第208話 竜貨を得るのに必要なもの

 教会を出て、狭い方の横道を通り、ヤコッコたちが落ちてきた崖の上を紹介してから、畑へと戻ってきた。


「さて、じゃ、質問コーナーかな? 先に前回の件について話した方がいい?」


『そうですね。みなさん、どちらがいいですか?』


 ミオンがコメント欄に問いかけてる間に腰を落ち着けよう。

 グレイプル棚と畑の間にあるスペース、日当たりもよくていつも使ってる休憩場所。


「〜〜〜♪」


「ん、これ、みんなで食べてて」


 スウィーが催促するので、とろとろ干しパプを出すと、わっと群がるフェアリーたち。


『ショウ君、前回の件というか、ドラゴンさんとの出会いからお願いします』


「おっけー。えっと、まず最初に出会ったのは、解錠コードの扉の先の十字路を左に行った先なんだけど……」


 そこから転移エレベーターを降りて巨大な倉庫? そこにいた大量のアンデッドを駆逐して、スウィーの助言で非常用の魔晶石にマナを入れたら明るくなって……


【ドライチサン】「ドラゴンって転移できたのか……」

【マリオネラ】「その時の動画プリーズ」

【カルセルン】「そういえばアミエラ領に来た時も転移してたっぽいな」

【サクレ】「飛べるから転移はしない、みたいな設定ないんだね」

 etcetc...


『動画はすいません。私はちゃんと見てたんですけど、アーカイブからは消えてるんです』


「ライブオンリープロテクトが掛かってるっぽくて、その様子が残ってなくて。それでまあなんとも言えない状況でモヤモヤしてた感じっすね」


「ワフ」


 俺の苦笑いに気を遣ってくれたのか、ルピが膝に頭を乗せてくる。

 うん、撫でてるとホント落ち着く……


【ナイトニ】「運営ぇ……」

【ナーパーム】「時期的にはいつぐらいですか?」

【ナンクン】「動画が残ってないと信憑性に欠ける」

【マルサン】「ワイは信じるで!」

 etcetc...


「えーっと、時期は確か、今のワールドクエストが始まった前日ぐらいだっけ?」


『です』


「その時の会話の流れで、死霊都市のことを聞いた感じすね。あ、その時は当然ワークエの死霊都市だとは知らなかったんで」


 ちょっと悩んだんだけど、例の厄災について聞いたことはオープンに。

 ただ詳細な中身、特に巨人族が原因だったことに関しては、まだ誰も知らないはずなので、これは伏せる方向で。


「動画が無くて信憑性に欠けるってのはその通りだと思うんで。事実としてはアーカイブが残せた前回ライブの分だけだと思ってもらえば」


『ドラゴンさんには、この島の古代遺跡に危険な物がないかの調査をお願いされたんですよね』


「うん。この島は大陸からは遠いし重要度も低いしで、俺が調べた結果を報告してくれればって話。そのための魔導転送箱っていうのをもらってる」


【ガーレソ】「魔導転送箱!?」

【サブロック】「あ、それで甘味を送ってる?」

【マジブ】「サイズってどれくらい?」

【ウィズン】「めっちゃ便利そう……」

 etcetc...


 予想通りというか、魔導転送箱に色めきたつコメント欄。


「大きさはみかん箱ぐらいかな? とろとろ干しパプを30個送れるぐらい」


 送れる先は固定っぽいから便利かって言われると……向こうも同じ箱なら便利なのかな? それは聞いてないしなあ。


『火曜もたくさん送りましたね』


「うん。アージェンタさんが言ってたお姫様が好きなんだって」


 気に入ってくれるのは嬉しいんだけど、アージェンタさんを困らせるのはどうなのかなあっていう。

 まあ、お姫様だし、わがままなんだろうなとは思うけど。伊勢家の美しい姫もわがままだし……


【シューメイ】「ショウ君にリターンないの?」

【アマツノユ】「タダ働きはあかんよ〜o(`ω´ )o」

【エレック】「魔導転送箱はもらったうちに入らないね」

【ベアメン】「えー、でも、何か欲しいとか言いづらくない?(・_・;」

 etcetc...


「あー、えっと、最初に言うべきだったんだかな。とろとろ干しパプを送ったのは、ちょっとした季節の贈り物っていうか……」


『食べてもらえるかも分かりませんでしたもんね』


「そうそう」


 アージェンタさんが優しそうだったから、「こんなもん食えるか!」ってことはないだろうと思ってたけど、めちゃくちゃ気に入られるとも思ってなかったわけで。


「なんだけど、すぐに返事が来て、たくさん送ってくれって……」


【レモンミルク】「とろとろ干しパプは竜族にも大人気!」

【ガフガフ】「お姫様にクリティカルヒット!」

【ニクス】「実際、うまいもんなあ……」

【シェケナ】「何より太らない!(>_<)」

 etcetc...


「お礼としては、この島で見つけた魔導具とかは好きに使っていいっていう許可をもらってる感じかな? 危ない装置だったら引き取ってくれるって話も」


『魔導醸造器もショウ君の物になりました』


「まあ、この島であれを使うのは俺だけだし」


【タラアミ】「甘味がワークエの肝か!w」

【クランド】「お礼に米とかもらおう」

【カルセルン】「転移の仕方を教えてもらうとかどうです?」

【ヨンロー】「新作スイーツごとに何かもらおうw」

 etcetc...


 あれこれもらうべきって意見が結構出てるんだけど、俺としてはこの島で手に入りそうなものは、自前で調達してこそだと思ってる。

 それがどうしても難しいってなったら、ちょっと考えるかもっていうぐらいで。


『あとは……ショウ君は竜貨はもらってないですよね』


「うん。ワークエの死霊都市に入るのに必要なメダルなんだっけ? 前回の感じだと言えばもらえるのかなって思うけど……俺はもらってもしょうがないし」


『その竜貨を手に入れる方法についてはどう思います?』


「アージェンタさんが言ってた、あの場所で何があったかを知ること、竜族に信頼される称号を持つこと、この二つのフラグは立てないとなんじゃないかな。

 俺の場合は前者は教えてもらったし、後者は【フェアリーの守護者】っていう称号があるから、アージェンタさんも『俺なら』って言ってくれたんだと思うけど」


 後者に関しては他の方法もあると思ってる。

 プレイヤーズギルド『白銀の館』と『雷帝の座』が子爵様から褒美としてもらったのは、このワールドクエストの重要人物であるアミエラ子爵の信頼を得たからなんだろうし。


【ネズ〜】「二つのフラグを立てとけば、か……」

【シャズン】「めっちゃ分かりやすい!」

【キンコジ】「<完全に理解した!:1,000円>」

【ワショー】「<情報ありがとう!:500円>」

 etcetc...


 と、一人の投げ銭に釣られるように、雪崩のように投げ銭が……


「あああ、投げ銭嬉しいんですけどホント推測なんで! 責任持てないんで!」


『無理しないでくださいね!』


 そんなこと言ったら、さらに投げ銭が増えました……

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