第138話 地にもいろいろ

「お? なんか不思議な食感……」


『美味しいです?』


「うん。味は甘くてクリーミー? あと香りがすごい良い」


 昼のゲーム中にルピがここほれワンワンして見つけてくれたのが、


【サブマロ】

『地中に生えるキノコ。大きくなると地表にでるが固くなるため、食用には小さく柔らかい方が好まれる。

 料理:甘く濃厚で独特の食感がある』


 一瞬、トリュフかなとか思ったけど……そもそもトリュフ食べたことないし。

 夜のゲーム、まずはご飯ってことで、さっそく使ってみた。


「ワフ!」


「ちょっと待って」


 シンプルにフォレビット肉、レクソンと炒めただけで、かなり美味しい。

 このキノコ、美味しいものに入れると更に美味しくしてくれるやつかも。


「はい。熱いから気をつけろよ」


「ワフン」


 ルピも美味しそうに食べてるし、いろんな料理に使いたいんだけど、栽培はちょっとむずかしいよなあ……


 ………

 ……

 …


「よし。じゃ、この辺りから始めるかな」


『どういう感じか説明してもらっていいですか?』


「あ、うん。えっとね……」


 ライブの時には間に合ってなかった水回り、土間からの排水周りを整備する予定。

 とは言っても、側溝を掘っていって、泉に流れ込む前にちょっとしたため池を作ってってぐらいだけど。


「ここからこうずーっと掘っていって……この辺に1m四方ぐらいのため池かな。その上澄みだけが流れ出て……泉に流れ込む感じ」


 スコップを持っててくてくと歩きながら、敷設予定をミオンに説明していく。

 側溝の幅、深さは30cmぐらい。その内側に石壁を張ってって感じかな。


『なるほどです。結構、距離がありますね』


「だよな。こういう時に土木スキルがあったら役立ったのかなあ……」


 結局、土木スキルについては見当もつかない状態が続いてるんだよな。


『ショウ君。キャビネットの本に地学の本があったと思うんですが、あれを先に読みませんか?』


「あ、ごめん! すっかり忘れてた……」


 あれを確認しなきゃって話だったのに、すっかり忘れてた。

 あの後って……そうか、スウィーに連れられてフェアリーを助けに行ったから忘れちゃったのか。


 スコップを置いて、勝手口から入り、1階に降りてキャビネットを開く。


「確かこの辺にしまったはず。これかな? 『土、石、岩について』だよね?」


『はい、それです』


 ここで読むのもあれなので、ひとまず持って上へと。天気も良いし、外で読むか。

 まずは表紙をめくって……


「えっと……『土、石、岩について〜応用魔法学<地>〜』……え?」


『魔法なんですか?』


「みたい。っていうか、めちゃくちゃ専門書っぽいんだけど、これ理解できんの?」


 どう見ても高校一年生が理解できる本じゃなさそうなんだけど。いや、そもそも魔法だからなんでもありなのか?


『ショウ君、スキルを』


「あ、そうだった」


 えーっと……応用魔法学でいいのか? 『魔法学』で検索して……


「あった! 応用魔法学<地>。アンコモンか」


 アンコモンってことは必要SPは4。

 今、SPあまりは19……


『どうしますか?』


「取るよ。多分、ここの本で取れるやつは取っとけってことだと思うし」


 ゲーム的に考えれば、この先必要になりそうなものを用意してくれてるはずで、先に読んでおくべきだったよな。というわけで取得。


「スキル見る感じだと応用魔法学って水・火・風もあるな」


『他の本も探します?』


「今すぐ全部取るのは、ちょっと厳しいかも……」


 残りSPは15。水・火・風3つで12だから全部取れなくもないけど。


『まずは土木スキルが先ですね』


「うん。えっと、土木スキルは……ダメだ」


『ダメでしたか。ごめんなさい』


「いやいや、ミオンが謝ることじゃないって」


 これじゃない別の……いや、待て。


「ちゃんと読んで、スキルレベル上げてみるよ。樹の精霊って農耕か園芸のスキルレベルが必要とかだったよね?」


『はい』


「土木スキルも前提として……応用魔法学<地>のレベル5以上とか? そういうのありそうかなって」


 そもそも応用なんだから、基礎のレベルも上げないとかな。基礎がレベル3で、応用がレベル5って変な気がするし。


『なるほどです』


「本読むだけだから、ベル部長のライブの方を見ててもらって……」


『大丈夫ですよ。見てますから』


 あ、うん、はい……


 ………

 ……

 …


【応用魔法学<地>スキルのレベルが上がりました!】


「ふう。これで両方ともレベル5……」


『お疲れ様です』


 学問系のスキル、時間かけて本読めば上がるの早い。

 まあ、5まではって感じなんだろうけど。


「退屈してない?」


『いえ。ショウ君、本読むときに独り言言うんですね』


「え?」


 ちょっと楽しそうにミオンが言う。

 俺、自分じゃ気付かずに、ぶつぶつ言ってたっぽい?

 いや、「あー」とか「なるほど」とかは言ってる気がする……


『土木スキル、どうですか?』


「あ、そうだった。えっと……来た! 取れる!」


『おめでとうございます!』


 土木スキル、アンコモンだからSPは4か。

 ここまでやって取らないって選択肢はないよな。

 よし……


「取った……けど、よくわからないな。いやまあ、何かしないとなんだろうけど」


『ショウ君。もうすぐ11時になっちゃいます』


「うっ、明日はもう学校なんだった。終わりにするか」


 もっと早く本読んどけば良かった……


『それで、部長とセスちゃんが部室で待ってるんですが』


「え? 土木スキルのことで?」


『いえ、何かあったみたいです。時間は取らせないからと』


 何かあったって、なんだろ? 今日のライブはノームの里を確認に行ったんだっけ?

 まあ、いいや。とりあえず部室行こう。


***


「ただいま」


『おかえりなさい』


『兄上、おかえり!』


 ミオンがいつものように小さく手を振って迎えてくれる。

 セス美姫もまだ電池切れではないらしく元気な模様。逆にベル部長は少しお疲れのご様子?


「ごめんなさいね。ちょっと意見を聞きたくて」


「なんです?」


「ノームの里の安全確認に行ったのは知ってるわよね? それで行ってみたんだけど……」


 そのノームの里だった場所はモンスターに荒らされてしまっていたらしい。

 で、それならそれで、ちゃんと再建してあげてって話になると思うんだけど、


『何か問題が?』


「ノームたちにずっと居てもらいたいっていう人たちが結構いるのよ……」


「あー……」


 なんか可愛いって話だもんな。お姉さん方がキャーキャー言うぐらいに。


「でも、なんで俺に意見を?」


「兄上はフェアリーを保護しておろう。彼女らは普段どうしておるのだ?」


「え、放置して……。いや、一応、食料を取りに行くときはルピに護衛についてもらってるかな」


 あれを保護っていうのかどうかは微妙だけど。


「そうなのね。何か要望的なものとかは?」


「一番偉そうなフェアリーが居て、こっちの話は通じてるっぽい?」


『はい。スウィーちゃんは理解してると思いますよ』


 スウィー以外のフェアリーも、こっちの言葉は理解してる感じなんだよな。植物探しとか手伝ってくれたし。

 なんかこう……通じるための何かが?

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