第279話 マーキング完了
「ばわっす」
『ショウ君』
バーチャル部室にいるのはミオンだけ。
1週間ぶりだし、魔王国側からの死霊都市攻略も今日から本番って感じだから、気合入ってるんだろうな。
「アイスどうだった?」
『あ、はい。母も美味しいって!』
良かった良かった。
親父が帰ったあと、美姫と椿さんも交えて豆乳アイス作りを楽しんだんだけど、4人で作ればそりゃたくさんできるよなと。
おやつに食べきれなかった分は、できるだけミオンに持ち帰ってもらった。
でかいタッパーにいっぱいで渡したから、しばらくはデザートに困らないと思う。
『それよりも、私、大丈夫でしたか?』
「え? 何が?」
『お義父様にちゃんとご挨拶できたか不安で……』
「あ、ちゃんとしてたから大丈夫」
というか、あんまりちゃんとしてなくても平気だと思うんだよな。親父の基準が母さんや真白姉だから……
「あ、そうだ。衣装また新しいの買うって話だったし、先にスタジオ行こうか」
『は、はい』
女神っぽい衣装とかあるのかな?
あったとして、あんまりにもコスプレっぽいのだとなあ……
………
……
…
ゲーム内は久々に雨。
食材のストックはたくさんあるので、ご飯の心配はしなくていいんだけど、今日は教会裏に行って、ウリシュクたちと話したかったところ。
まあ、明日が月曜で農作業の日だから、その時でもいいか。
「うーん……」
ランジボアのベーコンとヤコッコの玉子でのベーコンエッグを食べ、今は洗い物をしてるんだけど。
『ショウ君、まだ考えてくれてるんですか?』
「うん。なんかスッキリしないんだよ」
スタジオでミオンに合う衣装、翡翠の女神様が着ているドレスを探したんだけど、どれもこれも、なんか違う感じがして選べずじまい。
ミオンにルピが待ってるかもしれないと言われるまで、小一時間は悩んでしまった。
『あまり気にしないでください。椿さんにも調べてもらいますから』
「あ、うん、さんきゅ」
フルダイブのアバター衣装なんて、それこそ星の数ほどあるわけで、その中からこれっていう一着を探すとなると……
『雨ですけど、今日はどうしますか?』
「空間魔法と応用魔法学<水>の本を読もうかなって」
『あ、そうですね』
魔導書を読むだけでも、スキルレベル5までは上げられるので、とりあえずそこまでは上げたいところ。
どっちも便利そうな魔法が習得できることに期待……
「ルピたちはお昼寝してていいよ」
「ワフ」
「「バウ」」
洗い物を終えて、山小屋へと戻る。
1階のキャビネットから2冊の魔導書を持って2階へと。
「ワフン」
席についたところでルピが、いつものおすわり台から俺の膝へと飛び移った。
「よしよし」
「ワフ〜」
ルピをもふりつつ、まずは空間魔法の魔導書から。
前回はさらっと見ただけなので、最初からきっちりと読んでいこう……
………
……
…
【空間魔法スキルのレベルが上がりました!】
【基礎魔法学スキルのレベルが上がりました!】
「ふう、これでやっと3か。やっぱりレアスキルだと上がりが遅いのかな?」
『そうですね。コモンやアンコモンの時は5まですぐでした』
だよな。
1時間ぐらい集中して、やっと1上がったところ。
応用魔法学だと3ぐらい上がってた気がするし、先に応用魔法学<水>を読むべきだったかな。
「ま、慌てる必要もないか。そろそろ10時?」
『はい、5分前です。何か新しい魔法は覚えましたか?』
「りょ。えーっと、わかりやすいのはこっちかな。<回転>」
魔導刻印筆を取り出して魔法をかけると、それが宙に浮いたままくるくると回転する。
『え?』
「なんか物質をその場で回転させる魔法なんだって。中心を固定してから回してる感じ?」
どういう風に回すか、縦回転、横回転、斜め回転などなど、その回し方はイメージ次第って感じ。
『えっと、どういう使われ方をするのか思い浮かばないです……』
「んー、そうだなあ。これがあれば、石臼を回すのは楽になるかなって。あと、ろくろとか作れば、もっとまん丸な壺とか小瓶とか作れそうだし」
『なるほどです!』
STRもVITもあるから、手で回してもそんなに疲れはしないけど、この回転の魔法で回せるならいい訓練になりそう?
さっそく試したいところなんだけど……
「そっちは使い道が思いついたからいいんだけど、もう一つの測位って魔法が難しい感じなんだ」
『測位……。どういう風に書かれてるんでしょう?』
「えっとね……」
魔導書には『指定した空間の世界座標を測位し、その値を固有識別番号として取得する。固有識別番号は空間魔法のスキルレベルの数だけ取得することが可能』と書かれている。
『あの、それだけだと何も起きないような気がしますけど……』
「ミオンもそう思う? これって指定した場所をマーキングする魔法なのかなって」
『あ、転送のためとかですか?』
「そうそう」
転移魔法陣とかも、この世界座標の固有識別番号ってのを使って転移してる気がするんだよな。
スキルレベルが上がれば、ひょっとして魔法で転送とか転移が使えるようになって、固有識別番号で登録された地点間を瞬間移動できるように……
『試してみませんか?』
「そだね。家の中は……ちょっと怖いな。外に出たところにしてみるよ」
『はい』
立ち上がる気配を察したルピがぴょんと膝から飛び降りてくれる。
外はと窓の向こうを見ると、曇り空だけど雨はあがってくれたっぽい。
「ちょっと外に出ようか」
「ワフ」
この盆地の斜面は水はけも良くて、ぬかるむこともないのが嬉しい。
少し山小屋から離れたところで、レダとロイがいつの間にかルピの後ろに控えてる。賢い。
「ちょっと魔法試すから、背中に回って」
そんな何かが暴発するような魔法でもないと思うけど一応。
さて、マナで空間を指定するってことは、サイズによって結構MP変わってきそうなんだよな。
とりあえず、1階にある転移魔法陣と同じ縦横1m四方、高さは2mとかでいいかな。
人一人は余裕、ルピたち、スウィーたちも入れるサイズで……
「<測位>」
そう唱えると、1秒ほどマナが実体化したような感じに淡く光り、その後に、
【指定空間の固有識別番号を取得し登録しました。名称は変更可能です】
というウィンドウが現れた。
『成功ですか?』
「多分?」
メニューのどこかに、この番号の一覧があるはず……あった!
「これかな。【空間座標1】ってのがそれっぽい」
『名前の変更ができるんですよね?』
「うん、とりあえず【山小屋前】でいいか」
スキルレベルが3で3つまで登録可能。
こことあとは港、教会裏は登録するとして、5まで上げてスタート地点の砂浜とゴブリン洞窟横の河原とかも登録しときたいな。
『ショウ君。読書はここまでにして、お散歩にいきませんか?』
「ワフッ!」
「うん、そうしようか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます