第七部 広がり深まる

第二十一章 ドルプロ&バーチャルライバーフェス初出演!

第338話●思わぬ人たちがやってきた!

 いろいろな騒動も終わり、土曜日は渋谷シアターアリーナで行われた「IDOL Performance EXPO」の初日で堂々たるトリを務め、日曜日は千葉美浜メッセで開かれた「SUMMER SONUS FESTIVAL」のオープニングアクトで素晴らしい歌唱を魅せた未亜は、ここからドルプロのライブとバーチャルライバーフェスに向けてフル稼働となることもあって、一日まるまる休養となっている。

 モーニングを食べてから一緒に録りためていた未亜の出演番組を見ていたのだけど、忙しかった上に明貴子さんの件もあって、さすがに気力も体力も使い果たしたのか、珍しくウトウトし始めたので、昼寝をするように促した。こういうときのために寝室のカーテンは厚手のものにしたので、ちゃんと暗くなっている。時間がぽっかり空いたので、俺のほうはヨミカキの連載を書きつつ、書籍化作業も並行して行っていく。


 ピンポーン


 突然なる呼び鈴。警備員室からは特に連絡は来ていないし、仲間内で訪問してくる人もいないはずなのだけど、とインターホンから誰が来たのか確認する……えっ?あれ?思わず目をこすって二度見してしまう。えええええええええええええええええええええっ!?なんで鶴本さんと虎岩さんがいるの!?


 ピンポーン


 出ないでいたらもう一回なってしまった!取り急ぎ玄関へ向かう。


 ガチャッ


「こんにちは……。」

「雨東さん、こんにちは。」

「あっ、先生おはようございます。」

「お二人ともどうされたんですか?」

「昨日からお隣に越してきたの。よろしくね。」

「えっ!?鶴本さんもこの社宅に!?」

「そうよ。ところで今日は美愛は?」

「このところハードスケジュールだったので昼寝しています。」

「そう?今晩は空いてる?」

「ええ、空いてますね。」

「そうしたらみんなでご飯食べましょう。」

「虎岩さんも一緒に4人ですか?」

「いいえ。ここに住んでいるみんなで来られる人全員よ。」

「ええっ!?」

「これから一軒ずつ挨拶に回る予定なの。」

「じつはTlackで聴けばいいっていったんですけど。」

「宥雪さん、みんなの仲間に入れてもらうんだからちゃんとあいさつしないと失礼じゃないの。」


 えっ!?仲間ってどういうこと!?よく判らないのだけど食事会は楽しそうなので、とりあえず、20時に923へ集合ということで承った。起きてきた未亜に話をすると大混乱。まあ、それはそうだよなあ。とりあえず準備をして時間の少し前に家を出ると923の前にはみんなが待っていた。華菜恵さんは太田さんから「今日はランがあなたたちの階に越してきているから早めに帰ってあいさつしておいてね」といわれて早めに帰ってきたらしい。磨奈さんも大石さんから同じようなことをいわれたとのこと。虎岩さんあたりが手配したのかな?

 時間ぴったりに鶴本さんと一番やりとりの多い未亜が代表してチャイムを鳴らす。虎岩さんが出迎えてくれて923に入ると……。

 14畳のリビングダイニングと両方の部屋を区切っているはずの壁が!備え付けのクローゼットが!ない!ないぞ!なくなっている!!!そして、そこには高級レストランにあるような8人掛けのテーブル3台と25脚の椅子、どの席からも見やすい感じで85インチのチャープ製最新鋭8K液晶テレビが壁掛けされている……。反対側には4人掛けの高そうなソファセットと少し前に最新鋭だった60インチのチャープ製8K液晶テレビがテレビ台に置いてあった。そして、クローゼットがあった場所にはきれいにシーツと布団が掛けられたキングサイズらしきベッドが鎮座している!なにもかもがスケール違いすぎて、なんか判らなくなってきているぞ!?おっ、未亜が鶴本さんになんか尋ねるようだ。


「あれ?なんかリビングが広いですね?」

「ああ、壁壊してクローゼットを取り除いてもらったから。」

「ええっ!?そんなことしていいんですか?!」

「退居するときに原状復帰すればいいって言われたのよ。」

「ええっ……。」

「狭い部屋って好きじゃないのよね。」

「っていうことはもしかしてあのベッド……。」

「ああ、いつも寝ている所よ。」


 うひゃあ、なんかすごいところに招待されたぞ!?


「鶴本さん、お忙しいのに部屋はきちんと整頓されているんですね。」

「日向夏さん、それは宥雪さんの力ね。」

「えっ!?」

「あー、ランさんって、日常生活が壊滅的なんです……。それで私が管理しています。」

「もしかして、太田さんがマネージャだったころも。」

「そうよ。太田さんが私を送ってくると片付けしてくれてね。一緒に住んで面倒見てほしいってお願いしたんだけど、太田さんは結婚してるから。」


 太田さんが前に話していた壊滅的に生活力のないトップタレントってもしや鶴本さん!?


「懐かしいですね。なにしろ配属になる前の面接で太田さんに『タレントの私生活まで面倒見られるか』って聴かれて、何のことかよく判らずに『はい』って応えたら家事能力について細かく聞かれて。まさかトップアイドル、ランさんの専属になるなんて思ってなかったですよ。」

「まあ、でも、宥雪さんで良かったけどね。これだけ全てをマネージメントしてくれる人なんてなかなかいないから。」

「そういっていただけると照れるけど嬉しいですね。そんなわけでそのままにしておくと家が大変なことになるので私が一緒に住んで面倒を見てます。」

「えっ!?虎岩さんもこちらに住んでいるんですか?」

「住んでますよー。」

「もしかして、あのベッドで一緒に!?」

「ええっ!?日向夏さん?!」

「宥雪さんは廊下側の部屋を使っているの。」

「あっ、そういえば、向こうにも部屋、ありましたね。」


朋夏さん、妄想が激しいって!


「立ち話もなんだからみんな、そこのテーブルに適当に座って。私が座る場所とかは特にないから。」


 そんなこと言われても!と思っていたらキッチンへ向かった鶴本さんに変わって、虎岩さんが俺たちの席を適宜決めて座るように誘導してくれる。


「鶴本さんのお手伝いとかしなくていいんですか?」

「早緑さんの気持ちはわかるけど、今日は皆さんゲストですから。ゆっくりしていて下さいね。いまお茶を出しますよ。」


 虎岩さんは慣れた感じでみんなにお茶を出してくれるけど、これはなんか緊張してしまうなあ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る