第219話 古代彩神教典

 視聴者さん同士がコメント欄で話してる感じでは、各国の首都にある大きな教会で女神像を見ることができるらしい。

 でも、そこで見る女神様の姿とは似ても似つかない……って、そうだよなあ。こんなのっぺりした像なわけないだろうし。


「うーん、アージェンタさんの間違いとかなのかな?」


『ショウ君、もう一つの本の方をお願いできますか』


「りょ」


 女神像は傍に置いて、彩神教典を取り出す。

 こっちは綺麗な装飾がされていて、保存状態もかなりいい代物。


【古代彩神教典】

『アイリスフィアの女神、彩神の教義が説かれている本。神聖魔法+1』


【セイクリッド】「は? 神聖魔法+1?」

【ミイ】「古代ってついてるの初めて見ました」

【バーン】「俺たちが見たやつの原典?」

【リソッス】「材質気になる〜」

 etcetc...


「あれ?」


 神聖魔法スキル取ってるプレイヤーが普通に持ってる物だと思ってたけど……


『神聖魔法を使う人が持っている本じゃないんですか?』


 ミオンの問いにコメント欄が「ないない」とか「違う違う」とか「そうじゃない」とかで埋まる。

 なんか、普通の彩神教典は教会とか神殿とかに置いてあるんだけど、要はただの教科書的な物らしい。つまり神聖魔法に+1なんてのは全然ないと。


「えー、これ貴重な本だったんだ。そこまでして神聖魔法を取るつもりじゃ無かったんだけどなあ……」


『女神像を飾りたかっただけですよね? それで、あの教会の周りがセーフゾーンになれば……』


「そうそう。ヤコッコが崖から降りてきたのもあるし、女神像をおけばセーフゾーンにならないかなって」


【リソッス】「えー、ショウ君も神聖魔法取ろうよ〜」

【マジプ】「その小さいの置いてもダメだった?」

【シェケナ】「ミオンちゃんの像でいいよね(*'▽'*)」

【ナタイ】「どの女神像を置くつもりだったの?」

 etcetc...


 うーん、神聖魔法取るか? でもなあ……


『女神像はこっちに来る直前に受け取った物でしたね』


「うん。来る前に転送箱を確認して、時間なかったからそのままインベに放り込んであった。本もまだ中も見てなくて……」


『ショウ君としては、どの女神様を置くつもりでしたか?』


「自然あふれる島だし、翡翠の女神様かなって思ってたけど……とりあえず中見てみる? アージェンタさんの話だと絵が描かれてるって話だし」


【イズポン】「見たい!」

【ギガノト】「見せて見せて!」

【ドムスツ】「教会にあるやつと違うとかだと面白い」

【デイトロン】「<閲覧費:5,000円>」

 etcetc...


『みなさん期待してるようですし、お願いします』


「りょ。じっくりは時間掛かっちゃうから、イラストのところメインにね」


『はい!』


 表紙を開くと、上質な白い紙に綺麗な文字。

 この時点でなんか普通に見かけるやつとかなり違うらしく、コメント欄が盛り上がってる。

 書かれてることは世界の始まりみたいな神話かな?


「あれ? 配信通して読めたりするのかな?」


『いえ、私はまったくですし、多分、みなさんも……』


【マシェリ】「配信通すと文字は読めなくなりますね」

【ナンツウ】「なんか特殊な処理入ってるんやろなあ」

【マットル】「ネタバレの可能性あるし多少はね?」

【スクナ】「イラストはだいたい見れるからOKですよ〜」

 etcetc...


 あれ? 前に『記録』を読んだ時は……って俺が話してただけで、ミオンが読めてたわけじゃないのか。

 まあ、イラストが見れるって話なら、今は問題なしってことで……

 パラパラとめくっていくと、最初に現れた絵は月白の女神様かな。いかにも「慈愛に満ちた」って感じの綺麗なお姉さん。

 その次が紅緋の女神様で、なんというかショートヘアでマッチョ&グラマーなあたり、真白姉によく似てる……

 で、その次が、


「これが翡翠の女神様か」


 ふわっとしておっとりしてる感じ? 確かにミオンに似てなくもない……


【リソッス】「教会で見たやつと微妙に違う〜?」

【ブルーシャ】「のんびりってイメージは島向きよ〜♪( ´▽`)」

【アマツノユ】「ミオンちゃんに似てるね〜(*´ω`*)」

【ビートト】「もっとエルフっぽかった気がするんだけど……」

 etcetc...


