第285話●履修登録、ラジオの打ち合わせ、そしてBSの初収録
新年度が始まってすぐだけど、4月2日から履修登録が始まる。今日は、午前中に来週から始まるラジオの打ち合わせ、午後からBSの収録があるので、早めに朝ご飯を食べて、その前に登録してしまおうということになった。
圭司「去年がウソみたいだよなあ。」
未亜「本当だよね。
2年生からは第二外国語がなくなって、英語だけになるのだけど、強制割り当ての時間は、嬉しいことに未亜と一緒の時間になっていた。
語学の時間が確定しちゃえば、なにを受けるかはこの前みんなで決めたので、あとは淡々と登録申請をするだけ。ちなみに未亜と話をして、マーケティング特講は二人とも見送った。もう少し基礎を固めてから受講した方が身になりそうだという判断。なんとなく今年だとまだ消化しきれないような気がしたからね。
英語が入ってしまった時間を避けながら改めて時間割を入れていくと金曜日がまるまる空いた!
履修登録を済ませたあと、モーニングを食べようとしたところで未亜と同時にRINEの通知音が鳴った。なんだろうとスマホを見ると百合から仮所属になれたという連絡だった。
未亜「百合ちゃんの仮所属稟議、無事に通ったんだね。」
圭司「大学へ入学したら無条件になれるというわけでもないだろうから、まずは良かったよ。」
未亜「あっ、百合ちゃん、シェアハウスの費用、お義父さんに出してもらうことにしたんだ。」
圭司「あー、父さんからこの前連絡来てたけど、なんか、俺と同じ所に住めることが決まったらもともと出すつもりだったみたい。その辺は心配しなくていいって百合を説得したそうだよ。実際には本所属にならないと住めないけどね。まあ、アイドルとしてある程度活躍できればその辺も自分で負担できるんだろうなあ。」
未亜「そうだね!それくらい活躍している百合ちゃんを見るのが楽しみ!」
そんな会話をしながらブレックファーストは未亜が作ってくれた。こうやってお互いにフォローしあえるのは本当にほっこりする。食事のあとはすぐに家を出てタクシーで浜松町へ向かう。移動中にスマホでニュースを確認していると未亜のサイトが更新されていた。昨日は特に話がなかったけど、渋谷公演の有料配信は大崎の新しいサービスを利用したものだったのか!どうりで詳細がなかなか公開されなかったわけだ。
圭司「未亜はこれ知ってる?」
未亜「ん?……あっ、これかー。昨日、日付変わったら有料配信のお知らせ出すって帰りに聴いてはいたよ。なんかこんなすごい話だとは思わなかったけどね。」
太田さんは未亜にもあまり詳細は教えていなかったんだなあ。まあ、割と大きいニュースで、下手すると株価にも影響が出そうな内容だもんな。それにしても早緑美愛の公演が先行こけら落とし配信になるとか太田さんはなにをやったんだろう?きっと聞いてもニヤニヤするだけで答えてくれないんだろうなあ。
二人「「おはようございます。」」
太田「二人とも来たわね。」
文明放送のロビーで太田さんたちと合流する。俺たちの番組のディレクターは、未亜のオフシーズン番組に引き続いて、
「初回放送だけは30分拡大版で生放送です。その関係で一週遅らせて番組スタートなんです。」
未亜「なるほど。この時間のスケジュールが押さえられているのはそういうことだったんですね。この時間に収録かと思いました。」
「収録は改めて翌週ですね。そちらも既に押さえさせていただいているかと。」
未亜「はい、2回に分けるのかと思っていました。」
「基本は1回にまとめて収録します。」
圭司「判りました。」
「あと聴取率が高かったり、リスナーからのメールが多かったりすれば、イベントも検討します。」
未亜「それは面白そうですね!」
「前の番組は期間限定だったのでそこまでの予定はありませんでしたけど、こちらは好評なら何年でも続けていきたいので、頑張りましょう。」
二人「「はい!」」
ちなみにこの前の最終回では未定だったスポンサーには、「ラミ」や「ヴーム」といった軽自動車で有名なカンハツさんが付いてくれるのだとか。その関係で正式な番組名は「KANHATSU Presents 早緑未亜・雨東晴西 fondly radio」になったそうだ。そんな大企業が付いてくれるなんて驚きだけど、来週の初回生放送には広報の方がお見えになるとのことだからしっかりあいさつしないとなあ。
