第35話 そろそろ本気出す
「それはそれとして、今日は動画を投稿する日じゃなかったかしら?」
『はい。今からアップします』
そうだった。すっかり忘れてた……
今日の動画は海岸を西側に進み、ルピを見つけて助けて応急手当するところまで。
と、そこに熊野先生……ヤタ先生が現れる。
「こんにちはー。ミオンさんの動画を上げるところですかー?」
『はい』
「では、今日は私とミオンさん、ショウ君で投稿後の動きをリアルタイムで見ましょうかー」
チャンネル登録者数も増えたので、投稿したらすぐに再生数も増え、コメントもつくだろうということで、それをリアルタイムで観察することに。
「私はIROへ行っちゃって大丈夫かしら?」
「どうぞー」
「じゃ、お先にね」
返事を聞いてIROへと行ってしまうベル部長。
その間にミオンが投稿を終わらせたようで、あとは公開するだけかな。
『公開します』
「おけ」
「どうぞー」
ミオンが公開してしばらくすると……
「うわっ、すげえな……」
1分ほどすると、再生数がガンガン上がっていく。チャンネル登録メンバーに通知が飛んだんだろうけど、十分の一ぐらいはもう見始めてるのか。
で、動画の再生時間が過ぎたあたりから、また再生数の増加が加速し始める。
「加速してんすけど……」
「誰かがフォーラムかSNSに共有して拡散しはじめたんだと思いますよー」
『私のサエズッターのタイムラインにも流れてきました』
マジか。ってか、どういう人が拡散してるのか気になるんだけど。
そして、ぼちぼちとコメントがつき始めている。
「やっぱり子犬や子猫は強いですねー」
『ルピちゃん、可愛いですから』
コメントはだいたいルピ――まだ名前はついてない時なので狼?だけど――の話で、あとは例の件で休止とかにならなくて良かった的なのも多い。
とりあえず変なコメントは湧いてないみたいだし、良かった良かった、かな?
***
『ショウ君、ルピちゃん、こんにちは』
「ようこそ、ミオン」
「ワフン!」
投稿動画も荒れそうな雰囲気が全くないしってことでIROへ。
今日もヤタ先生がミオンのグループ限定配信を視聴中。
『今日は陶工の続きですか?』
「うん、ちょっと大きめの壺の予定。トカゲの皮の処理ができるぐらいのやつ」
パプの果汁に漬け込めば、皮が革になるらしいので、それをできるだけ突っ込める広口の壺を作りたい。てか、これ以上コップ作ってもしょうがないし。
「ワフ」
「ん、ご飯先に作るよ」
ルピにはいつもの兎肉のミンチを。自分にはローストラビットを試してみたいところだけど塩がないからなあ。
西側に探しに行くものいいけど、今日のところはタダの串焼きで我慢。
「さて、始めますか……」
とはいえ、石窯に入るサイズ以上のものは作れないわけで、小さいバケツぐらいの壺を成形。
スキルレベル上がってるからか、かんたんな形の大きいもののほうが作るの楽だな。
窯に入れて待っている間は釉薬を作る。これ、公式フォーラムの情報無かったら詰んでたかもなあ。
ミオンが教えてくれたジンベエさんは心の中で陶工の師匠と認定しておこう。
<面白いですねー。これ中学の授業とかになりませんかねー>
と、ヤタ先生が感心してる。まあ、楽しいとは思うけど、スキルアシストあるし、焼きも15分とかで終わるからなあ……
素焼きが終わって冷却中はルピと遊んだりして時間を潰し、今度は釉薬をまんべんなくつけてから本焼き。
<作務衣を着て作業すると本物の陶芸家に見えませんかねー>
『手慣れてきましたね。陶芸家っぽいです』
「うう、せめてまともな窯だったらなあ……」
今の粗末な石窯だと本当に学校の体験学習……以下だよな。
『ゴブリン集落を潰した後に作り直します?』
「うん。せめて、もう少し大きいサイズのを作りたいかな? いや、その前に寝る場所が先だよな」
<あのゴブリンたちを倒す予定があるんですかー?>
『土曜日が楽しみですね』
「うまく行くといいんだけど」
あの場所を奪い取れれば、今後の活動にかなり幅が出ると思うんだよな。
あと、ゴブリンたちから何かしら戦利品を期待したいところ。斧とか……
<土曜ですかー。その様子ー、せっかくだしライブしてみても良いかもしれませんねー>
え゛っ……
『ライブですか?』
思わずミオンも返事してしまう。
<はいー。そろそろ一度ぐらいライブ配信してみてもいいんじゃないかなーとー。
収益化する前に何度か練習したほうがいいかなーと思いますよー>
「うーん、俺はいいけど……ミオンはどう?」
『やりたいです!』
え、かなり前向きなのは意外なんだけど……
「えーっと、ミオンが乗り気な理由聞いて良い?」
『今週金曜に投稿する動画って、ルピちゃんの名付けと東側での兎狩りなんです。
その次は罠の話にしようかと思ってるので、その前にライブした方がサプライズがあると思うんです』
<なるほどー。あの数のゴブリンをどうやって? って思わせておいてからー、罠にかけて倒していくっていう展開は良さそうですねー>
うわ、なんかちゃんと考えてる……
「でも、それで失敗したらって考えると……」
『大丈夫です! 絶対にうまく行きますよ!』
<まー、失敗したらしたで面白いのでいいかとー>
ヤタ先生……
『ダメですか?』
「いや、やってみるか。もともと土曜にやるつもりだったし、気合い入れて一発で決めるつもりで行くよ」
やるからには一発で決めたいし、日曜はあの場所に本拠地を移したいところ。
『頑張りましょう!』
「うん、当日はあんまり反応できないかもだけど、それは勘弁して……」
<私もフォローしますのでー、ショウ君はゲームに集中すればいいですよー>
「りょっす」
「ワフ」
飛び込んできたルピを受け止めて撫でる。
「ルピにもいろいろ手伝ってもらうからよろしくな」
「ワフン」
ゴブリンを釣ってくる役目は、基本的にルピにお願いするつもりだし。
そろそろ本格的に地形を把握して、敵の釣り方向と罠を設置する場所を決めていかないとだよな。
【陶工:焼き上がりました】
『ショウ君、そろそろ5時半です』
「じゃ、これ取り出したら上がるよ。あとは自然冷却待ちだし」
<二人とも真面目ですねー。ベルさんなんて「あと5分だけ!」とか往生際が悪いですよー>
ベル部長、何やってんすか……
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