第153話 隠密スキル

『ショウ君』


「お、ミオンおかえり」


『ただいまです。えっと、ワールドアナウンスされてました』


 まあ、そうだと思った。

 わざわざ『ワールド初の』って言ってたもんな!


「フォーラム、荒れてたりした?」


『いえ。実はちょっとそれどころではない感じなんです……』


「え? どういうこと?」


『実は9時過ぎぐらいから、各地でいろいろあったみたいで、皆さん、そちらの話ばかりでした。

 ショウ君のワールドアナウンスも驚かれてはいましたが、今はそれよりもという感じで……』


 それは良かった……のかな?

 いや、それよりも『いろいろあった』中身の方が気になる。


「いろいろって何があったの?」


『はい。最初にあったのは、前に王国が開拓していた古代遺跡の塔の近くを、パルテーム公国が占拠したそうです』


「あー、あそこ取られちゃったんだ……」


 まあ、いい感じに下準備まで終わってる場所だから、時間経って荒れる前に確保したいよな。

 国同士の揉め事がどれくらいプレイヤーに影響あるのかわからないけど、王国も放棄した以上は強くは出れない感じかな。


『それでですね。そこを占領したのがゲームドールズの皆さんらしくて、共和国にいた北条ハルネさんや、王国にいた新田ロールさんたちもそっちへ行ってしまったそうです』


「はあ!?」


 おいおいおい……


「それで王国やら共和国の人らも『なんで?』って話になるよな。そもそも、ゲームドールズで旧聖国の人たちってアンシア姫のところにいたんじゃなかったっけ」


『はい。その辺もよくわからない感じです。みなさん、アンシアさんの策なんじゃないかって』


「ああ……」


 なんかこう、自分は手を出さないけど、ちょっかいだけ出して様子見的な。

 何かを仕掛けようとしてるんだろうけど、これはセス美姫に考えてもらった方がいいやつだろうな。


「まあ、そういうことなら、みんなそっちに気を取られちゃうよな。……あれ? ミオン、最初はって言ったっけ?」


『はい。その後なんですが、セスちゃんたちがいる開拓地に有翼人の人が、帝国の北の開拓地に巨人さんが、他にもいろいろと……』


「え……」


 ミオンの話だと、公国の開拓地にはエルフが、アンシア姫がいる開拓地には魔王国からの接触があったらしい。

 何もなかったのは、ナットがいる王国の南西と、さっきの話にあった古代遺跡の塔の近くだけ。


「なんかいきなり動きすぎな気がするんだけど!?」


『はい。それでもう、プレイヤーのみなさんは大騒ぎで』


「この島は関係ないんだろうけど……」


 それにしても、かなり強引にプレイヤーをメインストーリーに巻き込んでくるよな。

 もっとのんびりプレイしたい人たちもいると思うんだけど。


『部長に連絡を取ってみますか?』


「んー……、いや、やめとこう。俺たちがすぐ何か手伝えるってわけでもないし、必要なら終わった後に連絡来るんじゃない?」


『そうですね。あと1時間ぐらいはあると思うので、それまでどうします?』


 一応、今日は残りの時間は土間の西側に小さな畑でも作る予定。

 植えるものは後で考えるとして、畝ぐらいは作っておきたいところだけど、その前に。


「さっきの上限突破で隠密ってスキルが取れるようになったんだけど、ミオンはどう思う?」


『隠密ですか。なんだか、人の家に忍び込んで情報を集めるとか、そういうのを想像しますけど』


「だよな。この島でいるのに必要なのかなって思ってさ。レアスキルでSP9必要だし」


 とりあえず、鍛治場でやることは終わったので、後片付けを開始。

 結局、魔銀ミスリルはインゴット1/4ぐらい使っただけだった。

 今後もアクセサリ系をメインに作るなら、十分な量がある気がする。


『でも、レアスキルを最初に獲得すると【先駆者】の褒賞がもらえて、それで10増えるかもですよ』


「え? あー……」


 そういや、調教を取ってルピをテイムした時に【調教の先駆者】ってのをもらったっけ。

 それと同じことが起これば、レアスキルを取った上で収支は+1SPになる……


「取ってみようかな?」


『あ、私がそう思っただけですから、ショウ君の好きなようにしてくださいね?』


「うん」


 荷物をまとめ、最後に部屋に忘れ物がないかを確認。

 鍛治道具は所定の場所に戻したし、マントとグローブはインベに入れた。


「じゃ、戻ろうか」


「ワフ」


 ………

 ……

 …


 山小屋までの帰り道。

 なんとなく隠密スキルについて、ちょっと興味が出てきたので悩み中。


「やっぱり、隠密スキル取ってみようかな」


『えっと、私が言ったからですか?』


「うーん、それはそうだったら嬉しいなってぐらいかな。それよりも、別の使い道がありそうな気がしてきて」


『別の使い道ですか?』


「うん。ただいまっと」


「ワフ〜」


 扉を開けると、ルピはロフトベッドの下に潜り込んで丸くなる。

 畑仕事をする前に、ちょっと休憩しつつスキルとステータスの再確認。

 昼にレベルアップした分のBPはまだ残してある。っていうか、忘れてたんだけど。


「このBPはちょっと保留しとこうかなって。いざというときにSPにできるし」


『なるほどです』


「で、隠密スキルを取るよ」


『理由を聞いても?』


「それは取ってみてからね」


 ということで、隠密スキルをポチッとな。うん、何も起きないか。

 調教スキルもルピをテイムした時に初めてだったし、まだ先駆者を取れる可能性はある。

 スキル一覧を閉じてステータスを開き、隠密スキルの説明を……


【隠密】

『自身の存在や情報を隠蔽したまま行動できる。同レベル以上の看破スキルで無効化される。

 <スキル隠蔽>(スキルをダブルタップ。キャラクター名をダブルタップで全解除)』


「やっぱり……」


『え?』


「ほら、こうやると」


 説明を閉じて、隠密スキルをダブルタップすると……やっぱり消えた。


【隠密の先駆者:10SPを獲得しました】


「よし!」


『すごいです!』


 これでBPはまたステータスの方にまわせる。

 それと、


「これでライブの時にステータス出すのに困らないかなって」


『ですね!』


 それにしても、いきなりスキル表示を消せるってことは、スキルレベル上がるとステータス表示とかも消せるようになるんだろうな。

 ライブでステータス消したりしたら、逆に突っ込まれそうだからやらないけど。


 あと看破スキルも気になる。

 多分、隠密スキルのカウンターなんだろうけど……相手のステータス見れるようになるとかそういう感じ?

 あれ? 今って鑑定とかって他の人にできるのか?

 ルピやスウィーにはできたし普通にできそう。ああ、でも、スキルまではわかんないか。いや、看破スキルがあればできるのかな?

 ま、島にいる分には関係ないよな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る