第239話○思わぬ鉢合わせ

 午前中はたっぷりスキーを堪能した!私は上級者用コースでコブを攻めるというよりものんびり景色を楽しみながらゆっくりと滑りたいので、山頂から麓までなだらかに伸びる、5.5kmのコースを滑った!景色もいいし、雪質もいいし、ロングランコースを滑っている人はそんなにいないし、という感じでとても楽しかった。圭司がスキー教室でいい感じになっていたら一緒にこのコースを滑りたいなあ。


 ランチ前、最後の滑りを楽しむと12時40分くらいだった。少し早いけどいろいろ考えるとちょうど良さそうだ、ということで、リフトとホテルの間くらいに設置されている置き場へ板を立て掛け、ホテルの一階ロビーへ行くと既に彩春と華菜恵、圭司、紗和は着いていた。


「未亜、早いね!」

「彩春も早いよね。3人はスキー教室終わりでそのまま?」

「華菜恵さんは中級クラス、紗和さんと俺は初心者クラスだったんだけど、所要時間は一緒だったから。」

「華菜恵は経験者だもんね。」

「そうだよ!だいぶ感覚が取り戻せたから午後は中級者向けのコースでがんがん滑るんだ!さわっちはどうだった?」

「予想よりいい感じに滑ることが出来たよ!」

「参加していた人たちはみんな5.5kmの初心者用コースあたりも問題ないっていう評価をもらえたよね。」

「私がさっきまで滑っていたコースだよ!午後は圭司と紗和も一緒に滑る?」

「私は麓の方の広いコースをのんびり滑ろうかと思っているんだ!」

「俺はせっかくだからロングコースを楽しもうかな。」

「じゃあ、午後は一緒に楽しもうね!」

「二人がデートの約束をしていると聞いて。」

「あっ、紅葉!みんなも来たんだね。」

「本当に二人はラブラブだよねー。」

「彩春にそういわれるとなんか照れる……。」

「本当だよね!」

「もみーの所もラブラブだよー!」

「うちは幼なじみだからなんか空気感がそんな感じになっちゃうんだよねー。」

「もみっち、それはそれでいいことだよ。私も彼氏欲しいなあ。」

「お互い頑張ろうか。」

「いろはっちは大丈夫なの!?」

「たぶん!朋夏が大丈夫だったし!」

「もし彩春さんにそういう人が出来たらいろいろと相談しながら進めるといいよね。」

「もちろん!真っ先に大石さんとみんなに報告するよ!」


 雑談をしていたら13時少し前にみんなやってきたので、彩春の誘導で2階にあるという中国料理店まで向かう。


「岡里様、12名様分のお席が準備出来ましたのでこちらへどうぞ。」


 店員さんの案内で席へ向かうと4人掛けのテーブル3席を押さえてくれたんだね。さすがにガラガラではないけど、ほどよく空いていて、ちょうど12時くらいから食べ始めた人が入れ替わるタイミングで全員席に着ける。確かにこれは穴場だね。


 みんな適当に座ったら同じ席は、彩春・朋夏・圭司・私になった。


「朋夏は慧一くんと一緒じゃなくていいの?」

「うん、普段あまり話していない人と話したいっていっていたからね。」


 よく見ると紅葉、華菜恵、志満と同じテーブルになっていた。紅葉と幸大くんもバラバラに座ったのか。面白いなあ。

 テーブルごとに注文を済ませて、じゃあ、雑談でもしようかというタイミングで、突然声がかかる。


「岡里さん。」

「えっ!?……あっ!薫さん!」

「こんにちは、薫さん!」

「岡里さんだけじゃなくて飯出さんもいらっしゃったのですね。まさか安比で会えるなんて思ってもみませんでした。」

「薫さん、お一人ですか?」

「社長だけじゃなくて、わたしもいるよー。」

「眞佐美さん!」

「わたしたちもね。」

「星佳さん、未桜さん!」

「えっ、そろいもそろって、もしかして、企業案件とかですか?」

「いえ、会社の慰安旅行、という感じですかね。」

「今晩から彩春ちゃんの実家にお世話になるんだ!」

「彩春さんのおうちはいいお宿だよねー。」


 彩春がこちらをチラチラ見ながらすごい親しそうなやりとりをしているのに双方を紹介しないところを見るとVTuber仲間なのかな?企業案件って単語が通じてるし。だとするとここでいろいろと正体説明するわけにはいかないもんね。


「私たちは先に出ますので今晩良かったらお話ししましょうか。あっ、岡里さんたちも岡里さんのご実家に泊まっていらっしゃるのですよね?」

「ええ、もちろんです!」

「じゃあ、社長、そうしよー。」

「ええ、そうですね。またあとでご連絡します。」


 あいさつを交わすと4人の女性陣はこちらにも軽く会釈をしてくれる。朋夏も一緒だからもしかしたらVTuber仲間と思われたかな?


「ふたりともごめんね。」

「大丈夫だよ。」

「うん、なんか訳ありっぽかったからあえて紹介しなかったんだろうと思ってみてたよ。」

「さすが圭司くんだね。空いているとはいっても店内にほかのお客様がいるからね。向こうの連絡先は知っているから連絡入れておこうかな。」

「彩春よろしくね!」

「朋夏も連絡先知ってるのに!」

「彩春の実家で話をするからそこはおまかせしちゃうよ!」

「もう!わかった。このあとメッセして、時間調整しておくよ。」


 彩春も朋夏も知っているということはきっと有名なVTuberなんだろうなあ。あとでお話し出来るのが楽しみ!

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