第330話●春学期テスト前の追い込み!
今週で春学期が終わり、いよいよ来週の月曜日からテストが始まる!月曜日の定期配信が空けた7月26日火曜日、未亜の提案で少し早めに北口のタクシー乗降場から大学へ向かうと社宅の搬入スペースへ「レモン引っ越しサービス」と書かれた大きなトラックが入るところだった。社宅の周辺は狭い道と一方通行が多くて、迂回が容易ではないんだよね。結局、2台の搬入スペース両方にトラックが入り終わるまでだいぶ待つこととなって、白山通りに出る頃にはいつもより少し遅いくらいの時間だった。これはタクシーが待っているのを確認したトラックが急いで入ってくれたからで、早めに出ていなかったらもっと時間が掛かっていたと思う。
「少し早めに出てちょうど良かったね。」
「本当だよなあ。」
「さすが未亜!」
俺にはそういうのはないんだけど、未亜はたまにこういう野生の勘みたいなのが働くんだよね。だから未亜が「今日はこうしたいな」っていったときはなるべくそうするようにしている。これはのろけじゃないよ!?
大学へ着いたあとはそれぞれの授業を受けて、ランチタイムへ突入する。テスト週間に入ることもあって6号館地下はまた人が多くなっている。朋夏さんはなんかすごい嬉しそうだ。
「朋夏ちゃん、なんか嬉しそうだね?」
「磨奈!それはもちろん、早緑様のライブツアーが発表されたからだよ!しかも四大都市を巡るアリーナツアー!すごいよね!さすが早緑様だよ!」
「朋夏は本当に好きだよね。」
「彩春はよく共演しているから冷静に見られるだけだって!」
朋夏さんは本当に相変わらずぶれないなあ。まあ、何度も繰り返しているし、お互い素性も十二分に判っているから未亜ももうだいぶ慣れて……あれ?また固まってる。そうかー、もうだいぶ経つけどまだ慣れないかー。
「さみあんのライブツアー楽しみだよね。」
「本当だよー。全部行きたい!」
「しまっちもあきっちも本当に好きだよね。」
「チケットがんばって取らないと!」
「争奪戦すごそうだもんね!」
「渋谷は2万席でしょ?まだなんとかいけると思うんだよ。問題は博多でさー。7千しかないから競争倍率高そうなんだよね。」
「あの、えっと、あれだからね、みんな頑張らなくていいからね!」
あっ、未亜が復活した。
「えっ、それって、そういうこと!?」
「今回もそういうことだから。」
「「「やった!」」」
「今度調整させてね。」
「「「判った!」」」
「朋夏と明貴子はともかく、志満も全部行くの?」
「さすがに全部は無理かなあ。でも渋谷のほかに梅田は行きたいかも。ちょうど学祭期間で休みなんだよ。彩春ちゃんは?」
「私も渋谷のほかに梅田は行けたらいいなあ。」
「梅アリ、すごいよかったよ!」
「えっ、朋夏ちゃん、もう、梅田アリーナ行ったの!?」
「実はたまたま大阪へ行く用事があってね!」
朋夏さん、梅アリのこけら落としに来てたもんなあ。関係者席が設定されているラウンジ席で開演を待ってたらいきなり現れるんだもの。あの時はびっくりしたよ。なんかバーチャルライバーのイベントが未亜の公演翌日に大阪であったらしいんだけど、直前になって一日早く大阪へ入れることになったんで、沢辺さんに急遽手配してもらったそうだ。早緑美愛の知名度とチケット争奪戦のすごさを考えると普通は無理なような気がするから、日向夏へべすというビッグネームがフル活用された感じがする。
「なんか大崎の作ったシアターアリーナって渋谷以外もすごい音響がいいらしいね。」
「うん、志満のいうとおり音響はすごくいいね!あとはVTuberが……えっと……出ているのも渋谷で見たけど、すごかった!」
朋夏さん、自分が監修した設備を使ってみた視点で説明しそうになったな!?前だとそのまま話をしていたような気がするからだいぶ自制できるようになったのかも?
「実際に使ったけどかなり良かったよ。V仲間にも評判良かったね。」
「実際に使った感想を語れるのはさすがいろはっちだね!るのっちも演劇で使ったんじゃなかったっけ?」
彩春さんも華菜恵さんも交わし方が上手いなあ。
「うん、すごい良かったよ。っていっても私はほかの舞台をあまり知らないけどね。いやあ、周囲にすごい人が多いからねえ。一歩ずつ確実に進めつつももっともっと頑張らないとって思うよ。」
「瑠乃ちゃんの活躍も楽しみにしてる!」
「……ところで、幸大、なんか死んでない?」
「うん、幸大、目の下のクマがすごい。」
「……わかる?」
「確かに目がうつろだよ?」
「いやあ、彩春さん、テスト勉強にファジケの締め切りもあって眠いんだよ。」
「あー!さては昨日、寝室へ行った後も作業やってたんでしょ!もみーにあとで報告するからね!」
「あっ!そうだ、ここに流れが判る人が!志満さん、そこをなんとか。」
「だーめ!もみーだって大変なところ、ちゃんと睡眠は確保してるんだよ!?」
「ごめんなさい……。」
紅葉さんの目が届かないところにも志満さんが光らせているから完璧だな、ここは。幸大はしばらく志満さんから怒られていたけど、睡眠は大事だもんなあ。
「なんかいろいろ面白いよね。」
「そう?」
みんなの様子を嬉しそうに眺めていた紗和さんが未亜へ話しかけた。
「うん。この半年を通じて、普段とは違った感じでみんなと過ごすことができて楽しい。授業もすごいためになっているし、みんなが大学に通っている間はいろいろな科目を受講しようかと思うよ。」
「それならよかった。」
「科目受講することにして本当に良かったよ。試験も楽しみだなあ。」
「試験が楽しみなの!?」
「だって、高校卒業以来だからね。しかも自分が学びたくて選んだ科目の理解がどこまで出来ているのかを確認できるいい機会だもの。」
「紗和のその視点はなかったよ。」
「未亜は忙しいからいろいろと大変なのかもね。」
「うーん、でも楽しいからなあ。」
「楽しいって大事だよね!あ、そうそう。危ない、忘れるところだった。大渡さんとの食事会、ようやくみんなの日程があわせられたよ!」
「おっ!いついつ?」
「9月1日の木曜日が夜みんな空けられそう。」
「予定入れておくね!」
「大渡さんがみんなと食事したいお店があるって行ってたから連絡来たら共有するね。」
「よろしく!」
みんなとの関係とはまた違った形で新しい出会いがあるのは本当に嬉しい。俺は音楽家ではないけど、言葉を使って何かを生み出しているという点では、作詞をどうやっているのか、その辺の話を聞いてみたい。楽しみだ!
――――――――――――――――
【作者より】
近況ノートにも書きましたが、次回から7話くらいイライラモヤモヤな展開が始まります。おそらく結論まで読んでもモヤモヤが残る方はいらっしゃるかと思います。この展開はだいぶ先まで踏まえての流れとなりますので、いったんは飲み込んでいただけますと幸いです。また、こうした感じの告知を近況ノートで展開しておりますので、作者のフォローもしていただければ幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます