第114話 可能性は平等に?

「ワールドアナウンスはされてない、かな?」


『確認して来ますね』


「うん、お願い」


 その間に褒賞を確認しとくか……


【フェアリーの守護者】

『フェアリーからの信頼を得たものに贈られる褒賞』


 危ないところを助けたからって感じ?

 いや、こっちに来てグリーンベリーを渡したあとだったから、やっぱり餌付けしたからって線も捨て切れない。

 そして、


【島民が10人を突破】

『島民が10人を超えたことで得られる褒賞。

 ※現在の島民数がステータス画面で見られるようにもなります』


 おおっ!?

 さっそくステータス画面を開いてみると……14人らしい。


「14?」


「ワフッ!」


「ああ、ルピもだもんな」


 納得。

 俺、ルピ、フェアリーが12人で14人ってことね。オッケーオッケー。


『戻りました。ワールドアナウンスは無かったみたいですよ』


「ありがと。とりあえず一安心かな」


 今のタイミングだと絶対に妖精を横取りしたって疑われるもんな。

 まあ、実際そう見えてしまうんだけど……


『それは島民の数ですか?』


「うん。10人超えたらステータス画面に出るようになるんだってさ」


 嬉しいっちゃ嬉しいんだけど、建国宣言もしてないのに表示されていいのか?

 ゲームっぽいのか、ゲームっぽくないのか……


『ショウ君、ルピちゃんと妖精さん12人で14人なんですね』


「だね」


『……私はカウントされてないんですね』


 あ、うん、それはさすがに……


***


「ただいま。部長たちはまだ?」


『おかえりなさい。二人ともまだIROプレイ中ですね』


 時間を確認すると11時15分前。

 連休中なのでガッツリの可能性もあるけど、セス美姫はタイマーが切れるとダメになるタイプだし、そろそろ戻って来そうな気がする。


『ショウ君、部長に話す理由を教えてもらっても?』


「あ、うん。まあ、勘というかこうなんじゃないかなっていう予想だけど」


 今回、変な形だけど妖精たちを助ける形になった。

 それでまあ島に連れてきて、グリーンベリーを渡したら島民扱いになったのは予想外だったけど。


 ともかく、開拓地の先で何か他の種族に出会う可能性は、王国にも帝国にも(公国にも?)あるんじゃないかなっていう予想。共和国は聖国ができたのと、俺がインターセプトしちゃったので……


『なるほどです。他の場所にも妖精さんが?』


「うん。うちの島に来た妖精は『フェアリー』だったし、別のタイプとかもいるんじゃないかな?」


 思いつくのは『ノーム』とか『ケット・シー』とか。いや、ノームはIROだと土の精霊? うーん……


「何にしても、モンスターに襲われててやばそうなら助けた方がいいんだろうし、【フェアリーの守護者】って褒賞ももらえたし」


 3SPって普通にプレイしてたらでかい気がする。

 これって俺が取っちゃって良かったのかな。【無人島発見】とか【最初の島民】とかは、無人島スタート専用って気がするからまだいいんだけど。

 ……そういや【調教の先駆者】なんてのもあったっけ。まあ、俺が考えてもしょうがないか。


『ショウ君?』


「あ、いや、ちょっとね」


 とそこにベル部長とセスがやってきた。


「兄上、ただいま!」


「おう、おかえり」


 まだタイマーは切れてないようで元気なセスと……


「……急がないといけない何かがあったのかしら?」


 露骨に警戒しているベル部長。

 はい、すいません。何かがありました。


 ………

 ……

 …


「とまあ、こんな感じですが」


「……」


 ベル部長、あっさりフリーズしてるし。

 で、セスはというと、俺が見せた動画をまた好き勝手再生し直して、


「ふむ。兄上は、このような妖精が他の場所にもと考えておるのだな?」


「ああ。防衛に余裕があるうちに、探索に出たりした方がいいんじゃないか?」


「確かにのう」


 そう答えて座り直す。


『もう難しい感じですか?』


「そうでもないわよ。今日の襲撃も敵の強さ的には少し増したけど、危なげなく防衛できたもの。今のところは次の襲撃が来るまでに余裕はあるけど……」


「我々だけ何かを知ってるかのように、探索に出るのはおかしかろう」


「あー……、すまん」


 そりゃそうだよな。

 妖精を捕まえにきた連中だって、話の内容からして黙って出てきてたっぽいし。


『襲撃はまだ続くんでしょうか?』


「ええ。でも、おそらく明日で終わりじゃないかしら?」


「うむ。ワールドクエストの達成率は90%弱。明日の夜がラストであろうの」


 二人とも今日はもう上がるわけだし、チャンスがあるとして朝、昼の襲撃後の2回。

 でも、拠点を一時的にでも離れて探索に出るのは不自然。

 うーん……


『あの……素朴な疑問なんですが、襲撃してくるモンスターはどこから来てるんですか?』


「え?」


「……なんかポップするポイントがずっと先にあるとか」


 なんかこうゲーム側の都合ってやつなんじゃないかな。

 アーマーベアも急に隣に湧いたし。


「ミオン殿は『こちらから打って出る』という選択が取れるのではないかと?」


『はい。今、襲撃を受けている場所なんですが、古代遺跡の近くが多いですし、ひょっとして関係があるんじゃないかと』


「あー」


 つまり、王国北西側や聖国の南側は古代遺跡のダンジョンから、公国の西側は古代遺跡の塔からモンスターが湧いて出て来てるかもってか。


「ふむ。原因にいちいち理屈をつけてくるIROならありえん話ではないのう」


「それを調査に行くというのであれば名目は立つわね」


「まあ、我々だけで行くのは危険であろう。希望者を募るのが良いのではないか?」


「そうね。防衛だけで時間を持て余しているプレイヤーを誘いましょう」


 とまあ、ベル部長とセスの間であーだこーだと作戦会議が始まる。

 俺とミオンはもういいよな。


「じゃ、伝えることは伝えたんで」


「待つのだ、兄上。もう一つ聞いておきたいことがある」


「え? 何だよ」


「この『神樹』とはなんなのだ? これがあれば兄上の島に行けるのか?」


 ……

 神樹って書いてあったのすっかり見落としてたなー……


『神樹のことはよくわかりませんが、高位の妖精がいないとダメだそうですよ』


 ミオンがニッコリとしつつ答えてくれる。

 フォローしてくれてありがたいんだけど、何だか笑顔がちょっと怖い。


「むぅ……」


 で、このことは完全に伏せないとまずいと改めて認識。


「あれで行き来できるとか試されたら困るな。あ、いや、偉そうな妖精がいない限りは絶対無理だから大丈夫?」


『動画では妖精さんたちは島で仲良くなったということにしますね』


「それがいいわね。転移魔法陣の話も伏せるつもりなんでしょう?」


 あ、そっちもあるんだった……

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