第260話○紗和と一緒に授業を受けたい!
ライブレッスンの初日は滞りなく終了したので、高揚した気分のまま、家へ帰る。
「ただいまー!」
「おかえり!」
圭司と軽めのキスをして、いったん自分の部屋に入ってルームウェアを取り出し、脱衣所で着替えてしまう。ダイニングに入るとすごくいい香りがしている。
「これはシチュー!?」
「そうだよ。ジャガイモとにんじんが安かったんだ。」
「おお、おいしそう!」
「スーパーのベーカリーコーナーに美味しそうなバケットが売っていたから買っておいたよ。」
「いいね!」
圭司の作ってくれたシチューは美味しかった。バケットもさすがに彩春の実家には負けるけどけっこう美味しい。やっぱりフィアンセの料理ってひと味違うよね!4月に始まる料理の連載は本当に楽しみ。実際に始まったら、定期配信で「私は毎日こんな美味しい料理を食べてますよ」って宣伝しちゃおう!
食後にダイニングでコーヒーを飲んでいたら、圭司が「ちょっと待っててね」といって席を立った。なんだろう?戻ってきた手には大学の履修要覧と
「実は改めて物語を書くっていうことを今日考えていたんだけどね、歌とかダンスとかと違って、物語の執筆って体系だった理論がないんだよね。」
「『小説の書き方講座』みたいなのってよく見かけるけど?」
「うん、俺も昔、あの辺を受けてみようと思って調べたんだけど、内容も方針もバラバラなんだ。」
「そうなんだね!?」
「だけどこれから物書きとして専業を視野にしている以上は、表現なんかの引き出しを増やして物語を書くということの土台をいまからしっかり固めたいと思ってる。」
「なるほどね。」
「それで、今日調べていたら経営学部に所属していても文学部の科目を一部受けられることが判ったんだ。」
「えっ、そんな制度あるの?」
「うん、『他学部他学科開放科目』っていうんだけど、
「それはすごいね!」
「いま検討しているのはこの三つの科目。」
圭司が「日本文化表象」「フランス文化・文学研究」「ドイツ文化・文学研究」の概要を説明してくれる。
「ねえねえ、これって、私が作詞するときとか海外物の朗読劇とかに出演するときにも役立ちそうじゃない?」
「そうか!そうだな!」
「よし、私も一緒に受ける!せっかく高い学費を自分で出して大学に通っているんだから有効活用しないともったいないよね。」
「うん、大賛成。」
「そういえば、紗和が科目履修生の試験受けるっていっていたけど、どこの学部なんだろう?」
「聞いてみるといいかもよ。」
「そだね!」
紗和にTlackでDMしてやりとりしたら、哲大にはもう既に一回相談しに行ったそうだ。哲大の入試課によると基本的に好きな学部の科目をそれぞれの学部の設定した制限の範囲内で受講出来るけど、それぞれの学部での単位になるので、将来もし哲大へ入学したときは、進学した学部の科目しか事前受講の認定がされないのだとか。あと、出願時に当日だけ見せてもらえる履修要覧を見ながら入試課の人と相談しつつ受けたい科目を記載しないといけないルールになっているそうだ。
圭司と私が他学部他学科開放科目で受ける予定の科目を送ったところ、「日本文化表象」は受けようと思っていたんだって!あとは基盤教育科目とかを候補にしているみたい。
儘田海夢 21:05
広くいろいろなことを勉強したいなら基盤教育科目がいいんじゃないかって勧められたんだ。
早緑美愛 21:06
履修要覧ってもらえるの?
儘田海夢 21:06
いや、もらえなかった。参考資料っていうことで見せてはもらえたんだけどね。
早緑美愛 21:06
経営学部ので良ければいつでも見せるよ!
儘田海夢 21:07
やった!
早緑美愛 21:07
海夢が選んだ科目、未履修だったら一緒に受けたいな。多分みんなも一緒に受けたいと思っているよ。
儘田海夢 21:07
そういってくれると嬉しいなあ!出願は3月8日だからそれまでに相談に乗って欲しいかも。
早緑美愛 21:08
いいよ!せっかくだから1803に集まって、決めてもいいかも!へべすにも話していいかな?
儘田海夢 21:08
もちろん!なんかワクワクするね。
ついに楽曲制作用から常設交流用になったへべすTlackに私からこの話を流したら、どうやら3月5日の夜なら土曜日だけど、同じマンションのみんなの都合があうみたい。残念ながら、連載締め切りが近い紅葉と志満、イラストの依頼締め切りに追われている幸大くん、アイドルフェスに出演する心菜ちゃんは不参加だけど、それ以外のメンバーは19時くらいから1803を使ってみんなで食事をしながら相談会をすることに。私も含めて日曜日がたまたまみんな遅めの始動だから出来る幸運に感謝!日々、楽しみが増えていて本当に嬉しいよね!
そして、慧一くんからストーカーの件についても報告があった。とりあえず山は越えたようで何よりだよ……。
みんなとのやりとりのあと、いつものように二人でお風呂に入ってからダイニングに座って「ヤンデレ聖女ってなんですか!?私は普通の聖女ですよ!?」のあらすじを読ませてもらう。ものすごく引き込まれるあらすじがまとめられていてものすごい楽しみになる。あまりに面白かったんで略称まで決めさせてもらっちゃった!
そのあとはソファーでコーヒーを飲みながら特に話をすることもなくくっついてまったり過ごしていたら、圭司が「話があるんだ」とのこと。なんだろう?
「3Daysライブと渋アリこけら落としフェスのあとって、長めのオフになっているじゃない。」
「うん、久しぶりに長めの休みをもらったよね。」
「せっかくだから前にブルーレイの収録で使わせてもらった大湧苑さんの最上階客室とレンタカーを1泊2日で予約したんだ。」
「えっ!」
「この前はあまりのんびり出来なかったけど、今回はゆっくり泊まって、のんびり過ごしたいなって思ってね。……その、あと、実は思い出の場所で、もう一つ思い出を作りたいなあ、とか思っているんだ。」
それってもしかして……。この前はお互い緊張しちゃって上手くいかなかったけど、それを踏まえて今回はちゃんと準備もしっかりしてくれて……。圭司は私の心に寄り添ってくれるなあ……。嬉しい……。
「……うん!楽しみ!」
「そか、よかった。」
「よし!ライブとフェス頑張るよ!」
「楽しみにしているよ。」
「うん!任せて!」
これは本当に嬉しい!頑張るぞ!
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