第284話○新しいマネージャさん!

 圭司と一緒に作る会社の手続きは無事に終わった。まさか、信用金庫の理事長さんが私のファンだとは思わなかったけど、いろいろなところにファンがいて下さるのは本当にありがたいよね。


 豊島信用金庫の本部を出て、安田さんとわかれたあと、巣鴨駅前でタクシーを拾って、新宿の事務所へ。今日は13時から事務所で太田さんの下に着く新しいアシスタントマネージャさんの紹介がある。今日初めてお目にかかるので、どんな方なのか楽しみ。

 事務所の地下から指定されていた社内中会議室B01へ向かう。普段は7階のミーティングルームか2階から4階にある社外会議室ばかりなので、13階にある社内会議室を使うのはなかなか新鮮な感じ。


未亜「おはようございます!」

圭司「おはようございます。」


 圭司と二人で中に入ると既に紗和と瑠乃、明貴子、心菜ちゃん、百合ちゃんが待っていた。


未亜「あっ、百合ちゃん、あらためて大学入学おめでとう!」

百合「ありがとうございます!これからも頑張るのでよろしくお願いします!」

未亜「うん!」


 席に座ると隣に座っていた紗和から話しかけられる。


紗和「この前は大渡さんとの食事会、流れちゃってごめんね。」

未亜「いいよいいよ、仕方ないもん。」


 3月28日に定期配信が終わったあと、紗和がセットしてくれて、大渡さんと食事をすることになっていたのだけど、大渡さんの都合が悪くなってしまって、延期になっちゃったんだよね。あまり気にしないでいいんだけどなあ。


紗和「なんか大渡さん、曲の依頼が立て込んでいるみたいで、夏休みあたりでまた調整するよ。」

未亜「うん!わかった!雨東さんもいいよね?」

圭司「そうだな。夏休みにゆっくり話した方がいいな。」


 大渡さんとの食事会も楽しみだね!


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 みんなでしばし雑談をしていると13時になりそうだというタイミングでドアがノックされて太田さんが入ってきた。あとから初めて見る女性、そして最後に華菜恵が入ってくる。あの人が新しいアシスタントマネージャさんかな?


太田「みんなおはよう。」

全員「「「「「「「おはようございます。」」」」」」」

太田「今日はみんな時間取ってくれてありがとうね。」


 太田さんたちは私たちの対面側に座った。初見の女性はなんかすごいガチガチになっている。大丈夫かな?


太田「じゃあ、手っ取り早く紹介しちゃいましょう。はい!」

女性「……えっ!?」

太田「ほら、自己紹介よ、まずは名前を名乗るところからね。あっ、座ったままでいいわよ。」

智沙都「あっ!はい!すみません。皆様初めまして、峰島みねじま智沙都ちさとと申します。配属されたばかりのアシスタントマネージャですが、よろしくお願いします!」

太田「峰島さんです。私はもう智沙都って呼んじゃっているけどね。それともう一人!」

華菜恵「あらためて沼舘華菜恵です。今日から短時間社員になりました。引き続きよろしくお願いします!」

太田「華菜恵はみんな知ってるわよね。今年度は三人体制でみんなのマネージメントをしていくのでよろしくね。」

全員「「「「「「「よろしくおねがいします!」」」」」」」

太田「そうしたらみんなも自己紹介をお願い。私から補足するから。じゃあ、一番奥の朱鷺野先生から。」

明貴子「はい!朱鷺野澄華です。作家やっています。よろしくお願いします。」

太田「朱鷺野先生は大崎の文化人ではトップランク。作家に限ると一番ね。超ベストセラー作家だし、読んだことあるでしょ?」

智沙都「はい!ドラマもよく見てます!」

明貴子「ありがとうございます!」

太田「じゃあ、隣おねがい。」

瑠乃「私は柊瑠乃です。デビューしたばかりですがよろしくおねがいいします!」

太田「瑠乃は朱鷺野先生の大親友で、デビューして間もないのにMeTubeの登録者数がもう5万人超えてる。確認しておいてね。」

智沙都「はい!」


 えっ、瑠乃のチャンネル、もうそんなに登録されているの!?


心菜「上水ここなです!まだまだ駆け出しのアイドルですがよろしくお願いします!」

太田「ここなはシンガーとして急成長中。グラビアを減らしているから露出を増やすために今度公式チャンネル作る予定。あっ、そうそう、瑠乃も含めて動画編集のフォローをお願いね。」

智沙都「判りました!」


 心菜ちゃんにも公式チャンネルが出来るんだ!楽しみだなあ。


百合「初めまして、私は高倉百合です。御指導よろしくお願いします!」

太田「百合は雨東先生の妹さん。高校卒業して、大学生になったんで、特待レッスン生から仮所属へ移行するんだけど、仮所属の契約書をさっき稟議に回したから明日の午前中には決済下りると思う。本所属時の芸名は早緑さみどり優璃ゆりになる予定。」

智沙都「デビューに向けての支援、頑張ります!」


 百合ちゃんと共演できる日が楽しみだなあ。


紗和「儘田海夢です。音楽家です。よろしくお願いします。」

太田「ママダPこと儘田先生はよく知ってるでしょ?」

智沙都「はい!学生時代に良く聴いていました!お目にかかれて嬉しいです!」


 さすが紗和!あっ、私の番だ!


