第313話●早緑美愛公式チャンネル定期配信第七回の前に
24日に発売されたせまじょのコミカライズ2巻は白子さんから27日に重版の連絡が来た。元々予約がけっこう入っていたこともあって、発行部数が1巻の時より多かったのだけど、想定以上の売れ行きになったようで、本当にありがたい。
約一週間を経た30日、いよいよせまじょのアプリゲームが開発開始と正式発表される。なんと未亜の定期配信で情報を初出しして、配信終了と同時にKAKUKAWAとオクダイナンコエンタテインメントのニュースリリースおよび雨東晴西公式サイトのお知らせにて発表という段取りだそうだ。てっきりニュースリリースを出すだけだと思っていたので、予想外に大きな話でビックリしている。
「もちろん、先生が出演するからよ。」
「あっ、そういうことなんですか。」
「もちろん。美愛だけではさすがにここでの発表には出来ないわよ。先生が出演する予定になっているから組めた感じね。」
事務所に顔を出して最初にそんな感想を漏らすと太田さんがあっさり回答を教えてくれた。確かに本人出演ならばそういうことになるのかあ。
「ちなみに今日はあと2人ゲストがいるからね。」
「えっ、そうなんですか!?」
「もうすぐ来ると思うから2002で待ってて。」
「判りました。」
今日の楽屋はいつもと違って、2002が割り当てられている。2001がきっとそのゲストさんなのかもなあ。ちなみに未亜は大学の授業終わりで事務所へ一緒に来たあと、梅田シアターアリーナこけら公演のセトリにあわせてスタジオビルでレッスンを受けている。今回は熱心なファンだけでなく、地元の有力者やプロジェクトに関わった来賓なんかも多く見に来るので、かなりオーソドックスなセットリストが組まれていた。「アイマイ」「Magic Of The First Time」「私発あなた行き」という流れでライブが始まり、渋谷バラードからの「主役」「カーテンコール」がアンコール前ラスト、そしてアンコールに「神様が微笑む森」が来るっていつぶりだろうなあ。オーラスは「My dream, Your dream」だけど、今度「主役」とあわせて両A面でシングルカットしようかという話が出るくらいものすごい人気だそうだ。もしシングルカットされると早緑美愛としては2枚目のCDシングルということになる。気の早いワイドショーなんかでは、「この曲で今年の紅白確定」なんて報道されているようだ。でも、太田さん曰く「こんな早い時期に確定なんて出ないわよ。出演そのものがランみたいな存在感のあるシンガー以外はギリギリまで未定なんだから。」とのこと。まあ、そうだろうなあ。
控え室で仕事を進め、ふと時計を見るとそろそろ18時になろうかというタイミングで未亜が戻ってきた。一緒にご飯を食べながら二人で台本の読み合わせをしているとドアをノックする音が聞こえる。
「お二人とも顔合わせとリハをしたいのでM01までお願いします。」
「「判りました!」」
ノックしたのは華菜恵さん。いつもだと控え室でリハをするのだけど、今日はゲストもいるからスタジオに入ってやるんだなあ。
「おはようございます!」
「早緑さん!おはようございます!」
「先日ぶりですね。よろしくお願いします。」
M01スタジオの打ち合わせスペースにいたのはせまじょの主役である聖女オリーブ役を務めて下さっている
「大宮さんもご出演なさるんですね。」
「本来なら我々から出演依頼をさせていただいて、ギャラもお支払いする所なんですが、大崎さんのご厚意で開発開始配信をしていただけることになったので、私がお邪魔する形になりました。」
「そうだったんですね。」
「はい。ちなみに我々の公式チャンネルでせまじょアプリの配信をする時は今後も私は基本的にMCとして出演します。」
「あっ、そういうことですか。社員さんがMCってすごいですね。」
「うちの伝統ですね。ドルプロの坂下とか金剛撃の原畑とかが自分の所の宣伝で出まくった結果、ユーザーさんから親近感を持ってもらえたんで、なんか責任者は出演することになっています。」
各社いろいろな伝統とか流れがあるんだなあ。
「雨東先生!」
声を掛けてきたのは
「駒元さん、ご無沙汰しています。」
「こちらこそ!アニメでいただいた縁がまさかアプリゲームにまでつながると思わなくて本当にありがたいです。オーディションでは私も選んで下さってありがとうございました!」
「いえいえ。私が選んだわけではなくて、岡田さんに感想を伝えただけですので。」
「岡田さんからはそれが決め手だったって伺っています。原作もコミカライズも大好きだった作品、しかもグッズまで買い込んでいたオリーブちゃんにアプリでも魂を吹き込めるなんて本当に嬉しいんです。」
「そういっていただけると作者冥利に尽きますね。」
「駒元さん、先生にお願いがあるんですよね?」
「あっ!美愛ちゃん!?」
「えっ、どんなことですか?」
「あの……出来ればこの本にサインをいただきたくて……。」
「先生OKよ。共演者へのサービスは重要だからね。」
「太田さん、さすがです。じゃあ、書かせていただきますね!」
駒元さんからサインペンを受け取り、本編と外伝、合計5冊にサインを書いていく。
「ありがとうございます!」
「いえいえ。」
「よかったですね!」
「うん!美愛ちゃんありがとう!」
二人の関係がずいぶん近いな、と思ったら「赤い月と青い太陽」で共演していて、駒元さんの演じている「ハープ奏者マウリツィア」は未亜の演じている「吟遊詩人イヴェット」と一緒に出てくることが多いのだとか。駒元さんは今年31歳になるということで未亜が敬語なのね、なるほど。
「それでは、そろそろ皆様スタジオにお入り下さい。雨東先生とゲストのお二人はあちらのブースにてお願いします。」
「「「「判りました。」」」」
よし、定期配信だな!
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