第25話 ドロップ品さまざま

 三つ目、四つ目の罠は空振り。で、五つ目には……


「うわ、ゴブリンが吊られてる」


 足を括られ吊られたゴブリンがだらーんとしていて、失神してるっぽい。

 モンスターのグラフィックが割とポップだからいいけど、リアルだったらドン引きだったな、これ。


「あー、気分悪くなったりしてない?」


『はい。ゲームですし』


 女の子の方がこういうの強かったりするかな。ともかく、サクッと倒しておこう。


【短剣スキルのレベルが上がりました!】


「あっ……」


 こんなのでスキルレベル上がるのも微妙なんだけど、それはそれということでいいか。


『解体しないんですか?』


「あ、そうだった。って、何が手に入るんだ?」


 蔓を切って下ろし、解体してみると……


【魔石(極小)】


「魔石って何?」


『街だと冒険者ギルドや魔術士ギルドで換金してくれるアイテムですね』


<ショウ君、本当に何もサイトとか見てないんですねー>


 はい、ネタバレが怖くて見てません。


『ショウ君は攻略サイトとか見てないんですか?』


「うん、全然。まあ、わからないことあったら聞くのでよろしく」


『はい。任せてください』


 ミオンはプレイはしないけど見てるのかな? 俺は一人でやるって決めた時から、わからないことはナットにでも聞くかって思ってたけど。


「で、魔石のままって使い道あるの?」


『今のところは換金以外の用途は見つかってないみたいですね』


「じゃ、とりあえず持っとこうかな。この島だと誰かに盗られることもないし」


 テントに中に置きっぱにしてあるものも特に消えてなかったのすごいよなあ。一応、家だから? 外にほったらかしだったら消えんだろうか……


「ワフワフ」


「ん? どうした?」


 ルピが木の根元のあたりを前足でちょいちょいと……何かあるっぽい?

 しゃがみ込んで草をかき分けると……


「おおおっ! カナヅチ!?」


『落ちてたんですか?』


「うん、落ちてたっていうか、ゴブリンが持ってたのを落としたのかも」


 そういや、あの集落、あんまりちゃんと確認してなかった。作戦決行前にもっとちゃんと調べに行かないとだ。


<人型で群れるモンスターは武器や防具などを落とすこともあるのでー、戦利品はしっかり確認した方がいいですよー>


『もっと他に落としてる何かがあるかもですね』


「確かに。ルピ、他に何か落ちてるか?」


 そう聞いてみると、嬉しそうに少し離れた草むらへと駆けていく。


「ワフ〜」


「お、ナイフ……にしてはボロボロだな。うーん……」


 えーっと、【刃こぼれしたナイフ】か。研ぎ直せば使えたりするのかな? 砥石ってどこかに落ちてる物なのかもわかんないけど。


『直すよりはそのまま石工とかに使うのはどうでしょう?』


「ああ、そっか。カナヅチも入ったし、ノミだと思えばいいのか」


 今のところそんな複雑なものを作る予定もないけど、あって損ってことはないし。

 えーっと、他に何か落ちてたりは?


「ワフン」


「おけ。じゃ、次行くかな」


『はい』


 ………

 ……

 …


「んー、いったん戻ろうかな。今って9時過ぎぐらい?」


『です』


 残り7箇所の罠を見て回って、バイコビットが二匹にゴブリンが一匹。

 兎肉と毛皮、ゴブリンの小さい魔石が1つで収穫としては微妙。カナヅチとか手に入ったのが良すぎただけかも。


 そっちよりも、キャラレベルが上がったのと、気配感知、気配遮断、罠設置・解除のスキルレベルが上がったことの方が嬉しかったかな。

 BPはまた全てステータスへ。今回はDEXに3、STR・INT・VITに2ずつ、AGIに1、LUKはいつもどおりスルー。ちなみにSTRが増えたからといって筋肉ムキムキになったりはしないっぽい。


「ルピ、帰るぞー」


「ワフー」


<本当にMMOをやってるのかわからなくなってきましたねー……>


 なんかヤタ先生が呆れてるんだけどスルーします。答えなくていいんだし。


 キャラレベルにしてもスキルレベルにしても、この島で一人のんびりスローライフを送るために必要な分は上げたいけど、それ以上に無理をするつもりはないかな。


 帰り道もパプの実やらを採集しつつのんびりと。そういや、応急手当はともかく、調薬は薬の作り置きができるんじゃ……


『荷物を置いて、また罠の設置ですか?』


「ううん、時間も微妙だし、調薬を試してみようかなって。ヒールポーションとか作れるんだよね?」


『はい。でも、材料はあるんでしょうか?』


<ベルさんがいる王国ではー、ヒールポーションはコプティという野草からですねー>


 あー、そもそも植生が違ってるのか。一応、この無人島は通常プレイでスタートできる国と緯度的に同じなんだけどなあ……


「じゃ、やってみるしかない感じかな。……どうやるんだろ?」


『コプティからヒールポーションは煮出すそうです。調薬に熱心なプレイヤーさんがいるっぽいです』


「へー、そういうこだわりプレイも面白そうだなあ」


 無人島プレイができなかったら、生産メインって考えてたし、そっちはちょっと興味あるんだよな。

 まあ、もうゲーム内交流とかは無理なんだけど。


「ただいまっと」


「ワフ」


 テントに戻ってきて、戦利品をとりあえずぶちまけてから整理。


「やばい。ものが増えすぎて寝る場所がだんだん狭くなってきた……」


『外に置いておくと消えちゃうんでしょうか?』


「あー、どうせなら試しとくかな」


 適当に作った木皿とか石のまな板なんかを外に出し、即席で作ったかまどの隣に置いておく。

 誰かに盗られることはあり得ないんだけど、セーフゾーンにも近いし、いつの間にか消えてるって可能性はありそうなんだよな。


「ルピのお気に入りだけは残しておくか」


「ワフン」


 ちょっと恥ずかしい出来だけど、ルピが食べやすいようにと作ったランチプレートだけは残しておく。


「小学生の図工の作品みたいな出来だよな……」


<スキルアシストで綺麗になったりはしないんでしょうかねー?>


『普通のお皿みたいな一般的なものと違うとスキルアシストが効かないんでしょうか?』


「まあ、そもそも流木がいびつだったせいってことにしとくよ……」


 西側の森は針葉樹だったし、あっちで伐採ができればなあ。まあ、それはそれで「今度はノコギリが足りない」とか「カンナが欲しいなあ」とかになるんだろうけど。


 ……ん?


「なんで、ゴブリンがカナヅチなんて持ってたんだろ?」


『そういえばそうですね。昔は誰か人が居て住んでいた、ということでしょうか?』


「ああ、なるほど。無人島っていっても、ずっと誰もいない島ってわけでもないのか」


 でも、確か無人島スタートが成功した時に【最初の上陸者】とかいう称号をもらったような気がする。

 あれは『プレイヤーでは』ってことなのかな。まあ、そうじゃないとNPCが勝手に称号取っちゃうよな……

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