第10話 ギルティ
『ショウ君、今日はどうしますか?』
「んー、木工の材料集めと、東側を海沿いにって感じかな。西側はもうちょっと落ち着いた時に行きたいし」
今日はあくまでミオンさんの練習。俺が返事できるゆるいゲームプレイの方がいい気がする。
『そのテントはショウ君が作ったのよね? ちゃんと就寝ログアウトの効果はあるのかしら?』
「あー、ありますよ。横になって寝れりゃいいんじゃないですかね」
まあ、ログインしてれば自然回復があるから、別にテント作らなくても問題ないっちゃないんだけど。
『普通のプレイヤーはちゃんとお金を払って宿に泊まってログアウトしてますねー。ケチってる人もいるみたいですがー』
へえ……。街中なら別に宿に泊まる必要もなさそうなんだけど。
『帝国だと広場とか裏道で立ったままログアウトすると、NPCのスリに金を取られるらしいわよ』
「マジすか」
『怖いです』
ナットが帝国スタートだったっけ。
まあ、あいつはそういうところでケチるタイプじゃないから大丈夫か。
『IROは結構いろんな方法でプレイヤーからお金を取ろうとしてくるのよね……』
「インフレ対策ってやつかと」
『インフレ?』
とミオンさん。プレイする側じゃないとあんまり実感はないのかな。
「プレイヤーって遊んだ分、お金持ちになるし、ならないとつまんないでしょ?」
『うん』
「モンスター狩ったり、ポーション作ったりして儲けたお金で、新しい装備を買ってって繰り返していくよね」
『うん』
「みんなレベルが上がってお金持ちになると、レアドロップ武器とか信じられない値段になったりするんだ。売る方も高く買って欲しいわけだし」
『なるほど……』
で、レアドロ当てたくて狩りしてると、お金も貯まるしっていうね。
『レアドロはまだいい方じゃないかしら。自分が売る値段よりも安く売ってるポーション買い占めるなんてのもあるわよ』
『その買い占めたのを高い値段で売る?』
『ええ、そうよ』
「えげつないっすね……」
リアルでも転売ヤーが数量限定品を買い占めて、高い値段でオークションサイトに出すなんてのがあるし、MMORPGが経済の縮図なんて言われるのがよくわかる。
『つまり、さっきの話はNPCがプレイヤーのお金を回収してるということですか?』
「うん、すぐ金持ちにならないように、日々少しずつでも削る感じ? やりすぎるとゲームがつまんなくなるから難しいんだろうけど」
『王国だと安宿なら素泊まり1000アイリスだし、ゴブリン2、3匹倒して魔石を売るか、バイコビットの肉1つ分ね』
始めたばっかりの初心者でも十分やっていける安さってことかな。そこでつまづかれても困るもんな。
『ショウ君、お金は使わないですよね?』
「うん。っていうか、所持金は0円、じゃなくて、0アイリスだよ。無人島スタートすると、お金もらえないっぽい……おっと!」
「ピスピス!」
角を向けてジャンプ攻撃を仕掛けてきたバイコビットを避け、サクッとダガーで倒す。これで素泊まり一泊分か。
東側は初心者装備でも大丈夫ゾーンなんだろうけど、どうにかして武器と防具を揃えないとなんだよな。
『その分の装備が追加されてるとかはないんですかー?』
「あー、普通にスタートした時の初期装備とか所持品を知らないんで」
見せた方が早いだろうなと思って、装備メニューを開く。
この辺に置けば見やすいかな?
『私の時と変わらないと思うわ……』
「ベル部長はクローズドベータからやってるんでしたっけ。最初の所持金っていくらだったんです?」
『3万アイリスね。宿代や食費も含めて、しばらくは無収入でも暮らせる感じよ』
なんか、3万円損した気分になってきた。
「まあ、俺はその分、SPごっそりもらったんで……」
『ステータスとスキルを見せてもらえますかー?』
「りょっす」
――――――――――――――――――――
Name:ショウ Lv.2
HP:155 MP:155
STR:15 DEX:15 AGI:12
INT:14 VIT:14 LUK:10
元素魔法:1 短剣:1 解体:1
鑑定:1 投擲:1 木工:1
石工:1 気配感知:1 気配遮断:1
残りSP:31 残りBP:0
――――――――――――――――――――
うーん、しょぼい。
1日目はキャラ作成に時間使ったし、2日目になってやっとキャラレベルが1上がっただけだもんなあ。
『SPが31も余ってるのね……』
「これからガンガン使うことになると思いますけどね」
っていうか、正直、31あっても足りるかどうか不安。
この無人島でキャラレベ上げるのってどうすりゃいいんだっていうね。
やっぱり、この前見つけたゴブリンをちまちまと倒していくしかないのかなあ……
『取る予定のスキルとかはあるんですかー?』
「うーん、釣りとか?」
『昨日、話してましたよね』
「そそ。針と糸を調達できればなあ」
適当に土を掘り返してミミズでも見つけて餌にすりゃいいし、親父にいろいろ教わったことが役に立ちそう。
と、ちょうど島の東の断崖絶壁が見える場所に出た。
「おおー」
風光明媚ってこういう場所のことをいうんだろうなってぐらい綺麗。フルダイブってすげーなーと思ってしまう。
『すごい綺麗な眺めです……』
『ホント、よくこんな島を見つけたわね……』
『ですねー』
俺自身もホントよく見つけたなあと思う。
『最初から無人島スタートするつもりだったんですか?』
「うん。まあ、できたらいいなぐらいだったけど、スタート地点選択のマップがズームとスクロールできるってわかってから4時間……5時間弱は探してたよ」
なんかその答えに沈黙が流れる。ドン引きされてるっぽい。
まあ、あの時の俺はちょっと壊れてたとは思うけど。
『そこまでしてソロで遊びたかった理由を聞いてもいいかしら?』
「……ちょっと一人でのんびりしたかった的な?」
人とゲームするのも楽しいんだけど、どうも俺は一緒にいる相手が楽しむことを優先しちゃうらしい。
ナットはそれをよく知ってるから、結構気をつかってくれるんだけど、それがまた申し訳ないなってのもあったり……
『私が実況して迷惑じゃないですか?』
「いや全然。ソロを楽しむつもりだったけど、ミオンさんと話しながらゲームするの楽しいし」
『良かったです……』
人がゲームしてるのを後ろで見るのも楽しいけど、逆も結構楽しいもんだなと。
これが真白姉だったら、ああしろこうしろってうるさいんだろうけど……
『ギルティ』
『ギルティですねー』
「えっ?」
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