ラジオの打ち合わせが終わり、次はBSの初収録があるので、太田さんの運転する車で大崎エンタテインメントの品川スタジオへ向かう。未亜はこの前の事前配信収録の時に訪問しているそうだけど、俺は初めてなので楽しみ。そして、自分のアバターを見るのも初めてなんだよね。移動中に車中でお弁当を食べながら太田さんからも百合が仮所属になったことを教えてもらったけど、いい話は何度聞いても嬉しい。
助手席に座っている峰島さんは、先ほどからいろいろと質問している。そのうち、峰島さんが運転する社用車に乗ることもあるのかも。そういえば、峰島さんが運転する時ってどんな感じになるのかな?ちょうど会話が途切れたみたいなので、聞いてみよう。
未亜「今後、峰島さんに送迎していただくこともあるんですかね?」
太田「そうよー。前に話したと思うけど、共用の社用車があるから智沙都にはそれを使ってもらう感じね。まあ、共用といっても実際はほとんど専用みたいなもんだけどね。」
圭司「そうなんですか?」
太田「一日中使ったあと、自宅まで乗っていって、翌日も朝から車で出勤して、なんてやっているから結局他の人が使うことはほぼないのよ。スタジオビルの地下駐車場も割と車止まってないでしょ?」
未亜「確かにそうですね。」
太田「ディレクターになるタイミングで割り当てられる社用車って、共用車として使ってもらっていたのをそのまま使うケースがほとんどだしね。」
圭司「じゃあ、峰島さんもそうなるかもしれないんですね。」
太田「共用車も少しずつ新しい社用車に入れ替わっているんだけど、新しい共用車が割り当てられればそうなるかな。」
未亜「いままでの共用車になるか、新しい共用車になるか、自分で決められるんですか?
太田「それは純粋に運。」
圭司「完全ランダムはなかなか大変ですね。」
太田「まあ、最終的には全部新しい車になるからね。」
未亜「そういえば、前の社用車も結構大きかったですよね。」
太田「営業用のバンだからね。車高はないけど長さはけっこうあるわね。この車よりは短いけど。」
智沙都「大きな車の運転には慣れていないですが頑張ります!」
太田「5月には独り立ちして欲しいから頑張ってよー!」
智沙都「は、はい!」
太田さんってけっこうスパルタなのかな?華菜恵さんの時もそんな感じだったよね。まあ、でも1年掛けてじっくり研修しているそうだから最初からそんな感じでもいいのかもしれない。
車は順調に進み、13時過ぎに大崎エンタテインメント品川スタジオへ到着、「バーチャル01スタジオ」へ入るとまずはモーションキャプチャ用のスーツへ着替えを済ませてしまう。着替えおわり、スタジオに戻るとまだ未亜も朋夏さんも彩春さんも来ていなかった。スタジオに入ると慧一が既にモーションキャプチャ用のスーツでスタンバっていた。
慧一「雨東さん、お疲れ。」
圭司「マスケイさん、もう来てたんだね。」
慧一「日向夏さんと一緒に入っていたよ。」
沢辺「あっ、雨東先生、先にアバター確認しちゃって下さい。」
圭司「沢辺さん、判りました!マスケイさんはもう確認したの?」
慧一「いや、俺もまだだな。」
圭司「じゃあ、同時に確認する感じだな。」
副調整室のモニタには二体のアバターが映し出されている。慧一と俺にそっくりだ!
圭司「おおっ!なんかすごいですね!」
太田「先生にあまり寄せすぎても良くないと思ってね。デフォルメした感じでお願いしたの。」
沢辺「マスケイさんはこっちです。」
慧一「これはすごい!沢辺さん、ありがとうございます。」
沢辺「いえいえ。雨東先生と同じでデフォルメタイプにしてみました。ただ、マスケイさんは歌い手ライブとかにも出演しているので、先生よりは似せる方向にしてあります。」
慧一「配慮、ありがたいです。」
女性陣三人も入ってきて、アバターに感心している。もうすぐ14時、よし、いよいよ収録だ!
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