『みなさんが見たことがある翡翠の女神様と似てますか? 違いますか?』


 その問いかけに、あれやこれやとコメントが返ってくるんだけど、どうも国によって結構違う感じらしい。

 紅緋の女神様は帝国ではもっと騎士風なんだけど、王国や共和国では女性らしい感じなんだとか。

 翡翠の女神様は王国では動物と戯れてる感じだけど、帝国や共和国ではエルフっぽい感じだったりと。


「その国ごとに独自の変化があったとかっすかね?」


【シャルラン】「あの国の神様がこっちの国ではってあるよね」

【エレック】「作った人の趣味が反映されるんじゃない?」

【カンカンポ】「蒼空の女神様は?」

【ガルデン】「まずは試してこ」

 etcetc...


 まあ、そういうことなら、俺が思うように翡翠の女神像を彫れば、それで良いって感じもするなあ。


「じゃ、試しに彫ってみるかな?」


『翡翠の女神様ですね。あ、蒼空の女神様も見せてもらえますか? 確か、ルピちゃんの……』


「ああ、そうだった」


 ルピの種族、マナガルムは蒼空の女神様の使いなんだっけ? なんで? って感じなんだけど、そのことについても書かれてたりするのかな。

 続きをパラパラめくっていくと、蒼空の女神様のページが現れて……別にルピが隣にいたりはしないな。


【アオイサマ】「なぜか地味な蒼空様」

【ウッディ】「眼鏡っ子だったら100点だった」

【ヴェネッサ】「元素魔法を司るそうです」

【トラト】「NPCの街の人は元素魔法ほとんど使わないもんな」

 etcetc...


「ルピ、どう?」


「ワフ?」


 特に反応なし。というか「何?」って感じだよな。

 まあ、描かれてる絵が本人、いや、本柱と違うかもしれないし。


『あの、一つに決めなくてもいいんじゃないでしょうか?』


【アオイサン】「そうですそうです♪」

【マルサン】「たくさん飾ればご利益も多いはず!」

【チョコル】「大きなところは全員分飾ってあるからね〜」

【ジョント】「セーフゾーン広がるといいね〜」

 etcetc...


「あ、そうか。じゃ、順番に作っていくかな」


 ま、部活の時間に少しずつ作ることにしよう。

 運ぶ手間を考えると教会裏で作って……、いや、パーツごとに分けて作る方がいいか。


「キュ〜♪」


「〜〜〜♪」


「あ、みんな食べ終わったんだ」


 スウィーが定位置の左肩に、セルキーの王子くんが俺の右隣に座ってくれる。

 食べ終わったところから片付けを始めてくれて、なんだか申し訳ない感じに。


『ショウ君、そろそろ最後の質問を募集していいでしょうか?』


「あ、うん。もうそんな時間か」


 なんか、料理して、食べて、質問に答えてたら終わりって感じだし、次はもうちょっとアクティブに動こうかな。あの崖の上の様子を見にいくとかも良さそうだし。


『セルキーくんに名前をつけたりしないんですか? です』


「あー、そういえば。でも、勝手に名前つけていいのかな? スウィーはどう?」


 実際に名前をつけたスウィーの意見を参考にと思ったら、そのままセルキーの王子くんの所に飛んでいって……聞いてくれてるのかな?


「キュ〜!」


 キラキラとした眼差しが……期待されてるっぽいんだよな、これ。

 俺がつけるとまた『ゴマ』とかつけそうだし、こういう時は……


「俺、センスないから、ミオン、お願いします」


『えっと……。……トゥルーはどうでしょう?』


 トゥルーって『true』『真』って意味だよな。

 純真なこの子のイメージにぴったりな気がするし、ミオンって本当にこういうセンスあるよなあ。


「じゃ、『トゥルー』はどう?」


「キュ〜♪」


 嬉しそうに抱き着いてくれる王子くん、改め、トゥルー。

 そういえばとスウィーに名付けた時に、ちゃんと表示されるようになったよなと思って……


【セルキー(王子):トゥルー:親密】

『妖精セルキーの王子。

 王となるための試練を受けるには、まだまだ幼い』


【リンレイ】「王子!?」

【ミナミルゲ】「この島おかしいw」

【ロガッポ】「ロイヤルアイランド\(^o^)/」

【アクモン】「王になる試練!?」

 etcetc...


 あ、トゥルーがセルキーの王子なの、全然話してなかった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る