月曜日

第343話 手を取り合って

「みんな乗れた?」


「ワフ」「「バウ」」


「〜〜〜♪」「クルル〜♪」


 セルキーの里へと向かう筏に、俺とルピ、レダとロイの四人乗り。スウィーとラズは風に飛ばされないようにフードに。


「じゃ、お願い」


「キュ〜♪」「「「キュ〜♪」」」


 筏を担いだセルキーたちがゆっくりと沖へと進み、陸がだんだんと遠くなる。

 俺とルピ、あとスウィーも経験済みだけど、


「レダ、ロイ、ラズも平気?」


「「バウ」」「クルル〜」


 大丈夫っぽい。

 レダもロイも川で泳いでただろうし、ラズはまあフードの中にいれば安全だろうし。


『崩れてる場所を直すのは夜ですか?』


「本格的に直すのはそうかな」


 昨日の夜、アズールさんが帰ったあとは、トゥルーたちを連れてカムラスの実の収穫を。

 そのさらに奥に、例の洞窟の崩落した先の出口らしきところが見えた。なので、あそこを通れるように直せば、トゥルーたちセルキーもカムラスの実を収穫できるようになるし、何より行き来しやすくなるのがいい。


『先に準備ですか?』


「うん。向こうに着いたら先に木材の調達をして、それを加工してる間に、スウィーにみんなを呼んでもらって顔合わせがいいかなって」


 トゥルーたちセルキーは、パーンたちウリシュクとは初対面になるんだよな。喧嘩とかしないといいんだけど……


 ………

 ……

 …


 セルキーの里に到着して、まずは伐採していい木をスウィーに選んでもらわないと。

 オリーブ畑っぽくなってる場所の奥に神樹があって、そこから先には森が広がっている。


「この奥ってトゥルーたちは行ったことある?」


「キュ〜♪ キュキュ〜」


『どうなんでしょう?』


「木の実なんかを採りに行ってたりするっぽいよ」


 ここも山小屋がある盆地と同じで、隔離されてる場所って感じなのかな。


「ワフ」


「「バウ」」


 ルピがレダとロイに警戒するように指示を出したみたいだけど、念のためっていう落ち着いた声色。

 と、向こうからつる篭を抱えたセルキー3人が現れて手を振ってくれる。


「キュ〜?」


「キュキュ〜」


 そこから一つ赤い果実を取り出して俺に渡してくれるんだけど……


【ルモレラの実】

『ルモレラの木の実。ほどよい甘酸っぱさがあり食用可。

 料理:果汁と果肉は加工して調味料などに使用可能。調薬:裂傷状態を解除する止血薬の原料になる』


「これって山桃かな?」


『桃ですか?』


「あ、山桃って桃とは違うんだよ。えっと……」


 山桃はヤマモモ科で、桃はバラ科だったはず。多分。

 ざっくりと説明したんだけど、ミオンは山桃自体を見たことがないらしくて、まあそうだよなあと。


『美味しいんですか?』


「うん、甘酸っぱくて美味しい……はずだけど」


「〜〜〜♪」「クルル〜♪」


 うん。スウィーとラズは好きそうだよなあ。

 このサイズなら二人で食べちゃいそうだけど、俺もちょっと食べてみたいし、ナイフで果肉部分を半分に切り分ける。


「はい」


 野生の山桃には虫がついてたりするけど……鑑定に反応しなかったし、大丈夫だと思う。

 渡したそれをスウィーがまた半分にしてラズに。そういうところはちゃんとしてるんだよな。


「キュ〜」


「ワフ〜」


 トゥルーがルピと半分こし、セルキーたちがレダとロイに半分ずつ渡してくれたのを確認し、手にあるそれをパクッと……


「んー、美味しい!」


 山桃は甘酸っぱさにちょっとした苦味があるのが好きなんだよな。

 スイカに塩をかけると甘さが増すみたいな感じ。


「ジャムにしてトーストに乗せてみたいなあ」


『うう、美味しそうです……』


「あはは」


 そういえば、そろそろ砂糖の在庫が減ってきたし、落ち着いたらブルーガリス(てんさい)も採集に行かないとだよな。


 ………

 ……

 …



「じゃ、俺はこのあたりで作業してるから、スウィーよろしくね」


「〜〜〜♪」


 任せろと胸をとんと叩いてから、神樹の方へと飛んでいくスウィー。

 ルピ、レダ、ロイ、ラズは神樹の周りでお昼寝中なので、ちょっと離れたところで伐採してきた木の加工を開始。

 乾燥の魔法のおかげで伐採した木をすぐ加工できるのが嬉しい。

 まあ、ゲームだからそんな気にしなくてもいいのかもだけど……


「見てるのはいいけど、気をつけてね」


「キュ〜」


 トゥルーは少し離れたところに座って、俺の作業に興味津々という感じ。

 で、さっきルモレラの実を採ってきたセルキーたちが、その隣で実の選別をしてるのかな?


『あの、ショウ君。木材をどう使うつもりなのか教えてもらっていいですか?』


「あ、うん。支保っていう壁とか天井が崩れないような枠を作ろうと思って」


『えっと……』


 ピンと来てない感じだけど、見てもらった方がわかりやすいかな?

 柱を立てて、梁を渡した支保を組んでから、土砂を回収していく予定。

 細いと意味がないので、そこそこの太さの角材にしていくんだけど、どうせ汚れるものなので、表面を綺麗にしたりはしない。


「「「〜〜〜♪」」」


 しばらく作業してると、神樹からフェアリーズが。

 スウィーはいったん出て、今度はウリシュクたちのところに行ったっぽい。

 フェアリーズのリーダーのワーネが、トゥルーにペコリと頭を下げて……女王様がいつもすいませんって雰囲気。

 そんな感じのやりとりを見ていると、


「「「リュ〜♪」」」


「「「クルル〜♪」」


 パーンとお供のウリシュクが二人、それとカーバンクルたちが現れた。


「スウィー、お疲れ」


 定位置の左肩に座り、ふぅと汗を拭う仕草のスウィーにグリーンベリーを渡す。

 それはいいとして、


「「……」」


 トゥルーとパーンが向かい合って……大丈夫なのかなと思ったら、


「キュ!」


「リュ!」


 がっちりと握手。

 揉めなくて良かった……


「トゥルーもパーンもいつもありがとうな。これからよろしく」


「キュ〜♪」「リュ〜♪」


 二人の頭を撫でて、ちゃんと感謝を伝えておく。

 ここしばらくは死霊都市であれこれ大変だったし、教会の先の新しいエリアに進んで、また頼むことも増えてきそうだし。


『うふふ。ショウ君、王様みたいですよ』


「うっ、そんな偉そうだった?」


『あ、そういう意味じゃないですよ。でも、スウィーちゃんたちやトゥルー君たち、パーン君たちの守護者ですし』


「あー、うん。そう言われると確かに」


 ここにミオンが来たら、さらにすごいことになりそうだけどね。

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