第十七章 早緑美愛ライブ「My dream, Your dream」有明公演

第269話○有明公演3Daysライブ前日です!

 今日はいよいよ3Daysライブ前日!金曜日はラジオの日なのだけど、ライブのリハがここにしか入れられないので、昨日のうちに収録をしてきた。ラジオはいよいよ来週が最終回ということで、30分の拡大生放送ということになっている。番組が終わっちゃうのは残念だけど、とても楽しかったから、またラジオのお仕事がもらえるように頑張らないと!


 前日リハーサルは昼過ぎから。横浜公演では全てが突貫だったので、準備が整わなかったところも多かったけど、今回は準備万端。一番違うのは背景のスクリーンは私の姿を流すのではなく、イメージ画像を投射することになっている点。もちろん、曲ごとに変わる仕様になっていて、曲の雰囲気を盛り上げてくれる。これが出来るのは比較的大きな会場なのにステージと客席の一番後ろまでが近くて、ステージをはっきり見てもらえるから。ただ、アップで見たいというお客様のためにステージ両脇には大きなモニタが用意されていて、そちらには前回同様私たちの姿が映ることになっている。

 今日は午前中に圭司と会場へ入って、昨日から今日の午前中一杯掛けて行われる設営風景を見学させてもらう予定だったのだけど、圭司は急遽KAKUKAWAへ行くことになったので、私一人で向かうことになった。


「おはようございます!」

「美愛、おはよう。」


 あらかじめTlackで連絡しておいたので、バックステージパスを見せて関係者入り口から会場へ入ると太田さんが待ち構えてくれていた。


「ちょうどいいタイミングかも。アリーナの座席設営が半分くらい終わって、映像のテストとかをはじめているわよ。」

「おおっ!」

「先生は見られなくて残念だけど、KAKUKAWAさんで、いまとてもいい話をもらっているはずだから。」

「そうなんですね!」

「ええ。先生がこっち来たら聞くといいわよ。」

「はい!」

「見学終わったら、お弁当を用意したから食べておいてね。そのあと着替えて、改めて特典映像のために主催者控室にあいさつしに来るところから撮影するのでよろしく。」

「判りました!」


 実は今回のライブも映像作品としてブルーレイ化されることが既に決まっている。バックステージの映像は特典としては定番だよね。今回は前日リハの様子も特典映像になるからその辺は大変だけど。楽屋には寄らずにそのまま、客席のあるフロアへ案内される。まだ設営中のアリーナは立ち入れないので、今回関係者席となる4階席に誘導された。


「すごいですね!ステージがすごい近い!」

「ここの最大の特徴だからね。」

「お客様もライブをすごい楽しんでもらえそうですね。」

「だと思うわよ。」

「あー、ああやって、設営してくださっているんですね。」


 目線をアリーナに落とすとステージ側はもう設置が終わっていて、後ろの方で作業しているところだった。


「このアリーナはアリーナ席も基本的に座席が常設なんだけど、前日までどこかのファッションメーカーがインハウス展示会をしていたらしくて、座席が撤去されていたから設営する必要があったのよね。」

「そうなんですね。」

「まあ、座席の設置はシアター側がやってくれるからうちは関係ないんだけど。」


 しばらく眺めていたけど全然飽きない。これだけのスタッフさんが私のライブを支えてくれているのだと思うと本当に感謝しかないよね……。


「じゃあ、そろそろ、入りの撮影しちゃいましょうか。」


 もと来た通路を戻り、楽屋のほうへ連れて行かれる。


「楽屋はここよ。」


 太田さんの案内で楽屋に入る。イプロプラスアリーナもすごいきれいだったけど、ここもものすごいきれいな楽屋だ!


「私は主催者控室で事務作業してるからオフエクセルさん支給の衣装に着替えてウイッグ付けたら呼びに来てね。」

「わかりました!」


 楽屋に用意されていた前日用の衣装に着替えてウイッグを付けてから主催者控室へ顔を出し、太田さんに声を掛ける。太田さんが無線で何やら呼びかけると設営の様子を撮影していたスタッフがやってきて、入りの撮影。特に問題なくすぐに完了する。


「そういえば、華菜恵はいないんですね。」

「今日は事務所で留守番してもらっている。明日は私のデスクから荷物を持ってきてもらって、あとは3日間こっちよ。」

「なるほど!」

「そうしたら楽屋でお弁当食べて、着替えたら声を掛けて。」


 楽屋に戻り、用意されていた仕出しのお弁当を食べてからトレーニングウェアにさっと着替えてしまう。もちろん、これまでのライブと同じく、ブーツとウイッグだけ本番仕様。


「太田さん、お待たせしました!」

「ちょうどいいタイミング。バンドメンバーが音出しして確認はじめてる。」

「判りました!」

「いまは13時少し前ね。じゃあ、ステージまで案内するわ。」


 そこからは太田さんの案内でステージ袖へ。袖でいったん準備運動をした上で、マイクを持ってステージへ!


