第250話●雨東先生の大きな挫折、そして未亜のアドバイス

 翌日以降もPVは回復しないどころか、減る一方。相変わらず、とても厳しいコメントが付いている。


 ちょっと気持ちは乗らなかったけど、18日には予約をしていた心療内科を受診する。13日にいいところまでいけたものの失敗してしまった件を話すと先生曰く「それはもうEDではなく、単に緊張しすぎで萎えただけなので、私がアドバイスをするのもなんですが、シチュエーションをしっかり準備した上で、心構えをして臨めば多分問題ないと思いますよ。EDがほぼ解消したのであれば今後は状況観察でよいかと思います。来月からは月一回で大丈夫でしょう。」とのこと。そんな嬉しい話も新作の状況で帳消しになってしまうくらい気持ちがよどんでしまう。


 心療内科から帰宅して、翌日以降の分について、コメントを参考にしながら少し手直ししてみたもののそもそも見に来てもらえなくなってしまったので、19日更新の第10話は1日経った現時点で20PV程度、作品合計でも20日朝からの増加PVが50行かないくらいでほとんど増えなくなってしまう。作品のフォロー数も最初はかなりの数付いていた星も激減。批判コメントすら付かなくなってしまうなどひどい状況になってしまった。


 ものすごいショックを受けてしまい、あとは寝るだけというタイミングにも関わらずソファに座って天を仰いでいると髪の毛を乾かし終わった未亜が戻ってきた。


「圭司、やっぱり辛そうだね……。」

「うん、割と自信を持って送り出した作品がこんなことになってしまうってすごいショックだよ……。」

「私もちょっといいすぎたよね、ごめん。」

「いや、いいんだ。一番身近な読者がつまらないと思っているのにそれを隠される方が俺にとってはショックだからね。」

「コメントにも書いてあったけど、今回みたいに途中を急ぎすぎると良くないんだろうね。」

「うん、俺もなんか今回の作品への反応を見て、そんな感じがしてきた。」

「5話までは確実に面白かったからね。」

「コメントでもそう書いてくれている人が多いよね。うーん、あれくらいのペース、いやあれよりももっと細かく心情や情景を追いかけた方がいいんだなあ……。一人一人との逸話をしっかり描きつつ、30話くらいからいまみたいな感じのラブコメが少しずつ始まるようにするってどう思う?」

「圭司の書く内容なら大丈夫だと思うよ。……ふと思ったんだけど、いいかな?」

「うん、もちろん。」

「あのね、確かに男性主人公も良かったんだけど、女性主人公が生き生きとしている方が読みたいなあって。」

「そうか、なるほどな……うん、確かにコメントにもそういう意見がけっこう書いてあったし、改めてプロットを作り直して、はじめから書いた方が良さそうだ。いまのは打ち切ろう。あっ、でもいきなりバツンと切るのは良くないよな。せっかく生まれたキャラクターたちがちゃんと物語を全うするように書く方がいいよね。」

「うん、賛成。」

「よし、いま書き終わっている所から心情描写を追加で書き直しつつ、ちゃんと終わらせる方向で書いていくよ。夢落ちにするのが一番良さそうだなあ。」

「そうだね。……そうだ!良かったら今日からの分は私にも見せて!いい感じに終われるように協力させてほしい!」

「……ありがとう。一番身近な読者である未亜にそういってもらえると心強い。」


 未亜にそこまでの作品を読んでもらって、翌日、意見をもらった箇所について、手直しをしつつ、その先も書き進める。帰宅した未亜はその日書いたものを読んで感想をくれる。未亜は外で仕事をしてきて疲れているはずなのに俺のために本当にありがたいよね……。打ち切ると決めたからか、一気に書き進められて、2月11日公開分がラストになる一連の原稿が出来た。

 早めに帰ってこられた未亜に食事のあと、あらためてじっくりと読んでもらう。どうかなあ……。


「うん、面白かった!」

「ありがとう!本当に助かったよ。」

「圭司のフィアンセだからね。一緒に歩んでいくんだからお互い様だよ。私が困ったときは助けてもらったんだし。」

「未亜……。」

「圭司……。」


 お互いの視線が合う。顔が少しずつ近づいていく。未亜の目が閉じる……。


 ポロロローン

 ピロリーン


 えー、このタイミングで通知!?しかも未亜と俺の両方とも!?


