極小の魔石を渡すと、さっそく浄化の魔法を試してみるミオン。

 特にアドバイスする必要もなく、さくっと成功させて、


「ぁ、スキルレベルが上がりました!」


「おー、おめでとう!」


「ぁ、ありがとうございます」


 周りにいるパーンやシャルたちも、わーっと歓声をあげて祝ってくれる。

 うんうん、こういうのが楽しいよな。

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