月曜日

第280話 進捗順調なれども……

 梅雨入りして、外はじとじと、中はむしむしの日が続いてる感じ。

 今日の昼も教室で。屋上での昼飯は秋までお預けかな。


「週末でワークエの達成率が50%超えたぞ」


「マジか。で、減ったりはしてないんだよな?」


「おう。女神さまさまだな」


 ナットたちがいる帝国側前線拠点では、俺とミオンのファンの人たちが、買い戻した女神像を使って聖域を展開、それを維持することで区画を浄化してくれたそうだ。

 で、さらに先に進めるようになって、解放した場所をしっかり調べることで『名も無き女神像』を手に入れて……って繰り返し。

 ちなみに『名も無き女神像』は人によってどの女神になるかはバラバラで、翡翠の女神になってもミオンそっくりにはなってないらしい。

 それを聞いて、ちょっとホッとする俺……


「割合ってどんな感じなんだ?」


「ショウタイムのファンの人たちは翡翠のばっかだったな。けど、後から来た人らは普通に月白が多いぜ。あとはまれに紅緋? 蒼空? ってとこか」


「なるほど。やっぱりイメージの問題なのか……」


 手順2にある、女神像のイメージに一番近い女神になるっぽい?

 まあ、どの女神になっても、効果としての違いは今のところ見られないらしいんで、好きなのを選んでねって感じか。


「お待たせ」


「おう」


 昼前の授業が体育だったので、ミオンといいんちょが遅れてやってきた。

 ちなみに二人の昼飯に関しては、俺とナットにおまかせという、ちょっとした試練でもある……


「好きなのどうぞ」


 適当に見繕ったサンドイッチから、ミオンが手を伸ばしたのはたまごサンド。いいんちょはハムレタスサンドと無難な感じ。

 そして、カツサンドを手に取るナットなんだけど、もう自分が食べたいものしか選んでないの丸わかりなのはどうなんだ?


「ゲームの話?」


「おう。ワークエがいい感じに進んでるって話な」


 そんな話を聞きつつ、俺もBLTサンドを手に取る。

 二人はあーだこーだ言いながらも、仲良くやってそうで何より。

 なんだけど、


「そういえば、帝国側の前線拠点と魔王国側の前線拠点ってつながってるんだよな? 魔王国のNPCも来てるのか?」


「ちらほらと、こっちの様子見に来てるってぐらいだな。結局、帝国に入国はできないから、来る意味はないっぽいぞ」


 ああ、そりゃそうか。

 正規の手続きじゃないと、魔王国からこっちへは来れないんだっけ。


人馬ケンタウロス族の人を見たけど……最初はびっくりしちゃうわね」


「共和国とか公国のプレイヤーは見慣れてるっぽいが、帝国や王国のプレイヤーは思わず見ちまうよな」


 他にもゴツい体に牛の角が生えてる人牛ミノタウロス族とか、浅黒い肌のダークエルフ、巻き角の生えてる魔族とかも見たそうで。


「夏休み前にアプデがあって、魔王国スタートと新種族って話も出てるぜ?」


「マジか。って、島じゃどうやっても見れそうにないんだよな。うらやましい……」


 そうこぼすと、ナットといいんちょが俺を真っ直ぐに見据えて、


「島でフェアリー、セルキー、ウリシュクを独り占めしてる奴が言うなよ……」


「ルピちゃんもそうだし、うらやましいのはこっちよ?」


 あ、うん……


***


 部活の時間。

 帝国側が順調なことは、ベル部長も知ってるだろうけど一応報告はしておく。


『部長は魔王国側ですよね? そちらはどうなんですか?』


「帝国側ほどではないけれど、順調と言っていいんじゃないかしら。門を入ったあたりの区画は土曜のうちに浄化も終わって、今は南側に向かっているところよ」


「あ、都市内でも帝国側と繋げるつもりとかです?」


「ええ、いつでも合流できる状態にした方がいいって、セスちゃんがね」


 まずは死霊都市の南側を制圧しきって、統一拠点を作るのが目的らしい。

 それが安定したら、今度は中央を迂回して北側へと進み、浄化された区画でぐるっと囲む方針とのこと。


『囲む理由はなんでしょうか?』


「都市の外へアンデッドが溢れたら困るとかじゃないかな」


「ええ、そうね。それに竜族の介入も始まってるんでしょ? そっちとも合流したいわね」


 あ、そっか。部長にはバラしちゃったんだよな。

 ま、攻略が進めばいずれは遭遇したんだろうし、気にしてもしょうがない。


『なるほどです。やっぱり中心部に強いアンデッドがいるとかでしょうか?』


「その可能性は高そうね。南側へ向かうのもさほど苦労はしてないもの」


 スケルトンナイトやゴーストが多いので、それらはレベル帯があったパーティーが対応しているそうだ。

 強い敵が出てきた時だけ、ベル部長、レオナ様、セスの3人が援護に入ってるそうで、それもそんなに多くないらしい。


「強い敵ってどれくらいっすか?」


「ナイトを多数従えたジェネラルがいたわ。後衛にトップワイトっていうのもいて、少し手こずったかしら」


『すごいです』


 ワイトってどんなアンデットだっけ……

 まあ、ベル部長とレオナ様が手こずるってことは、それなりに強いんだろうけど、マルーンレイスと比べてどっちがってのは気になるかな。


「あれ? そういえば、マリー真白姉はどうしてるんです?」


「え? セスちゃんから聞いてないの?」


「あー、はい。シーズンさんがいてくれるから問題ないってぐらいしか……」


 日曜の昼はゲーミングチェアのセットアップして、お昼食べて、デザート作りを楽しんだあとは、俺が作った女神像の作品名候補を選んだりしてたし。


『別行動してるんでしょうか?』


「ええ、二人は主に魔王国のNPCと行動してるわ。魔王国の貴族からクエストを受けてるって言ってたけど、詳細は教えられないって」


 と肩をすくめるベル部長。


『セスちゃんにも内緒にしてるんですか?』


「そうね。依頼主との契約だから話せないそうよ」


 セスにも言えないってよっぽどだよな。

 こういうのって、オフラインで伝えればって話だけど、マリー姉はそう言うところは律儀だから絶対に言わないだろうし、セスも聞き出したりはしないだろうし。


「妙な依頼とかじゃないといいけど……」


「北東側へと出て行ったのは見たわね。何か探し物でもある感じかしら?」


 ありがちだけど失せ物探しとかのクエストなのかな。

 まあ、無茶苦茶なことはしてないっぽいし、シーズンさんに感謝しとこう……

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