第204話 巡り巡って
食後のデザートに出した焼きプリン(市販品)を美味しそうに頬張る美姫。
実際、美味しいもんな……
「そういや、昨日って子爵様に会ったのか?」
「うむ。竜貨も貰ってしまってな」
「は?」
で、やっぱり、グラドさんたちは銀竜アージェンタさんから依頼を受けてたと。
放棄した場所の拠点を整備しつつ、レオナ様親衛隊の人たちや、白銀の館の人たち、ファンの人たちと交流することで、有翼人がどういう態度だったかを調査してたんだとか。
ちなみに竜族としては、古代遺跡を全て管理するのは無理だし、新しく見つかった古代遺跡は見つけた国が管理すればいいと思っていたそうで。
「まあ、それでも魔物の大量発生の気配は察しておったようでの。援護の意味で有翼人や巨人らを送り出したそうなのだがのう……」
「何を勘違いしたのかって話か」
巨人族はきっちり仕事して帰ったらしいしなあ。
公国の南側とか聖国だったところは……なんか違うのかな。
「で、お前が竜貨をもらったってなんで?」
「正確には『白銀の館』と『雷帝の座』、それぞれのギルドに今回の件での功労者ということで、一枚ずつ竜貨を頂いたのだ」
雷帝の座ってのは初めて聞いたけど、名前からしてレオナ様のギルドかな。
子爵様とグラドさんから、それぞれ1枚ずつ竜貨を渡され、それと同時にギルドメンバー全員に【ドワーフの盟友】という称号が与えられたらしい。
「おお、ギルドメンバー全員ってすげえな」
「まあ、事を解決に導いたのはグラド殿であるし、我らがもらうのも悪い気はしたのだがのう」
「じゃ、竜貨ってNPCの他種族か貴族からもらうものなのか。それだと始めたばっかりの人は辛くね?」
「いや、竜貨は古代遺跡などでも見つかるそうだぞ?」
「え?」
女神様が砕いた巨大魔晶石。その欠片が竜貨なんじゃないかっていうセスの推理は当たってて、世界中にばら撒かれてるらしい。
ただまあ、長い年月で人目につくような場所にあったものはほとんど拾われてて、個人か国かが持ってると。
「ちなみに頂いた竜貨は銀竜貨と呼ばれるもので、アミエラ子爵のご先祖が会うた銀竜アージェンタ殿のマナが色濃く出ておるそうだ」
「へー……、ちょっと欲しくなってきたな」
「ふふん」
と得意げな美姫。
俺もアージェンタさんに言えば貰えるんだろうけど、それもちょっとなって気がする。
いや、そもそも死霊都市行けないし。
「グラド殿曰く、新たに見つかった古代遺跡には、手つかずの竜貨が眠っておる可能性も高いそうだ」
「でも、今まで見つかってないよな?」
「その辺りは謎ではあるが、浅い階層にあったものは動物やモンスターの手を渡って、結果的に国や竜族の手にあるのだろうて。ま、単にゲーム的な都合かもしれんがの」
そう言って笑う。
「それって、死霊都市に行くには人数分集めないとなのか?」
「いや、パーティーで1枚あれば良いのではないか? さすがに人数分となると、竜貨の値段がとんでもないことになろう」
「は? 売れるの?」
「IROで譲渡禁止アイテムに出会ったことはないのう。我が受け取った竜貨は、ベル殿や他の主要メンバーにも渡して各々鑑定してもらったぞ」
なるほど……
それならギルドに1枚あればって話になるか。ギルドの規模にもよるんだろうけど。
「じゃ、さっそく死霊都市へ行くのか?」
「いや、今日のライブはグラド殿を伴って、アミエラ領の古代遺跡に入る予定よの。我らが竜貨をもらったことは、今しばらくは伏せるように言われておるのでな」
「あー、まあ、欲しがるプレイヤーも多いから……古代遺跡で拾えることを確認した方がいいってか」
「うむ、さすが兄上よの」