「……うん、仕方ないよ。」

「うん、仕方ないな。」


 未亜がスマホを確認する。


「朋夏が私たちにだけTlackでメッセしてきていて、なんか謝りたいっていってるね。」

「あー、『この前は言い過ぎました、ごめんなさい』って書いてあるね。コメント欄に書かれていることよりも全然手厳しくなかったから気にしなくていいのになあ。」

「これ、いまから来てもらって、朋夏にも読んでもらったら?そうしたら安心するんじゃないかな。」

「ああ、そうだな!とりあえずいまなら来ても大丈夫って返しておこうか。」


 朋夏さんにOKと返事をすると今すぐお詫びに来るとのこと。本当にすぐやってきた朋夏さんをダイニングまで案内する。


「夜分にごめんね……。」

「いいよいいよ。いま書いているのは打ち切ることにして、最終回まで書き終わったからお詫びの前にまずは読んでもらって意見が欲しい。……早速だけど、これなんだ。」

「ありがとう。読ませてもらうね。」


 朋夏さんが明日公開分から順番に読んでいく。じっくりと時間を掛けてしっかり読み込んでくれるのはありがたい……。読み終わると満面の笑みになった。


「面白かった!打ち切りエンドっぽく感じないし、夢落ちの落とし方も最愛の奥さんが出産里帰りであまりにも寂しかったせいで変な夢を見たっていうことになって、しかもそのあと奥さんに謝るために奥さんの実家まで馬車を飛ばして謝罪、奥さん困惑っていうエンドも面白い!……怒って乗り込んだあげくいろいろいっちゃって本当にごめんなさい。」


 朋夏さんはそういうと深く頭を下げてきた。


「ありがたかったからそんな頭を下げないで。」

「門外漢なのに言い過ぎたなあって反省したんだけど、なんか乗り込んじゃったから連絡しづらくてね……。」

「それで最近Tlackの投稿が減ってたのか。」

「うん……。さっき、事務所から帰ってきた慧一にTlackへ投稿していないって心配されたから、正直に話したら『専門家でもないのに乗り込んで文句言うなんていくらなんでもやり過ぎ、親しき仲にも礼儀ありだぞ、すぐにでもアポ取ってちゃんと謝るべきだ』って諭されたよ……。」

「あれ?この前、ここに来た件は、慧一、知らなかったのか。」

「うん。安比から帰ってきた日って、私は早めに打ち合わせを終わらせて帰ってきたんだけど、慧一はあのまま事務所へバイトにいって、夜が遅かったからさ。慧一が帰ってくる前にやらかしてしまった感じ……。」

「そうだったんだなあ。」

「今後は慧一にいろいろと相談してから動こうと思ってる。改めて本当にごめんなさい。」


 朋夏さんがまた頭を下げる。朋夏さん、そんなに頭を下げなくてもいいのになあ……。


「まあ、でも乗り込んでくれたおかげで作風を改めて見直すことも出来たし、二人のおかげで泥沼にはまらなくて本当に良かったよ。本当にありがとう。」


 そういって、俺も二人に深く頭を下げる。


「圭司くん!そんな頭下げないでよ!」

「そうだよ圭司、雨東作品に協力出来たのがすごい嬉しいんだからね!」

「えっ!?」

「実は未亜に協力してもらってここまで書き上げたんだ。」

「未亜すごいね!?」

「私は感想を話していただけだよ。それをちゃんと文章にまとめたのは圭司の力。朋夏もいいと思うなら大丈夫だね。」

「うん、そう思う。二人とも本当にありがとう。次回作はプロットまとめたら見せるから、慧一も含めて感想もらえないかな?」

「「わかった!」」

「心菜ちゃんにも声を掛けてもいいかもね。」

「ああ、そうだな。」


 今回はちょっと上手くなかったけど、次回作はもっと緻密に書くように心がけよう!プロットの土台が出来たら、今作は11日最終回、既に次回作の構想に入っているって近況ノートに書いておこう。

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