第350話 連携プレイ

「っと、その前にこれ」


 インベントリから出した木皿にはカムラスのコンポート。

 スウィーとラズがあっという間に1つずつ掻っ攫っていった。パーンと俺で1つずつ取り、ルピ、レダ、ロイにも1つずつ。

 そして、


「じゃ、ちょっと反応悪くなると思うけど」


『はい!』


【リーパ】「こっちは気にせんでええで!」

【ブルーシャ】「ルピちゃん、ファイト!」

【シェケナ】「スウィー様気をつけて〜」

【マーサル】「パーン君、がんば!」

 etcetc...


 ちらっとコメント欄を見た感じも問題なさそうなので、


「行くよ」


「ワフ」 


 キリッとした顔つきで頷くルピがかっこかわいい。

 まずは廃屋の正面から右手側、前回雑草を抜いて綺麗にしたところを進む。


「バウ」


 前方、少し先を歩いてくれてるレダが問題なしを伝えてくれる。

 振り向くと、後方を警戒してくれてるロイも問題なしの返事。


「さて、前に見つけた勝手口だけど……」


 扉の前に積んであった石壁ブロックが崩れてて、扉が半開きに……


「『あ……』」


【ゴッソル】「さすがフラグ一級建築士!」

【ストライ】「何かが出たか入ったか……」

【ニレノ】「もう怖いから帰ろ?」

 etcetc...


「加護を」


 精霊の加護を掛けて心を落ち着ける。

 少なくともこの家の天井より大きいモンスターは出ないはずだし。

 レダとロイにはそのまま警戒を続けてもらい、


「感知共有を使うよ。ルピ、お願い」


「ワフ」


 ミオンに説明を丸投げし、感知共有のアーツを発動してルピに先行してもらう。

 扉の中が見える場所まで到達したけど、特に違和感はなし。


「パーンたちはここで待ってて」


「リュ」


 スウィーとラズをパーンに預け、ルピのいる場所まで移動。二人して中をちらっと確認……大丈夫そう。

 半開きの扉に手をかけて完全に開くと、ルピが足音を立てずに中へと入る。


「ん、大丈夫」


 パーンたちに手招きし、レダとロイも呼び寄せて中へと入ると、スウィーがすかさず光の精霊のあかりを出してくれる。


「さんきゅ」


「〜〜〜♪」


 改めて明るくなった室内には、足が折れて倒れたテーブルとボロボロの戸棚。

 左手奥が通路につながっている部屋で、窓が右手にあるものの、ガッチリと閉じられている。

 で、左手前には、


「台所?」


 入り口近くにシンク。その隣は作業台?


『キッチンみたいですね』


 入った扉はきっちり閉めて、外からの侵入が無いようにしておきたいところだけど、


「ワフ」


「バウ」


 どうしようと思っていると、レダとロイが左手奥へと進み、お座りしたまま先を見据えて監視モードに。

 そして、


「リュ」


 パーンが腰にぶら下げていたカナヅチをかんぬきがわりに渡してくれた。

 

「なるほど。ありがと、パーン」


 肌身離さず持っててくれるっぽくて嬉しい。

 今度、魔銀ミスリルで作ってあげようかな。


『ショウ君。奥はコンロですか?』


「ん? あっ!」


【アシリーフ】「魔導コンロ?」

【マッチルー】「同じのが死霊都市の居住区にあるよー」

【ロコール】「使えるやつ?」

 etcetc...


 IHコンロみたいな物があるのをさっそく鑑定。


【古代魔導焜炉】

『加熱調理用コンロ。付属の魔晶石のマナを使うことで利用可能。

 料理:加熱に利用可能』


「おお、すごい」


 コメント欄の話だと、魔晶石で動かせるやつは珍しいらしい。

 死霊都市にある魔導コンロはほとんどが魔晶石無しのやつで、MPを流し続けないといけないのが面倒なんだとか。


『ここが島だからでしょうか?』


「なのかな。ちょっと大きなカセットコンロみたいなもの?」


 で、その付属の魔晶石ってどこだろう?

 あ、この下の戸棚を開ければってあたりかな……


「「バウ!」」


 レダとロイが揃って吠え、慌てて体勢を整える。


「パーンたちは後ろへ」


「リュ」


 何が出てくるかわからないので、パーン、スウィー、ラズには下がってもらう。

 四肢を踏ん張って前方を凝視する2人の間に入ると、その先に大き目の気配……

 魔銀ミスリルの円盾を構えつつ魔法の準備を。


「ヂイイィィィ!」


「うおっ!」


 いきなり通路の奥に現れ、そのまま突っ込んで飛びかかってきたのはドラブウルフほどもある……ネズミ!?

 円盾で頭突き(?)を弾き返したんだけど、器用に姿勢を立て直して着地する。


「ガウッ!」


「ヂイィ!」


 ルピの攻撃をバックステップで避け、不快な奇声を上げる。


【ボリゼラット】

『食欲旺盛で自分よりも大きい相手にも襲い掛かるネズミのモンスター。攻撃によって悪疫状態になる可能性がある』


「うげぇ……、レダ、ロイ、無理はするなよ」


 俺とルピにはスカーフとバンダナの効果で悪疫耐性がついてるけど、他のみんなはそうはいかない。

 できるだけノーダメージで倒したいところ……


「<氷槍>!」


 威嚇するボリゼラットに氷槍を撃つが、今度はサイドステップで躱されてしまう。が、


「クルッ!」


 ラズが精霊魔法(?)で出した針のような火の矢は、頬に当たってダメージを与えた模様。


「ヂヂイイイィィ!」


 その痛みに叫声をあげると……


「マジかよ」


 廊下の奥に現れたのは、たくさんの光る目。

 サイズは一回り小さいみたいだけど数が……十数匹はいるよな。


『ショウ君! 逃げた方が!』


 ミオンの言うとおり、ここはいったん引いた方がマシな気がする。石壁で通路を塞いで、そのうちに外へ……


「〜〜〜!」


「ん? 了解。<土壁>!」


 スウィーに何か策があるっぽいので、言われた通り通路を覆う土壁・・を。ただ、向こう側から土壁を掘る音が聞こえてくるし、長くは持たないか?


「〜〜〜!」「リュ!」


「『え?』」


 スウィーとパーンがいきなり魔法(?)をうち、その緑色の光の玉が土壁に当たったかと思うと、そこから四方八方へと蔓が伸びる。

 なるほど、土壁を作ることで樹の精霊魔法の茨を出す感じか!


「樹の精霊!」


 俺も加勢することで、一気に蔓が伸びて土壁を覆い尽くす。あとは……


「ヂィ!」


 穴を開けて飛び出してきたのは小さなボリゼラット。

 だが、次々と茨の蔓に拘束されていき、


「<石礫>!」「クルッ!」


 俺の石礫、ラズの火の針を喰らう。落ちたやつは、


「ガウッ!」「「バウッ!」」


 ルピ、レダ、ロイが仕留めていくというパターンに。

 これであと気になるのは、最初に遭遇したでかいやつか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る