日曜日

第362話 困った時のショウ頼み

 日曜日。

 いつものように美姫を奈緒ちゃんのところに送り出してから、ミオンの家でお昼を作るんだけど、今日のオーダーはピザ。

 昨日は島でピザパだったもんな。


「簡単だからミオンもすぐ作れるようになるよ。というか、切って並べて焼くだけなんで、椿さんもどうですか?」


「いえいえ、私には重要な任務がありますので」


 相変わらずビデオカメラを構えている……


「ん」


「あ、うん。じゃ、始めようか」


 迎えに来てもらったついでに、駅前のスーパーでいろいろと買ってきた。

 さすがに小麦粉からは大変すぎるので、市販の冷凍ピザ生地を使う。


「じゃ、まずは定番のマルゲリータかな」


 まずはトマトソースだけど、面倒なのでこれも市販のやつを。

 次は、


「チーズ?」


「うん。半分ぐらいね」


 トマトソースの赤、モッツァレラチーズの白が半々になる感じで。

 その上にバジルの葉を乗せて、イタリアって感じに。ただし、焼くのはもうちょっとあと。

 ピザ生地は小さいサイズを使って、バリエーションを増やす方向。


「次はツナマヨコーンにしようか」


「ん」


 正式にはバンビーノっていうらしいやつ。お子様用ピザらしいけど、大人が食べても普通に美味しいよな。

 生ハム、ルッコラ、モッツァレラチーズでパルマ。チーズ、ベーコン、玉子でビスマルク。キノコたっぷりならボスカイオーラ。


「詳しい?」


「なんかばーちゃんが一時期ピザ作りにハマってたんだって」


 じいちゃんに本物の石窯作らせたりしてたもんな。

 まあ、めっちゃ美味しかったけど……


「デザート?」


「ああ、そうだった。デザートはこれで」


 リンゴ、クリームチーズのピザ。焼き上がったら、蜂蜜とシナモンパウダーをかければ完成。あー、アイスを落としても良かったな。


「どれも多めに作って冷凍しておくから、自分で焼いて食べてみて」


「ん」


 ………

 ……

 …


「このリンゴのピザ、すごく美味しいわ!」


 雫さんにも大好評で良かった良かった。

 せっかくだしと、焼いてる間に椿さんにバニラアイスを買いに行ってもらった。コンビニまで。

 その椿さんも、リンゴピザに夢中……

 さすがにこれくらいなら自力で作れる気がするんだけどなあ。


「そういえば、ミオンの仕事の方の連絡って何か来てます?」


「むっ、は、はい。少々お待ちを……」


 あ、ごめんなさい。そんな急がなくても平気です。

 ミオンはというと、リンゴピザを少しずつじっくり味わってくれている感じ。


「こちらをご覧ください」


 食卓の端にエアディスプレイの端末を置き、映し出されたのは……これ次のアプデPVのラフ?


「こちらが送られてきた絵コンテです。お嬢様には3ページ目の頭の場面から翡翠の女神として朗読をしていただき、最後の場面では歌っていただくことになります」


 なるほど。聞いてた話通りだし、


「大丈夫そう?」


「ぅん」


 しっかり頷くミオン。


「では、こちらで問題ないことを返信しておきます。収録はテスト明けの日曜。先方が用意するバーチャルスタジオ内で問題ないでしょうか?」


「ん?」


「俺はオッケー」


 ということで日時は決定。

 バーチャルスタジオなら移動する必要もないけど、日曜ならミオン家からログインかな?

 まあ、一緒にいた方がミオンも緊張もしないだろうし。


「テスト期間はもうすぐよね?」


「えっと、次の木曜からで、テスト自体は翌週の水木金です」


 なんで、テスト前のライブは次の水曜がラスト。

 ライブは土、水、土と3回休みになる感じだけど、その次の月曜が祝日で、火曜はもう終業式っていう……あっという間なんだよな。


「そういえば……ショウ君は将来のことは考えてるかしら? 理系? 文系?」


「え……、すいません。まだ、はっきりは……」


「そう。そうよね、ごめんなさい」


 雫さんがニッコリとそう言ってくれるけど、そろそろ考えないとまずいのかな。

 うちは放任主義というか、放置主義って感じだからなあ。


***


 チャンネルの収支の話を椿さんから受けた後、ミオンの部屋でIROにログイン。


「さて、夜のために準備しないと」


『トゥルー君のところに行くんですね』


「うん。夜はあの天井を出た先が気になるから行ってみたいんだよね」


 ルピたちにご飯をあげて、自分も軽く腹ごしらえ。

 スウィーたちフェアリーズにはドライグレイプル、ラズはレグコーンがお気に入り。


「砂糖が少なくなってきたし、山道ルートで港に行くつもりだけど、スウィーたちはどうする?」


 その問いかけにスウィーとフェアリーズが相談中。

 ラズは一緒に行きたい感じかな。マントのフードがお気に入りっぽい。


「〜〜〜?」


「うん、セルキーの里へは行くよ。カムラスの畑の奥に洞窟の出口があったでしょ? あそこから行くつもりだし」


「〜〜〜♪」


「じゃ、みんな一緒に行こうか」


 海を越えてってなると、後から神樹経由で来る方がいいけど、あの洞窟で行けるなら、フェアリーズも一緒にってことだよな。


『お砂糖の根っこがある場所にも、他に木の実があるかもですね』


「そうだね。スウィーたちは硬い木の実はあんまり知らないみたいだし」


 栗だって、まずイガをどうにかして、さらに硬い皮があって、さらに渋皮もあるもんなあ。普通は食べようと思わないよ……


『ショウ君、行く前にドラゴンさんにお手紙を書いておかなくて大丈夫ですか?』


「あー、確かに。交流会はうまく行ったみたいだし、ケット・シーたちも保護してもらってるし」


 ケット・シーに関しては俺が頼んだことじゃないけど、セスに提案したのは俺だしなあ。


「ちょっと待っててな。手紙出したらすぐ行くから」


「ワフ!」


 山小屋へと戻ると、


「『あ』」


 着信ありの水晶が光ってるし。

 ログインした時は光ってなかったし、ついさっきご飯作って食べてる間にってことだよな。


『昨日のお礼でしょうか?』


「あ、そうか。白竜姫様が来たんだった」


 終わった後のケット・シーの騒動の方がインパクトあったからなあ。


「手紙だけだな。ちょっとホッとしたような、残念なような……」


『また別の楽器をもらえたりすると良かったんですけど』


 笛でも十分大変だから勘弁して欲しい。

 あ、でも、ミオンを島に呼べたら演奏して貰えばいいのか。屋敷にあったピアノもちゃんと修理しようかな……


『ショウ様


 昨日はお姫様が突然お邪魔し、しかも、たくさん甘味をご馳走いただいたとのこと、ありがとうございます。


 いつもお世話になってばかりで申し訳ないのですが、もう一つお願いと言いますか、お力を借りたいことがございます。

 既にご存知かと思いますが、死霊都市にケット・シーの一族が迷い込んで来ました。

 彼らの一部がマナ不調を訴えており、療養のために島へと連れて行っても良いでしょうか?


 お手数をおかけしますが、急ぎ返信いただければと思います』


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