第232話○ナイトスキー組と温泉のんびり組
「このあとなんだけど、家の中を簡単に案内するね。あと、ほかに今日宿泊されているお客様はみんな一番早い16時からだって聞いたからディナーは、3回目の20時からにしてもらってる。ちなみにランチは60分だったけど、ディナーは90分。」
「彩春ちゃん、みんなけっこう早い時間に食べちゃうんだね!?」
「えっ、志満、そんなに意外かな?」
「なんか、ギリギリまで滑ってから戻って来そうだから。」
「あー、今日泊まっている人たちはみんな車で来ているみたいだから、多分早めにディナー食べてナイターでもう一滑り楽しむんだと思うよ。」
「そうか!ナイターがあるんだね!」
「紅葉、興味ある?」
「うん!せっかくだから今日も滑りたい!いろはちゃん、大丈夫かな?」
「それならマイクロバスを出してもらうよ。ディナーとモーニングは給仕にソムリエの資格を持ったパートの方がいらして下さるからお母さんが送迎を担当しているんだ。経験者は16時から20時までやってるナイターを楽しめるよ。スキーとかスノボとかをやったことがない人は、今日のうちにレンタルのウェアとかを選んでもらって、明日10時から始まるスキー教室に参加するのがベストかな。うちから予約入れられるから。」
「いろはっち、今日はもうスキー教室やってないの?」
「うん、10時スタートと13時半スタートしかないんだよ。いま、15時少し前だからもう終わってるんだ。」
「じゃあ、どうするか人数を数えちゃおう!いろはっち、それでいいかな?」
「うん!華菜恵助かる!」
華菜恵の仕切りで希望が取られていく。結果、ナイター組は、明貴子、瑠乃、朋夏、慧一くん、幸大くん、志満、紅葉、私で、居残り組は、圭司、紗和、華菜恵、彩春。彩春はせっかく実家に戻ってきたのでいろいろやりたいことがあるということでナイターにはいかないそうだ。彩春は今日のナイターへいく人数と明日のスキー教室に参加するメンバーをご両親へ伝えにいってくれた。
「えっ、居残りは4人しかいないんだな!?」
「私と明貴子は雪国越後だからねー。」
「私は彩春の所に毎年来てたから!」
「所沢って市立中学校で冬にスキー教室やってるんだよ。」
「高校でも1年の時、しーちゃんとニュージーランド研修いったんだけど、スキーやったよ!」
「ニュージーランド研修懐かしいなあ!県立高校なのにすごかったよね。」
「そうか、けっこうみんなスキーとかスノボとかやっているんだね。私は札幌にいたけどほとんど外に出なかったからなあ。」
「私はやったことあるんだけど、高校入ったあとは全然いってないからナイターはパス。明日スキー教室行って感覚を取り戻して午後は目一杯滑りたい!」
「ってことは、本当の未経験って紗和さんと俺だけなんだね!?」
「それもなんか不思議な感じだね。」
「まあ、未亜は楽しんでくるといいよ。」
「うん!」
「未亜のかっこいい滑りは明日楽しませてもらうよ。」
「かっこいいかどうかは判らないけど頑張る!」
「おまたせ、そうしたら改めて館内を案内するね。」
戻ってきた彩春の案内でまずは三階へ。さっき部屋に荷物を置いたときには感じなかったけど、硫黄の香りがかすかにしている。
「突き当たりのここが大浴場。奇数日と偶数日で男湯と女湯を入れ替えるようになっている。入浴可能なのは16時から翌朝の10時まで。使えない時間に専門の業者さんが来て清掃してくれている。今日はもう終わっているみたいだから中も説明するね。」
そういうと彩春は左の方に入っていく。彩春が扉を開くと一気に硫黄の香りがしてきた。なるほど、扉がしっかり密封されるようになっているんだね。
「今日はこっちが男湯。脱衣所にはトイレがないから気をつけてね。」
「部屋で済ませて来ちゃう感じだね。」
「うん、そんな感じ。」
「6人分の脱衣カゴが置いてある。あまり大きくないから先にどこかの家族とかが入っていると時間ずらすしかないかも。」
「そこは譲り合いっていうことか。」
「まあ、ホテルじゃなくてペンションだからね。」
彩春が引き戸を開けると中は銭湯みたいな感じだった。壁の所にしきりとともにシャワーとかがあるみたい。
「ここが洗い場でカランとかは5つある。右の奥が室内の浴槽で全面ガラス張りだから外の景色も見えるけど、もっといいのはこっちの露天だね。」
入って右側の壁、湯船の隣にある扉を開けると見事な青空とともに真っ白な硫黄泉が湛えられた露天の湯船があった!
「ここ、夜になると満天の星空がすごいきれいだよ!彩春の所へ遊びに来る度、必ずここでお風呂入ってのんびりしたんだよ!」
「朋夏、本当にここ好きだもんね。まあ、気持ちはわかるよ。私も実家にいたときは毎晩ここで入っていたからね。」
「全員は無理だけど、みんなで入りたいね!」
「そうしよう!」
大浴場から廊下に出たところで圭司がなにかを思いついたようでみんなに話し始める。
「二人部屋も見る?」
「圭司くんいいの?」
「うん、彩春さんにざっと説明してもらえると俺も使い方がよく判るし、みんなも部屋見られて一石二鳥かなって思った。」
「確かにそうだね!じゃあ、案内するよ!」
一番大浴場側に301と書かれた部屋がある。ここが圭司の部屋らしい。
「私もリニューアルしてから初めて帰ってきたからどんな感じかまだ見てないんだよね。でも設備は一緒だと思う。」
「鍵開けるね。」
「……みんな入れたかな?」
「ちょっと難しそう。」
「じゃあ、交代交代で。」
彩春が室内を説明してくれる。入って右側には乾燥機付きのクローゼット、右側にはトイレ・洗面台・温泉の引かれている浴室がある。奥はキングサイズの二人用ベッドだ。
「男性陣三人にお願いなんだけど、扉の所にも赤字で書いてあるとおり、この扉はしっかり閉めてね。洗面台の方から浴室に向けて風がながれて、浴室の排気口から外へ空気が出るような強制換気になっているんだけど、しっかり閉めないと気密性が落ちて、有毒な温泉ガスが客室内に流れ込む可能性があるから。」
「なるほど、了解!」
圭司の部屋の説明が終わると今度は2階で案内してくれる。
「あの奥が私たち女性陣の部屋だけど、ディナーが終わったらまたみんなで雑談したいから男性陣に部屋まで来てもらってもいいかな?」
みんな口々に賛同する。
「じゃあ、部屋の説明はそのときにね。そろそろナイター組は時間だね。ウェアを送った人たちは客室に届いていると思うから着替えちゃって。レンタルする人たちはフロントのソファーにでも座っていて、レンタルルームの鍵持ってくるから。着替え終わった人はロビーに集合ね。」
よし、ナイタースキーをしっかり楽しむぞ!
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