未亜「初めまして!早緑美愛です!よろしくおねがいします!」

太田「美愛もよく知ってるわよね。」

智沙都「紅白見てました!マネージメント頑張ります!」

圭司「雨東です。作家です。ご存じか判らないですが、よろしくお願いします。」

智沙都「アニメではまりました!頑張りますのでよろしくお願いします!」

太田「自己紹介は終わったわね。何か確認したいこととかあれば教えて。」

圭司「あっ、それなら私からひとつ相談が。」

太田「雨東先生、みんながいるところでも問題ない話?」

圭司「むしろここで確認したいです。」


 圭司はそういうと磨奈の話を始める。磨奈との関係性を端的にわかりやすく説明していく。明貴子もそうだけど、作家の二人はやっぱりこの辺の説明が上手いよね。


圭司「儘田さんがうちの大学に科目履修で来るので大学が始まる前に我々の状況について説明しておいた方がいいかな、と。」

太田「そうね。前にやったみたいにうちの会議室使えばいいと思う。」

圭司「そうしたら彩春さんと瑠乃さんにここへ連れてきてもらう感じにしようかと思います。」

太田「うん、正体がもう既にわかっている人が案内するのが一番いいわ。そうしたら雨東先生からの要請ということで、大石くんと沢辺さんには私から伝えておくから日取り決まったら教えてね。」

圭司「はい、判りました。」

太田「ほかにはない?……そうしたら私から話があるの。えっと、まず、会社支給のスマホを貸与するかもっていう話は一旦ペンディングになった。まあ、ぶっちゃけると費用がかかりすぎるっていうことでね。」


 太田さん、ぶっちゃけすぎじゃない!?


太田「まあ、そのうちするかもだけど、とりあえず4月からはアルバイト以外の社員に支給して様子見。また、状況が変わったらみんなにも共有するわね。それとこっちは割と大きな話で、実はみんなの住んでいるマンションで別々の階を自由に行き来OKにしている件が、内部監査室からセキュリティリスクだって指摘されちゃってね。今後はNGに戻すからよろしく。ストーカー騒動も収まっちゃったからまあ仕方ないんだけど。」

明貴子「それはいつからですか?」

太田「大石くんも沢辺さんも今日告知しているはずだから明日から元に戻す感じ。」

明貴子「判りました。」


 あー、特例中の特例だもんね。元に戻すのは仕方ないかも。


太田「それでね。一つ提案。この指摘が出た時点で笹原さんを含めて話し合ったんだけど、あなたたちは相互にフォローし合うことで、仕事が増えている側面もあるから会社としては極力交流がしっかり取れるようにしておきたいと考えていてね。それで、巣鴨駅のそばにもうすぐ完成する社宅に転居するのはどうかなって。」

瑠乃「そんなところに社宅が出来るんですね。」

太田「そうなの。もともと住菱重工の廃止になった社宅跡地と住菱グループ創業者の墓所がある土地なんだけど、おととし社宅全体と墓所の一部の土地、それと墓所の空中権がセットで売りに出てね。それをうちが買い取って、改めて建て直している感じ。」

圭司「間取りはどんな感じですか?」

太田「基本は1Kなんだけど、3LDKとか2LDKとかの部屋も上の方に用意してある。」

未亜「でもタレントさんたち住むんですかね?私たちの住んでいるところはずっと空きっぱなしだったんですよね?」

太田「前にも誰かに話したような気がするけど、うちの社宅はタレントだけじゃなくて社員も住めるのね。みんながいま住んでいるところは社用車を止めておく駐車場がないから社員は住めないんだけど、巣鴨の社宅はちゃんと駐車場も用意してあるから、タレントが住まなくても住みたがる家族持ちの社員はけっこういるという判断ね。」

明貴子「なるほど。」

太田「負担金はちょっと上がっちゃうんだけど、みんなにとって悪い話じゃ無いと思うから相談してみて。所在地とか負担金とか間取りとかの資料はあとでTlackに送っておくから。」

全員「「「「「「「判りました。」」」」」」」

太田「じゃあ、今日は解散。」

未亜「ええっ、もうですか!?」

太田「そうよ。このあと、美愛もスケジュール目一杯入ってるでしょ?ここなも瑠乃も予定があるからね。」

未亜「確かに!」

太田「じゃあ、智沙都は私についてきてね。今日はこのあと瑠乃がジャバテレでやってる江戸30えどさんぜろさんのコント番組に出演するからその間にジャパテレさんの各部署に紹介する。さっきもいったけど名刺は箱ごと持ってきてね。」

智沙都「はい、午前中はすみませんでした。」

太田「まあ、朝だけで50枚も使うなんて思わないだろうから仕方ないわよ。私と一緒にあいさつ回りをするときは一カ所で一ケースなくなるくらいの気持ちでいるといいわね。それで名刺を1万枚刷ってあるんだからね。」

智沙都「判りました!」


 新人マネージャのあいさつってそんなに名刺使っちゃうんだ!?すごいなあ。


太田「華菜恵はいつも通りね。」

華菜恵「はい!」


 圭司は自宅に戻って原稿を進めるとのこと。紗和も明貴子も戻るということで、三人で帰ることにしていた。私はこのあと夕方から日刊ジャパンスポーツの取材、そのあとは19時からMetropolitanFMの「金曜日の祝祭」という番組に生出演。新年度も頑張るぞ!

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