第411話 暗闇に潜むもの
小型魔導艇が速度を落としてゆっくりと近づいていくと、スウィーの出した光の精霊のあかりが洞窟内を照らす。
入り口付近にはモンスターの気配はなし……
「加護を」
精霊の加護を発動させ、左手に円盾を装備。右手はいつでも剣鉈を抜けるように。
さらにスピードを落としてゆっくりと洞窟内部へと進んでいく。
水深は結構深そうなんだけど、透明度が高くて、底には綺麗な砂が溜まっているのが見える。
10mほど進んだところで……
「ワフ!」
ルピの声が洞窟内に響き渡った。
そして前方、上方から飛んでくるのは1m弱はありそうなコウモリ?
「キィィィ!」
「キュ!」
襲いかかってくるのをトライデントで追い払うトゥルーたち。
船を停止させて、俺も船首へと出る。
「うわっ!」
飛びかかってきたコウモリ――スラッジバット――が噛みつき攻撃を仕掛けてきたのを、円盾で払いのける。
奥の暗闇からヒットアンドアウェイを繰り返されるせいで敵の数が正確にわからないんだけど、少なくとも5匹以上はいるはず。
トゥルーやセルキーたちが襲いかかってくるのをトライデントで迎撃しようとしてるんだけど、スラッジバットに当たらなくて苦戦中。
「<石礫>!」
「クルル!」
それならと石礫の魔法を散弾っぽく撃ったんだけど、それも器用に避けられる。
ラズの細い火の矢は、最初はかすったんだけど、次からは大きく避けられるようになってしまった。
『ショウ君! 一度撤退した方が!』
ミオンの声が聞こえて……あ、それか!
「<遮音結界>」
船を囲うように遮音結界を発動した瞬間、スラッジバットが急に俺たちを見失ったようにふらふらとし始める。
『えっ?』
そして、結界の近くまで飛んできたやつに向けて、
「<石礫>!」
放たれた石の散弾がスラッジバットに命中し甲板へと落ちる。
トドメはルピたち、トゥルーたちにおまかせで。
「ラズ。結界の近くまで来たやつだけ狙って」
「クル!」
ラズの火の矢も当たり始め、スラッジバットは結局10匹以上倒したかな?
気配感知をかけて……大丈夫なのを確認してから、遮音結界は解除。
「〜〜〜?」
「ああ、コウモリって超音波、音で周りを認識してるって聞いたことがあって、それなら遮音結界で音を遮ればいいんじゃないかって」
『さすがです!』
【アサナサン】「なるほど〜」
【オトトン】「エコーロケーションってやつやな!」
【サクレ】「よくとっさに思いつくねえ」
【デンガナー】「さすショウやん!」
etcetc...
難しい話はよくわからないけど、超音波も遮音できて良かったってことで。
ちなみに質問したスウィーは、隣でよくわからないって顔をしてる。っと、それは置いといて。
「みんな、怪我はしてない?」
「キュキュ〜」
トゥルーがセルキーの一人を、ちゃんと報告しなさい的なニュアンスで引っ張ってくる。
二の腕にちょっと切り傷があって……アザラシっぽい服に血が滲んでいて、慌てて神聖魔法の治癒、そして、一応、解毒も。
「これで大丈夫かな?」
「キュ」
【神聖魔法スキルのレベルが上がりました!】
おっ、これで神聖魔法も5だっけ。
教会に置きっぱの神聖魔法の本も読まないと。
【イザヨイ】「おめ!」
【マユタン】「神聖魔法のスキルレベルいくつですか?」
【チョコル】「え? 神聖魔法使えたの?」
【ナシゴレン】「あのー、解毒使えるなら加護も掛けられたのでは?」
etcetc...
……あ。
「加護かけるの忘れてました。ごめんなさい」
『ショウ君。どんまいです』
改めて、トゥルーとセルキーたち、ルピ、レダ、ロイに神聖魔法の加護をかける。
うん、結構、MP持っていくな。
「ワフ」
「さんきゅ」
察したルピがマナエイドをくれてMP回復。
それを見てコメント欄がすごいことになってるけど、そういやライブでマナエイド使ったことってなかったっけ。
【クサコロ】「つ、つええ……」
【サテナー】「これは精神的癒し♪」
【ルコール】「ルピちゃんかわよ〜♪」
【マッチルー】「どれくらい回復するの?」
etcetc...
「キュ?」
「あ、うん。一応、確認するよ」
甲板へと落ちたスラッジバットを改めて鑑定する。
なんていうか気持ち悪い……
【スラッジバット】
『海辺の洞穴などに住むコウモリのモンスター。機敏な動きで回避能力が高い』
「うーん、解体は別にいいか。全部海へ捨てちゃって」
「キュ」「「「キュキュ」」」
トゥルーの号令で、甲板に落ちていたスラッジバットは全て海へと。
翼、皮膜っていうんだっけ? 防水とかに使えそうな気もするけど、それならサローンリザードの方がいいし。
それより、この洞窟を奥まで進む方が先だよな。
「じゃあ、もう少し進むよ」
『はい。気をつけて』
ルピたち、トゥルーたちには配置に戻ってもらい、俺は操舵室へと。
スウィー、ラズはそれぞれ左右を見てくれているので、レバーを上に倒して微速前進。
気配感知はルピたちに任せつつ進むことしばし……
「行き止まり? あ……」
右手側に、明らかに人の手が入ったと思われる船着場が見える。
壁も床も天井も古代遺跡のそれに似てるし、何より、
『奥に扉が見えますね……』
「これやっぱり、崖の上の建物と繋がってるよなあ……」
【カリン】「ドキドキしてきた!」
【ケダマン】「いやでも時間が……」
【ナンツウ】「うおお、気になる!!」
【ポルポール】「ワンダバ装置の可能性?」
etcetc...
『ショウ君。残り時間が……』
あと15分もない感じらしい。
すっげえ微妙なタイミングで見つけちゃったな……
「じゃ、あの扉が開けられるかだけ確かめるよ」
『あ、はい』
開くようなら続きは次回かな? 開かないなら終わりでいいわけだし。
あ、そうだ……
「トゥルーたちは船をお願い。ちょっと扉が開くか見てくるだけだから」
「キュ!」
ゆっくりと船着場に寄せて、スロットルを停止位置へと。ルピだけをお供に陸地へと上がる。
気をつけつつ扉へと歩を進める。気配感知には何も引っかからない。
正面に立ったところでグローブを外し、扉に手を添える。
【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。権限が足りません】
危ない危ない。グローブと一緒に蒼月の指輪を外しておいて正解だった。
コメント欄を見ると、権限つき扉には死霊都市で手に入る指輪が必要みたいな話が流れてて、うん、知ってるけど。
「開かないっぽいし、これは上にある塔? そっちから行くしかないかな。まあ、今日は諦めて戻るよ」
『はい』
で、それはいいんだけど、ここで船を旋回させるのは無理そうだし、バックで戻らないとなんだよな……
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