セスがそれにニンマリと頷く。
何かしら功績を立てれば貰えるって知ったら、問い合わせが殺到みたいなことになるだろうし、古代遺跡で拾えることが先に伝わった方がいいよな。
「それに第三階層の攻略の目処もたったのでの」
「確か虫とかキノコのモンスターだっけ。やっぱり神聖魔法の祝福とか、精霊の加護で対策って感じか」
「それももちろんあるが、よりお手軽な方法が見つかったのでな。これも兄上のおかげなのだ」
「え? 俺なんかしたっけ……」
***
美姫とそんな事を話して夕飯終了。さくっと洗い物と宿題を終わらせてログイン。
今日は火曜日ってことで、南側をぐるっと一周予定の日。
まあ、ルピやスウィー、フェアリーたちと散歩しつつ採集かな。
今日のメインはパプの実をできるだけ確保すること。戻ったら、また贈答用のとろとろ干しパプを作らないと……
「で、クリーネで見つかったカムラスと、ノームが育ててくれたキノコを組み合わせた料理で抗毒Ⅱが6時間ついたんだってさ」
『ショウ君のおかげですね!』
「まあ、そうなのかなあ……」
カムラスのコンポートも偶然の産物だし、スウィーたちフェアリーのおかげっていうのが正しい気はするけど。
『でも、それだとノームさんたちのキノコに頼りきりになっちゃいそうです』
「ああ、それは大丈夫。い……ポリーさんがキノコの種菌をノームに貰って、師匠とディマリアさんとで栽培してるらしいよ」
『なるほどです』
ジンベエ師匠、陶芸だけじゃなくていろいろと詳しいんだよな。
というか『白銀の館』の人たちがいろいろ出来すぎるというべきか。ディマリアさんとかもそうだし。
『あ、効果もちゃんとあるんですよね?』
「うん。樹の精霊か土の精霊を通して、キノコにMPを渡すといいんだってさ」
『じゃあ、ショウ君もできるかもですね』
「ああ、そっか。チャガタケ栽培するかな……。キノコ栽培って農耕なのか園芸なのかどっちだと思う?」
『ショウ君、どっちのスキルも持ってるじゃないですか』
うん、それはそうなんだけど、リアルの一般論的な意味で?
「ワフ!」
「お、ルピさっそく! ありがとな!」
チャガタケが生えた朽木がごろんと転がってて、いつもはチャガタケだけ採集だけしてたんだけど、これ朽木ごと持って帰ればいけるか。
インベにはぎりぎり入りそうだし、まずはこれ持って帰って試してみよう。
『どういう場所がいいんでしょう? スウィーちゃんに聞いてみますか?』
「ああ、それは大丈夫。じいちゃんに教わったことあるから」
場所的には樹々が鬱蒼としつつも、木漏れ日が降り注ぐ場所。雨はちゃんとあたるんだけど、風通しの良い場所。
じいちゃん家の山だと、小さな谷に原木を組んで並べてあったので、ああいう感じの場所なら大丈夫なはず。
山小屋のある盆地、泉の奥の北側かな? あのあたりは薄暗かったし、北側の崖からの雨水も流れてるはず……
『それも小さい頃に教わったんですか?』
「うん。まあ、うちって基本的に親父と母さんが不在がちだったし、夏休みとかはじいちゃん家にずっととか多くてさ」
真白姉が高校に上がるまでは、夏休みはずっと田舎ぐらしだった感じ。
あの経験があるから、無人島スタートでもなんとかやれるんじゃないかっていう、謎の自信があったのかも?
『一度、ショウ君の田舎に行ってみたいです』
「ん? まあ、椿さんも来て、ミオンのお母さんが許してくれるなら?」
『はい!』
そもそも、今年はどうするんだろうな。
美姫はまあ受験の心配はいらないけど、真白姉次第ってとこかなあ……
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