土曜日
第145話 仕込みに必要なもの
「あらま、雨か……」
土曜昼。ミオンは習い事なので完全にソロ。
鉄で剣鉈と小盾を作るのは夜にやるとして、海産物は雨が止むのを待たないとだし、木箱とかごを編むとするか。
「ワフ」
「おっと、ルピ。先にご飯だな」
「ワフン!」
雨が降っても土間で料理や陶工ができるようになって、ホント良かった。
そういや、そろそろ鉄鍋、寸胴鍋を作りたいところ。あれなら、どーんとまとめてスープを作れるし、小分けにして保存庫に入れとけば、いつでも一汁増やせる。
とはいえ、今はそれもないので、グレイディアの肉にレクソン、キトプクサと野菜炒めにしていただく。
やっぱりお米、せめて、パンが欲しい。北側に小麦とかあるといいんだけど……
………
……
…
まずは木箱作りからってことで、蔵に移動。
ギコギコ&カンカンやるよってことで、ルピは家でお昼寝。
天気が良ければスウィーたちのところに遊びに行くんだろうけど……フェアリーたちって雨降ってる時どうしてるんだろ?
そんなことを考えながら、旧壁板のうち、状態が悪くないものをチョイスして……
あっ! 1階の転移魔法陣の上にミニチェストを置くって話を忘れてた。先にそっちにしよう。
凝った意匠はいらないので実用重視。棚に引き出しがついてるような、箪笥みたいなので十分だよな。
ロープで長さを測って、グレイディアの角を削って作ったチャコで印をつける。
本物のチャコみたいに白い線がつくわけじゃないけど、用途としては足りてるのでよしということで。
縦横高さ1m。立方体みたいな箱を作って……引き出しは二つでいいか。入れるものがいまいち思いつかないんだよな。
今、収納が必要そうな物っていうと……調理道具とか? それはそれで土間に食器棚を作るべきな気がしてきた。
このミニチェストを作ったら、次は食器棚にしよう……
………
……
…
【木工スキルのレベルが上がりました!】
「お、ラッキー。これで8!」
食器棚を作り終えたところで、木工スキルのレベルが上がった。
木工で結構いろいろ作ったもんな。コップ、お皿、スプーンに箸、弓の補修に矢。あ、斧の柄とか扉や窓も木工が絡んでた? そして、ミニチェストに食器棚。
ミニチェスト、組み上げる前に「この場所で組み上げたら、1階への階段を通らないのでは?」って気づいて良かった……ルピを起こしちゃったけど。
「よいしょっと」
食器棚を立てて山小屋側に寄せる。
外置きすることで、土埃なんかが心配だったので、上の方にだけ両開きの扉も付けた。窓用の蝶番を余分に作ってあって良かった。
下の方には扉がなく棚板も少なめ。作ろうと思ってる寸胴鍋を収納したいので。
「ちょっと下に重し置いとくか。<石壁>」
最下段の左右に石壁レンガを二つ設置。
これでまあ風に煽られて倒れるとかはない……はず。
「ワフ」
「〜〜〜♪」
「お、ルピにスウィー。って、雨上がったんだな」
スウィーは左肩にとまって、ちらっちらっとアピールはグリーンベリーかな。インベに入れてあった自分用のおやつを渡す。
グリーンベリーもパプの樹も無事に根付いたっぽいし、どっちももう何本か、若木を植え替えていい気がする。
いやいや、先に魚介類。
かご編みはまた雨の日にやるとして海岸行こう。塩も補充したいし。
「海岸まで行こうか」
「ワフッ!」
………
……
…
塩作りに海水を煮詰めてる間に素潜りして……遂に昆布をゲット!
【ティアルプ】
『水深10m前後の場所に生える大きな海藻。
素材加工:乾燥させることで食材、調味料として利用可能』
これでやっと昆布だしが取れる!
「ぷはっ!」
【潜水スキルのレベルが上がりました!】
あ、潜水スキルも取ってたんだった……
で、またエビっぽいのを見つけて逃げられる始末。学習しないなあ、俺。
「ヤスも作らないとだった……」
ルピとスウィーは波打ち際で楽しそうに遊んでいる。
「そろそろいいか」
昆布を収納して塩作りに戻る。海水を一気に魔法で乾燥させれば? と思ったが、とんでもなくMP消費しそうなので却下。
それが難なくできるくらいなら、普通の魔術士がもうやってるだろうし。
「よし、これくらいなら行けるかな。<乾燥>」
もこもこと現れた塩にはまだ水分が残ってるけど、パプの実を乾燥させるぐらいのMP消費で綺麗な塩に。便利便利。
メニューを開いてリアル時間を確認すると……4時前か。
鍛治で一品作るぐらいの余裕はありそうだし、寸胴鍋、いや、ヤスを作らないとだ。
「ヤスを作るとなると、柄の部分は木で……それだと浮いちゃうか」
『兄上!』
「うわっ! ああ、そうだった。配信してたんだった……」
『何を驚いておるのだ……』
「すまん、配信してたのすっかり忘れてた。で、何かあったのか?」
『午前中に新たに古代遺跡が見つかっておったそうだ。場所は帝国の北西、アンハイム領にある開拓地のさらに北とのことよ』
「へー」
帝国は内戦が始まっちゃったせいで、古代遺跡関連の絡みはないのかと思ってたけど、落ち着いたからってことか。
あ、いや、開拓地って難民受け入れてた場所なんだろうし、そこにいるプレイヤーたちには嬉しい話かな。
「あれ? 押し寄せてきてたモンスターってそこから来てたとか?」
『うむ。さすが兄上よの』
いやいや、それくらいは普通に思いつくだろ。っていうか、
「他に襲撃があった場所でもってことか。セスたちが防衛してた南西だっけ? あそこは見つからないのか?」
『それよ。ノームを助けたことで有耶無耶になってしまっておったのでな』
「あー……」
あの時は、妖精を探す適当な理由として『大量に襲ってくるモンスターがどこから来るのか調査する』って話だったけど、本当にその場所があったってことだもんな。
「んで、探しに行くんじゃないのか?」
『いや、南西に関してはナット殿やあそこにいるギルドが優先されるべきであろう』
「あ、そりゃそうか、白銀の館のメインは北西だもんな。北西はやっぱり鉱床がある古代遺跡?」
第二階層の最奥の扉が閉まっててみたいな話だった気がするけど、そこが開いたとかいう可能性がワンチャンありそう。
『おそらくの。だが、少々問題がありそうな気がしてのう……』
「何が?」
『例の有翼人よ』
「あー、なんか偉そうな連中か……」
あそこの深い場所に
「でも、見に行くんだろ?」
『うむ、ベル殿もレオナ殿も乗り気ゆえの。いずれにしても、アクションを起こさねばなるまい』
「そっか。じゃあ、まあ、俺から言えるのは、ひょっとしたら
『なんだと!?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます