日曜日

第106話 離れられない事情

 日曜日。

 予定通りの宿題をこなしてからログインし、蔵の石壁の続きを。

 ミオンがフォーラムを見て、昨日の建国宣言がそのあとどうなったか教えてくれた。

 揉めはしたけど、結局、落ち着くところに落ち着いた的な?


『という感じみたいです』


「へー、って言いたいところだけど、自治領って言えるほど広い場所あるのかな?」


『共和国の街との境目だそうですよ』


 それって共和国から攻められた時の防波堤なんじゃとは思うけど、本人たちが納得してるならいいのかねえ。


「ベル部長たちとも関係なさそうで何よりかな」


『はい。あ、あとショウ君が予想してたことは当たってたみたいです』


「え? 俺が予想してたこと?」


『スタート地点として選択できるそうですよ』


「マジか。危ないところだった……」


 やっぱり国として認識されるとってあたりなのかな。

 あの時ノリで宣言してたら……例の今川さんの騒ぎの時に、確実に何人かは来てた気がするな。


「ん? そいや、スタート地点って前にできた公国も選択できるの?」


『いえ、パルテーム公国はダメだそうです。帝国もそうですが、選んでも戦争中のためって理由が出て決定できないと』


「へー。俺が建国宣言できるかもって話になってたりする?」


『はい。でも、わかっててやってないんだろうなって』


「そりゃ良かった」


 どうやら見てくれてる人たちも理解してくれてる感じかな。

 次のライブで質問が出たらそう答えるつもりだったけど、さらっと答えても問題なさそう。


「ふう、半分は越えたかな?」


『かなり積み上がりましたね』


 かなりのペースで肩までの高さに積み上がったのは、例のレッドアーマーベアから作ったマントのおかげ。


「ふう、ちょっと休憩するか」


「ワフ」


「ルピ、いつもの?」


「ワフン」


 グリーンベリーを妖精に届けるのはいいんだけど、ホントに何してるんだろ?

 蔵が落ち着いたら俺も一回付き合うか……


『そう言えば、ショウ君。チャンネルの名前はどうしましょう?』


「あー……」


 セス美姫に正論をかまされてから、全然考えてなかったや。


「ごめん、あんまり考えてなかった。ちゃんと考えるけど、思い浮かばなかったらミオンが決めちゃって」


『はい』


 自分が何一つアイデア出せないのに「それはちょっと」って言うのもどうかと思うし、ミオンのチャンネルなんだから、ミオンが好きに決めていいよな。


『あと装備にスキルの補正がかかる話ですけど、もうすでにあるようですよ。元素魔法にプラス補正のある杖の話が多かったです』


「あ、そうなんだ。なんかちょっとビビりすぎだったかな」


『でも、今は+1しかなくて、ショウ君の+2はかなり珍しい方かと』


「なるほど。でもまあ、あのエリアボスを倒したんだから、それぐらいはいいよな」


『ですね』


 あれ? でも、ベル部長って……


「なんか前にベル部長が『エリアボスはドロップが渋い』とか言ってなかったっけ?」


『言ってましたね。モンスターが違ったからでしょうか?』


「ああ、そうか。レッドアーマーベアじゃ無いんだっけ」


 オーガだっけ? まあなんか物理がすごい相手だったらしいしけど。


「夜にでも聞いてみるか。さて、続きをやるか!」


 さて、もう一段はなんとか積んで、次の回復待ちに足場を作ろうか。


 ………

 ……

 …


「よし、これであとは梁を渡して、屋根を載せればオッケー!」


『お疲れ様です!』


 足場——簡単な踏み台だけど——も組んで、高さおよそ3mの石壁積みが終了。

 一番上の段は梁を渡せるように凹んだ部分も用意してあるし、あとは梁を渡して……


【ワールドクエストが更新されました!】


「え? また?」


『何が起きたんでしょうか?』


 前の更新があったのって金曜だっけ?

 ちょっと早すぎだと思うんだけど、一体何があったんだろうとメニューから詳細を確認してみる。


【ワールドクエスト:生存圏の拡大・防衛】

『グラニア帝国とパルテーム公国の停戦協議は早期合意に至った。何故か?

 それは大陸各所にて、大規模なモンスターの氾濫の兆候が見られたからだった。

 目的:新たな街の開発とモンスターからの防衛。達成状況:72%』


「うわ、マジか。これ、ベル部長たち大変なんじゃ……」


『どうしましょう?』


「どうって言われてもなあ。今ってライブ前の準備中だよね? 午後4時ぐらい?」


 こっちの作業はキリのいいところまで進んだし、続きが夜でもあんまり変わりないと思う。


『はい、4時前です』


「じゃ、いったん部室に行くよ。続きは夜にできるし」


『わかりました』


「ルピ。また走って帰るぞ!」


「ワフッ!」


 うん。早く屋根作って、こっちに引っ越そう……


***


「ただいま」


『お帰りなさい。部長から限定ライブのお誘いが来てます』


「りょ」


 早いなあ。

 まあ、俺とミオンは特に応援することぐらいしかできないけど。

 と、ライブ映像が映し出された。場所は……どこだここ?


「ちわっす」


『おお、兄上!』


『あら、早かったわね』


 えー? 招待めっちゃ早いのなんかあるからじゃないの?


『あの……伝えたいことがあるからライブの招待が来たんじゃないんですか?』


『すまんのミオン殿。急かしたのは我の方だ。ワールドクエストが更新された中身は知っておると思うのだが、兄上に了承しておいてもらいたいことがあっての』


「え? 俺に何を?」


『今日のライブはここ南西部の予定であったが、どうやら「モンスターの氾濫」とやらに対抗する戦力が足りないようなのでな。ナット殿とその友人に手助けを願っても良いか?』


「ああ、そういう。って、俺に断らなくていいぞ。あいつがオッケーってんならな」


 妙なところで義理堅いというか、筋を通す癖がついてるのは母さんのせいか?

 まあ、勝手にやるよりは100倍いいんだけど、その気づかいを普段でももう少ししてくれよって感じだ。


『うむうむ。ポリー殿はキャラレベルも考えて、アミエラ領の開発拠点で生産組といてもらうことにしようと思っておる』


『部長やセスちゃんたちがいなくて大丈夫なんでしょうか?』


『ゴルドお姉様は残るし、生産組だって純生産のディマリアさん以外はかなり強いわよ。それに何よりレオナさんがいてくれるわ』


 ああ、そりゃ心強いや。

 当然、雷帝レオナ親衛隊もいるだろうし、なんかもう無双する姿しか見えてこない。


「りょっす。話はそれだけですか?」


『ときに兄上。このモンスターの氾濫とやらはどう思う?』


「ん? まあ、普通に考えたら、モンスターが大量に発生して開拓地に押し寄せるんじゃないの?」


 タワーディフェンスならぬベースディフェンス?

 開拓拠点に街壁作ってあったのは大正解ってことか。セスの奴、これ予想してたのか?


『1日、いや、今夜だけで終わる可能性についてはどうだ?』


「う、微妙だな。連休中にこのイベントぶつけてきたって気がするし……」


『まさか連休中ずっと続くんでしょうか?』


『その可能性もあるかもしれないわね』


 えー……

 俺の無人島は関係ないからいいけど、ミオンち行くまでに片付いてくれないと、セスが離れられなくなるんだけど……

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