第315話●「雨東さん家のご飯」コラボカフェ打ち合わせ

 日が経つのは早いもので、せまじょアプリの開発発表から早4日が経過した。各ゲームメディアにも大きく取り上げてもらえ、エゴサーチをしてもいい反応が多いのでほっとしている。それと駒元さんとの関係が大きく話題になっていて、会員限定配信を聞くためにスマイル公式チャンネルの有料会員になる人が増えているそうだ。いろいろなことが上手く回っているので本当にありがたい。

 授業を入れていない金曜日、未亜は朝から1階の歌唱用レッスンルームへ出かけていった。もちろん梅田シアターアリーナこけら落とし公演に向けたレッスンを予定して押さえていたものだったのだけど、その前に大きな仕事が入ってきて、今日はそちらのレッスンがメインとなっている。

 実は、一昨日、きだまきしさんから「あなただけにアンコール」という楽曲の仮歌が予告無しに突然ブラジリアさんへ届くという事態が発生した。もちろん、前に話の出ていたきだまきしさんの手による早緑美愛オリジナルソングで、なんでも5月21日に市川市でやったコンサート中、突然インスピレーションが湧き、コンサート後にホテルの部屋でギターをかき鳴らして、あっという間に仮歌まで完成させてしまったのだとか。きださんはどうもそういう所があるようで、やっぱり根っからのアーティストなのだなあ、と思う。

 さすがにきださんも忙しいし、相当先になると思うと余裕を見せていた太田さんもさすがの事態に慌てたようで、各方面との調整を行ったようだ。もともと「My dream, Your dream」と「主役」をシングルカットしようという話が出ていたこともあったので、来週には収録をして、12月には「あなただけにアンコール」を表題に3曲のインストも含めたCDシングルとして発売することになった。

 そして、話はこれだけではなかった。6月18日に有楽町の東京ユニオンフォーラム大ホールで開かれるきださんのコンサートにご招待いただいていたのだけど、なんと曲に付けられていたきださんからの「僕のコンサートで初披露して欲しいな」というリクエストによって、未亜はこの新曲をきださんのコンサートで披露することになったのだ!しかも翌19日にもゲスト出演して披露することになっている。もちろん、シークレットゲストで、この曲が出来たことも初披露するまで関係者以外には厳秘というすごい状況。なんとも面白い展開だと太田さんは大喜びしていたけど、未亜はプレッシャーが大変そうで、メンタルケアをしないとなあ。


未亜「ただいまー!」

圭司「おかえり。」


 お昼過ぎまでレッスンをしていた未亜が部屋へ戻ってきたけど、なんか朝出かけるときよりすっきりした顔をしている。作っておいたランチを食べながら話をするとやはり突如の事態にドキドキしているものの新曲がすてきだったこともあって、早くみんなの前で披露したいという気持ちのほうが上回ったとのこと。いざレッスンをしてみるとそんなにプレッシャーでもなくなったのか、この辺、やっぱり未亜も一流のアーティストなんだろうね。さすが、俺のフィアンセはすごい。


 14時少し前にランチを食べ終わると今度は二人で出かける支度を済ませる。夕方は、向学館こうがっかん三鬼みきさんとの打ち合わせ。「雨東さん家のご飯」がかなり好評で、向学館さんには実際に食べてみたいという要望が多数届いているのだとか。その結果、連載開始半年も経たずにコラボカフェが決まるというすごい状況となった。まだ書籍化もしていないのだけど、向学館も大崎も問題ないなら俺としても問題ない。未亜が一緒に付いてくるのは、一日店長的なことをするだけでなく、ゲームメイトさんが運営しているゲームメイトカフェにおける調理監修を担当している方が、試作品を作って下さることになっているので実際に家で食べているものと遜色がないかを確認するためだったりする。

 出かける支度が終わったタイミングでスマホへ華菜恵さんから電話が入る。


圭司「あっ、華菜恵さん。」

華菜恵『たかっち、おつかれー!いま授業が終わったから家に戻るよ。』

圭司「了解。よろしくね。」

華菜恵『いえいえー!』


 今日は華菜恵さんが板橋のゲームメイトカフェ本社まで送ってくれることになっているのだけど、大学から電話してきたからいつもみたいな感じなんだろうなあ。華菜恵さんはメリハリの付け方が本当にすごい。準備だけして待っていると15時頃に巣鴨駅へ着いた、というTlackDMが届いた。地下3階のエレベーターホールで待っている旨を送って、未亜と一緒に降りると少しして華菜恵さんがエレベーターから顔を出す。


華菜恵「おまたせ!」

圭司「よろしくね。」

未亜「よろしくー!」

華菜恵「よろしくされるー!」


 助手席に未亜、後部座席に俺が座って、出発するも10分ちょっとで着いてしまった!


華菜恵「じゃあ、私は大学で瑠乃を拾って御苑に行くから。太田さんはもう中にいるみたい。」

未亜「頑張ってね!」

華菜恵「うん、ありがとう!」


 本社ビルの受付へ向かうと太田さんがちょうど降りてくるところだった。太田さんの誘導で調理試食室なる部屋に入り、ゲームメイトカフェの総支配人である油井ゆい英子はなこさん、総料理長の永野元えのもと岳晃たけあきさんと初めてお目にかかる。もちろん、三鬼さんも同席されている。

 名刺交換もそぞろに油井さんと永野元さんは最後の仕上げに入って、見本となる料理が完成した。品数が多いのでみんなでわけあって少しずつ味わう。


未亜「あっ!これ、いつも食べているのです!」

圭司「うん、私が作る料理より美味しいですね。」

永野元「そういってもらえるとうれしいですね!」


 やっぱりプロの料理人さんは違うよなあ。一通り食べたあと、ゲームメイトの永野元さんから「実はドリンクとデザートのレシピがまだ連載に載っていないのですよね。出来ればその辺も提供いただけると助かります。」というリクエストをいただく。今月分はすでに提出済みなので、7月分でその辺をフォローすることにして、紹介するレシピの連載順をこの場で変更してしまう。もともとデザートも飲み物も連載での紹介を予定しておいてよかったなあ。この辺は後日お伝えすることにして打ち合わせは無事に終了。さて、9月のコラボカフェ実施に向けて、新しいレシピの開発もがんばらないとな!

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