「早緑美愛です!今日から4日間よろしくお願いします!」

「おっ、美愛、来たな!」

「みんなよろしくね!」

「「「「おおっ!」」」」

「みなさん、よろしくお願いします。じゃあまずは初日のセトリからワンコーラスずつ軽くお願いします。」


 ここからはバックバンドのみんなとあわせながらのリハーサル。まずはオケを流してもらって、マイクの調整から。今回もイヤモニを使うので、そちらの確認もある。

 一通り終わったところで、次はバンドメンバーが軽く演奏しながら歌をあわせていく。ここでももちろん音の強弱の調整が入る。既に目の前では撮影が進んでいるのでなかなかに照れくさい。

 3日分の確認なので、いつもより短めに確認していくけど、とに問題はなさそう。初日が終わったところで、圭司が到着したようで、上手のステージ脇入り口から座席の設営が全部完了したアリーナ席へ太田さんと一緒に入ってきた。圭司にリハを見てもらえるのは嬉しいなあ!


 圭司に注目されながら、二日目、三日目と適宜休憩を入れつつ、確認をしていく。特に問題はないね。レッスンをちゃんと積み重ねた成果が出ているよ!


「みんな、今日はここまでにしようか。美愛はだいぶ歌ったから声帯をしっかり休めないとだめだよ。バックのみんなもしっかりストレッチして、手足をしっかり休養させるように。」


 大山さんの声かけに私は声を出さずに手を挙げる。疲労感はないけど、これ以上はあまり声を出さない方がいいという判断。

 それを見た圭司が手を振って、太田さんと一緒に最初はいってきた上手の入り口へ向かった。楽屋へ行ったのかな?私もみんなと一緒に舞台袖から楽屋へ戻る。


「早緑さん、お疲れ様。あっ、声は出さなくていいよ。太田さん、どれくらい休めた方がいいんですかね?」

「1時間くらい静かにしておいて、あとは食事を済ませたら早めに寝てしまえば、いまの美愛なら問題ないと思う。」

「判りました。じゃあ、早緑さん、もうチェックインは済ませてあるから部屋に行って一回しっかり休んでからご飯を食べに出ようか。」


 私は黙って頷く。時計を見ると17時だから1時間後は晩ご飯にはちょうどいいタイミングだね。

 楽屋で着替えてしまったあと、圭司に連れられて、併設されているホテルの部屋に入る。今回は普通のビジネスホテルでダブルベッドの部屋みたい。


「汗かいただろうから一回シャワーだけ浴びてくるといいかもよ。」


 静かに頷いて、ありがたくシャワーを使わせてもらう。おなかがすき始めているけどまだ晩ご飯にはちょっと早いから、バスローブをいったん着ておこうかな。


「おっ、出たね。バスローブはいいな。ちょっと横になっているといいよ。眠くなってきたら仮眠を取ってもいいと思う。俺はこっちのソファで原稿書いているから19時くらいには起こすよ。」


 そういう所が本当に嬉しい!私のことを本当に大事にしてくれるんだよなあ……。うなずいて、私はベッドに入らせてもらう。軽く横になっただけのはずなのにしっかり寝ていたようで、圭司に起こされちゃった!


「起きた?」

「うん、起きた。」

「19時になったからご飯食べに行こう。今回はホテルのダイニングブッフェディナーとダイニングブッフェモーニング付きのプランで予約してくれたんだって。」

「それは楽しみ!」


 圭司と一緒にホテルのレストランへ行って食事をする。自分でいくら丼が作れたり、肉厚のローストビーフがあったり、とても美味しいブッフェだった!これは明日からも楽しみだなあ!


 部屋に戻って、改めてお風呂に入ると21時。


「寝る前に今日のKAKUKAWAの話をしたいんだけど少しいいかな?」

「もちろん!」

「結論から話すとヤン聖の書籍化が決まった。」

「おめでとう!」

「ありがとう!何かコミカライズとアニメ化も実現させる方向で調整してくれるっていわれたよ。」

「ええっ!?いまからもう?!すごい!」

「未亜のおかげだよ。」

「ううん。私の手助けなんて少しだよ。これは圭司の実力。」

「そうかな?」

「そうだよ。」

「まあ、でも、未亜と一緒にいられるから生まれた部分もあるからね。それは曲げないよ!」

「そか!……なんかとても嬉しくて、眠くなって来ちゃった」

「それじゃあ、今日も一緒に寝よう!」

「うん!嬉しいな。」


 いつもよりかなり早いけど、長時間のリハをこなしたから今日はもう寝てしまうことにした。家だけじゃなく、出先でも圭司とくっついて寝られるのは本当に嬉しいし安心だなあ。明日からの三日間頑張ろう!

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